嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

860 お世話でもしておこう

 夕食はテオドールたちと一緒に食べた。
 いつもと違い賑やかで楽しかった。ユリスはちょっと嫌そうな顔をしていたけど。

 せっかくふたりが泊まってくれるというので、俺は夜更かしする気満々である。テオドールの部屋へ突撃して、寝るまでお喋りでもしようと思う。絶対に楽しいと思う。

 一応ユリスのことも誘ってみたのだが、普通に断られてしまった。ユリスはあまりやる気がない。おまけに今日はデニスと会っていたので、それでもう疲れ切ってしまったのだろう。早々に寝るつもりらしい。

 エリスちゃんも連れて行こうと思って抱き上げると、すかさず綿毛ちゃんが『オレはぁ?』と寄ってくる。

『オレも夜更かしする』
「綿毛ちゃんはダメだよ。普通の犬じゃないもん」
『普通の犬だよー。どこにでもいる感じの犬だよぉ』
「嘘つかないで」

 普段は『犬じゃないから』とうるさいくせに。都合のいい時だけ犬であると主張するのだ。

「綿毛ちゃんは先に寝てて」
『まだ眠くなーい』

 うだうだ文句を言う綿毛ちゃんは、『オレだけ仲間はずれなんて酷いよぉ』と泣き真似をする。仕方がないだろう。綿毛ちゃんは普通の犬じゃないんだから。テオドールたちにバレたらびっくりさせてしまう。

 エリスちゃんを抱えて客室に向かおうとした俺であったのだが、またもや邪魔が入る。ノックもなしに部屋へ突入してきたアロンが、寝間着姿の俺を見てから眉を寄せた。

「ルイス様。どこ行くんですか」
「テオドールたちのところ」
「なんで」

 いや、なんでと言われても。
 しかし薄々こうなる気はしていた。こういう時、決まってアロンは文句を言いにくるからだ。

「アロンも一緒に行く?」
「ティアンは?」

 俺の問いかけを無視したアロンは、部屋の中を見渡す。

「ティアンは自分の部屋にいると思うけど」

 今日はテオドールたちと遊ぶからと言ったところ、ティアンは「夜更かししたらダメですよ」と言って去って行ったのだ。

「へー」

 ティアンがいないと知って、途端に笑顔になったアロン。ティアンがいないのが嬉しいのだろうか。謎だ。

「じゃあ俺も一緒に行きますよ」

 あ、行くのね。別にいいけど。
 にこにこしているアロンに、エリスちゃんを持たせてみる。毛がつくと言って普段はあまり犬猫に触らないアロンなのだが、今日はよほど機嫌がいいのか。あっさりエリスちゃんを受け取った。

「カミールのこといじめないでね」

 テオドールはメンタル強いけど、カミールは繊細なのだ。変なこと言って困らせないでねと言い聞かせると、アロンは「しませんよ、そんなこと」と肩をすくめた。

 あまり信用はできないが、たぶん大丈夫だと思いたい。まぁ、俺も一緒だから大丈夫だろう。

「じゃあね、綿毛ちゃん。おとなしくしといてね」
『暴れちゃうもんね』
「暴れないで」

 むすっとしている不機嫌毛玉は、短い前足で床をペシペシ叩いている。一緒に行きたいらしいけど、無理だろう。綿毛ちゃんはうっかりしているので、テオドールたちの前でお喋りしてしまいそう。おまけに頭には角が生えているのだ。

 テオドールはエリスちゃんにも平気な顔で触っていた。あんな感じで綿毛ちゃんにも触れられると、変な角の存在がバレてしまう。

『オレも行きたいよ。オレもお泊まり会したい』
「じゃあユリスとする?」
『しないもーん。ユリス坊ちゃんとは毎日会ってるもーん』
「我儘言わないで」

 うるさい毛玉を抱えて、廊下に出る。
 綿毛ちゃんは寂しがりなので、部屋にひとりになっちゃうのが嫌なんだろう。

 ユリスの部屋に入って、綿毛ちゃんを床に置く。

「ユリス! 綿毛ちゃんあげる」
「いらない」
「そんなこと言わないで!」

 床でごろごろする綿毛ちゃんを見下ろして「ユリスとおとなしくしてて」と言い聞かせる。

『仕方ない。オレはユリス坊ちゃんのお世話でもしておこうかなぁ』
「任せたぞ!」

 ユリスのお世話ってなんだろう。
 そんなの必要ないと思うけど。「おまえら、うるさい」とこっちを睨んでくるユリスに手を振って、ドアを閉める。

 綿毛ちゃんをどうにかしたい俺は、ユリスのお世話とやらを綿毛ちゃんに任せることにした。
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