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17歳
閑話44 ひま(sideアロン)
「あー、なんか暇だな」
「仕事しろよ」
俺の独り言に間髪入れず応じてきたブルース様を横目で見て、やれやれと肩をすくめておく。
暇だからといって仕事がしたいわけではないのだ。
そんなこと少し考えたらわかるだろうに。
いや、待てよ。ブルース様であれば暇だからという理由で仕事をしてもおかしくはない。
「ブルース様って、毎日仕事ばかりして嫌にならないんですか?」
「なるぞ。やるべき仕事がまだあるっていうのに、隣で暇だ仕事はしたくないだの言われると腹が立って仕方がない」
「へー、そうなんですねー」
ブルース様も大変ですねーと適当に相槌を打っておく。案の定、舌打ちしたブルース様は「おまえのことだからな?」とわざわざ念を押してきた。
それを聞こえないふりで乗り切って、俺は手付かずだった書類の束を抱えた。ブルース様がうるさいので、そろそろ仕事を片付けてこようと思ったのだ。
けれどもブルース様は、訝しげに俺を呼び止めた。
「おい、どこに行く」
「ロニーの顔でも見に行こうかと」
ひらひらと手を振る俺に、ブルース様が顔をしかめる。
「ロニーの顔なんて見てどうする。その手に持った書類はなんだ。まさかロニーに押しつける気じゃないよな」
「まさかぁ」
ははっと笑い飛ばすが、ブルース様の表情は険しいまま。俺のことを一切信じていないことが窺えた。
まぁ、実際ロニーのところに持って行こうとしていたんだけど。ロニーは真面目なので、彼の机に書類を放置しておけばいつの間にか片付けてくれる。もちろん文句は言われるが、それで面倒な仕事から逃れられるのであれば安いものだ。
目力の強いブルース様に座れと顎で指示されて、仕方なく席に戻る。ロニーに押しつけることのできなかったこの仕事は、一体誰が片付けるのだろうか。放っておけばそのうちブルース様がやってくれるのだろうか。
暇を持て余した俺は、ソファに寝そべる。
「このソファ、もう少し大きいのに変えませんか? ちょっと足がはみ出るんですけど」
「寝るために置いてるわけじゃない」
「あっそうですか」
じゃあなんのために置いてあるのだろうか。
ソファなんて寝る一択だろ。
「ブルース様。今夜飲み行きますか? 奢ってください」
「なんで俺がおまえに奢らないといけないんだ」
「じゃあニックも呼びますから」
「それに何の意味があるんだ。俺の出費が増えるだけだろ」
たしかに。ニックがいても役に立たない。あいつは場を盛り上げることもなく、金を出すわけでもない。
一方的にセドリックの話をして、いつの間にか酔って、それでもまだセドリックの話をしている退屈な奴だ。俺はセドリックには微塵も興味がない。
「仕方ないですね。たまには俺が奢ってあげますよ」
「いや、いい。ひとりで行けばいいだろ」
「面白い店見つけたんで。ブルース様も一緒に行きましょう」
「おまえの言う面白い店って、どうせあれだろ。変な店だろ」
「変な店って。なんですか、それ」
意味のわからないブルース様の決めつけに、俺は思わず笑ってしまう。
ちなみに俺が見つけた面白い店とは、ぼったくりの酒場である。グリシャに教えてもらったのだ。会計の時にブルース様を置いて逃げたら絶対に面白いことになる。
いや、でもな。
ちょっと金銭感覚が怪しいブルース様である。ぼったくりだと気が付かず普通に支払ってしまうかもしれない。それだとまったく面白くない。
「ブルース様。酒場で飲んだら普通はどのくらいの料金になるかわかりますか?」
「おまえは俺を馬鹿にしてるのか?」
そういうわけでは。
俺は単にブルース様がぼったくり酒場であることに気が付けるのか心配なだけだ。
不機嫌になってしまったブルース様は「はやくそれ片付けろよ」と、先程俺がテーブルに放った書類を示してくる。
これ結局俺がやらないといけないのか?
なんで?
「俺が奢りますから。行きましょうよ」
「行かないと言ってるだろが」
「じゃあルイス様誘います」
「やめろ、馬鹿」
ルイスに酒はまだ早いと、真顔で注意してくるブルース様。ニヤリと笑った俺は「じゃあブルース様が行くってことで」と強引に話をまとめた。
「仕事しろよ」
俺の独り言に間髪入れず応じてきたブルース様を横目で見て、やれやれと肩をすくめておく。
暇だからといって仕事がしたいわけではないのだ。
そんなこと少し考えたらわかるだろうに。
いや、待てよ。ブルース様であれば暇だからという理由で仕事をしてもおかしくはない。
「ブルース様って、毎日仕事ばかりして嫌にならないんですか?」
「なるぞ。やるべき仕事がまだあるっていうのに、隣で暇だ仕事はしたくないだの言われると腹が立って仕方がない」
「へー、そうなんですねー」
ブルース様も大変ですねーと適当に相槌を打っておく。案の定、舌打ちしたブルース様は「おまえのことだからな?」とわざわざ念を押してきた。
それを聞こえないふりで乗り切って、俺は手付かずだった書類の束を抱えた。ブルース様がうるさいので、そろそろ仕事を片付けてこようと思ったのだ。
けれどもブルース様は、訝しげに俺を呼び止めた。
「おい、どこに行く」
「ロニーの顔でも見に行こうかと」
ひらひらと手を振る俺に、ブルース様が顔をしかめる。
「ロニーの顔なんて見てどうする。その手に持った書類はなんだ。まさかロニーに押しつける気じゃないよな」
「まさかぁ」
ははっと笑い飛ばすが、ブルース様の表情は険しいまま。俺のことを一切信じていないことが窺えた。
まぁ、実際ロニーのところに持って行こうとしていたんだけど。ロニーは真面目なので、彼の机に書類を放置しておけばいつの間にか片付けてくれる。もちろん文句は言われるが、それで面倒な仕事から逃れられるのであれば安いものだ。
目力の強いブルース様に座れと顎で指示されて、仕方なく席に戻る。ロニーに押しつけることのできなかったこの仕事は、一体誰が片付けるのだろうか。放っておけばそのうちブルース様がやってくれるのだろうか。
暇を持て余した俺は、ソファに寝そべる。
「このソファ、もう少し大きいのに変えませんか? ちょっと足がはみ出るんですけど」
「寝るために置いてるわけじゃない」
「あっそうですか」
じゃあなんのために置いてあるのだろうか。
ソファなんて寝る一択だろ。
「ブルース様。今夜飲み行きますか? 奢ってください」
「なんで俺がおまえに奢らないといけないんだ」
「じゃあニックも呼びますから」
「それに何の意味があるんだ。俺の出費が増えるだけだろ」
たしかに。ニックがいても役に立たない。あいつは場を盛り上げることもなく、金を出すわけでもない。
一方的にセドリックの話をして、いつの間にか酔って、それでもまだセドリックの話をしている退屈な奴だ。俺はセドリックには微塵も興味がない。
「仕方ないですね。たまには俺が奢ってあげますよ」
「いや、いい。ひとりで行けばいいだろ」
「面白い店見つけたんで。ブルース様も一緒に行きましょう」
「おまえの言う面白い店って、どうせあれだろ。変な店だろ」
「変な店って。なんですか、それ」
意味のわからないブルース様の決めつけに、俺は思わず笑ってしまう。
ちなみに俺が見つけた面白い店とは、ぼったくりの酒場である。グリシャに教えてもらったのだ。会計の時にブルース様を置いて逃げたら絶対に面白いことになる。
いや、でもな。
ちょっと金銭感覚が怪しいブルース様である。ぼったくりだと気が付かず普通に支払ってしまうかもしれない。それだとまったく面白くない。
「ブルース様。酒場で飲んだら普通はどのくらいの料金になるかわかりますか?」
「おまえは俺を馬鹿にしてるのか?」
そういうわけでは。
俺は単にブルース様がぼったくり酒場であることに気が付けるのか心配なだけだ。
不機嫌になってしまったブルース様は「はやくそれ片付けろよ」と、先程俺がテーブルに放った書類を示してくる。
これ結局俺がやらないといけないのか?
なんで?
「俺が奢りますから。行きましょうよ」
「行かないと言ってるだろが」
「じゃあルイス様誘います」
「やめろ、馬鹿」
ルイスに酒はまだ早いと、真顔で注意してくるブルース様。ニヤリと笑った俺は「じゃあブルース様が行くってことで」と強引に話をまとめた。
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追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!!
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