873 / 965
17歳
綿毛ちゃんの日常30
「エリスちゃんをいじめないで!」
『いやいや。どう見てもオレがいじめられてるよねぇ』
ルイス坊ちゃんは、いつもエリスちゃんの味方である。
日当たりのいい窓際でお昼寝をしていたところ、突然やってきたエリスちゃんに思い切り頭を叩かれたオレは普通に可哀想だと思う。どうやら日当たりのいい場所を譲れということらしい。オレが先に確保してたのに。
素直に譲る気分じゃなくて、エリスちゃんに『オレが先にいたのにぃ』と文句を言ったところまたもや強烈な猫パンチを繰り出してきた。
オレ、猫ちゃんの言葉は理解できないけどエリスちゃんの言いたいことはなんとなく理解できてしまう。
キッと鋭い目つきでオレを睨んでくるエリスちゃんは、さっさと退けと言っているに違いない。
するとそこへ割り込んできたルイス坊ちゃんが、なぜかオレに注意をしてきたのである。いやどう見てもオレがいじめられてるよねぇ?
猫派の坊ちゃんは、いつでもエリスちゃんの味方だ。エリスちゃんもそれを理解しているのか。時折、まるでルイス坊ちゃんに告げ口するみたいに坊ちゃんを呼びに行くことがある。オレ、可哀想。
ため息を吐いて、エリスちゃんに場所を譲ってあげる。
『あー、せっかくぽかぽかしてたのにぃ』
ぶつぶつ言うと、坊ちゃんが「寒いの?」と首を傾げた。寒くはないけど、日向ぼっこしたい気分だったのだ。
すると坊ちゃんが「いい場所があるよ!」と大きな声を出した。
『いい場所?』
「うん! 綿毛ちゃんにだけ教えてあげる」
『ほほう。それはどうも』
にこにこお礼を言いながらも、オレは半信半疑だった。だってオレはずっと坊ちゃんと一緒にいる。坊ちゃんだけが知っていてオレの知らない場所なんてないと思うけど。
けれども暖かい場所に案内してくれるらしいので、お任せしよう。
オレを抱っこした坊ちゃんは、ジャンさんに「ちょっと行ってくるね!」と一方的に声をかけて部屋を飛び出した。ちなみにティアンさんは、ロニーさんに呼ばれて騎士棟に行ってしまった。
ティアンさんがいない時の坊ちゃんは、割と余計なことをしちゃうんだけど。少しの不安を抱えるオレは、坊ちゃんに運ばれる。
たどり着いたのは、オーガスくんの部屋だった。てっきり温室にでも向かうのだと思っていたオレは、ちょっとびっくりした。
びっくりしたのは、オーガスくんもおんなじだったらしい。「え、ルイス?」と執務机から腰を浮かせたオーガスくんが、慌てたように机の上にあった箱を引き出しに突っ込んだ。すごく怪しい動きだったな、今の。
なにか見られたくないものを隠したに違いない。
ニマニマするオレを窓際に置いた坊ちゃんは、勝手に部屋のクローゼットを開けてしまう。
「待って、ルイス。なにしてるの!?」
「これでいいや」
オーガスくんの悲鳴じみた声を無視して、坊ちゃんはクローゼットからマフラーを引っ張り出した。
それはオーガスくんのマフラーだねぇ。
マフラーをオレにぐるぐると巻きつけた坊ちゃんは満足そうに「どう?」と尋ねてきた。
『あったかい』
「ほんと? よかったね」
「いや、なんで僕のマフラー」
オロオロしているオーガスくんは、にっこり笑うオレを見てから諦めたように項垂れてしまう。
『ありがとう。オーガスくん』
「う、うん。僕はなにもしてないけど」
オレの側まで足を運んだオーガスくんは、「なんで僕の部屋に」と小声で訊いてきた。エリスちゃんに追い出されたのだと説明すると、オーガスくんが同情したように「綿毛ちゃんも大変だね」と言ってくれた。
そう。オレも結構大変なのだ。
オーガスくんと微笑みあったその時。
背後から坊ちゃんの楽しそうな声があがった。
「あ! これ食べていい?」
「あ、ちょっと!」
振り返ったオーガスくんは、坊ちゃんの手にある小箱に目を丸くしている。それは先程オーガスくんが慌てて引き出しに隠したものだった。
中身はお菓子だったらしい。
目を輝かせた坊ちゃんが、返事も待たずにお菓子を二個とった。
「ちょっと、それ僕のだってば」
「ちょうだい」
「いいけど一個にしてよ」
「ダメ。ユリスにもあげるから」
「えー?」
苦い顔になったオーガスくんだけど、諦めたように息を吐く。ラッセルさんにもらったというお菓子は、オーガスくんの大好物なのだとか。店が遠いらしく滅多に買いに行けないので大事にしていたらしい。
坊ちゃんに見せると根こそぎ持っていかれそうだもんね。
いそいそと箱を引き出しに戻すオーガスくんが、「全部持っていかれるかと思った」と小さく呟いていたのをオレは聞き逃さなかった。
『オーガスくんも大変だねぇ』
「え? いや綿毛ちゃんに僕の大変さはわからないよ」
『普通に失礼だねぇ』
オレのことを一体なんだと思っているのだろうか。
マフラーのおかげで暖かくなってきたオレは、気持ちよさに目を閉じた。今ならエリスちゃんにも邪魔をされずに、のんびりお昼寝できそうである。
『いやいや。どう見てもオレがいじめられてるよねぇ』
ルイス坊ちゃんは、いつもエリスちゃんの味方である。
日当たりのいい窓際でお昼寝をしていたところ、突然やってきたエリスちゃんに思い切り頭を叩かれたオレは普通に可哀想だと思う。どうやら日当たりのいい場所を譲れということらしい。オレが先に確保してたのに。
素直に譲る気分じゃなくて、エリスちゃんに『オレが先にいたのにぃ』と文句を言ったところまたもや強烈な猫パンチを繰り出してきた。
オレ、猫ちゃんの言葉は理解できないけどエリスちゃんの言いたいことはなんとなく理解できてしまう。
キッと鋭い目つきでオレを睨んでくるエリスちゃんは、さっさと退けと言っているに違いない。
するとそこへ割り込んできたルイス坊ちゃんが、なぜかオレに注意をしてきたのである。いやどう見てもオレがいじめられてるよねぇ?
猫派の坊ちゃんは、いつでもエリスちゃんの味方だ。エリスちゃんもそれを理解しているのか。時折、まるでルイス坊ちゃんに告げ口するみたいに坊ちゃんを呼びに行くことがある。オレ、可哀想。
ため息を吐いて、エリスちゃんに場所を譲ってあげる。
『あー、せっかくぽかぽかしてたのにぃ』
ぶつぶつ言うと、坊ちゃんが「寒いの?」と首を傾げた。寒くはないけど、日向ぼっこしたい気分だったのだ。
すると坊ちゃんが「いい場所があるよ!」と大きな声を出した。
『いい場所?』
「うん! 綿毛ちゃんにだけ教えてあげる」
『ほほう。それはどうも』
にこにこお礼を言いながらも、オレは半信半疑だった。だってオレはずっと坊ちゃんと一緒にいる。坊ちゃんだけが知っていてオレの知らない場所なんてないと思うけど。
けれども暖かい場所に案内してくれるらしいので、お任せしよう。
オレを抱っこした坊ちゃんは、ジャンさんに「ちょっと行ってくるね!」と一方的に声をかけて部屋を飛び出した。ちなみにティアンさんは、ロニーさんに呼ばれて騎士棟に行ってしまった。
ティアンさんがいない時の坊ちゃんは、割と余計なことをしちゃうんだけど。少しの不安を抱えるオレは、坊ちゃんに運ばれる。
たどり着いたのは、オーガスくんの部屋だった。てっきり温室にでも向かうのだと思っていたオレは、ちょっとびっくりした。
びっくりしたのは、オーガスくんもおんなじだったらしい。「え、ルイス?」と執務机から腰を浮かせたオーガスくんが、慌てたように机の上にあった箱を引き出しに突っ込んだ。すごく怪しい動きだったな、今の。
なにか見られたくないものを隠したに違いない。
ニマニマするオレを窓際に置いた坊ちゃんは、勝手に部屋のクローゼットを開けてしまう。
「待って、ルイス。なにしてるの!?」
「これでいいや」
オーガスくんの悲鳴じみた声を無視して、坊ちゃんはクローゼットからマフラーを引っ張り出した。
それはオーガスくんのマフラーだねぇ。
マフラーをオレにぐるぐると巻きつけた坊ちゃんは満足そうに「どう?」と尋ねてきた。
『あったかい』
「ほんと? よかったね」
「いや、なんで僕のマフラー」
オロオロしているオーガスくんは、にっこり笑うオレを見てから諦めたように項垂れてしまう。
『ありがとう。オーガスくん』
「う、うん。僕はなにもしてないけど」
オレの側まで足を運んだオーガスくんは、「なんで僕の部屋に」と小声で訊いてきた。エリスちゃんに追い出されたのだと説明すると、オーガスくんが同情したように「綿毛ちゃんも大変だね」と言ってくれた。
そう。オレも結構大変なのだ。
オーガスくんと微笑みあったその時。
背後から坊ちゃんの楽しそうな声があがった。
「あ! これ食べていい?」
「あ、ちょっと!」
振り返ったオーガスくんは、坊ちゃんの手にある小箱に目を丸くしている。それは先程オーガスくんが慌てて引き出しに隠したものだった。
中身はお菓子だったらしい。
目を輝かせた坊ちゃんが、返事も待たずにお菓子を二個とった。
「ちょっと、それ僕のだってば」
「ちょうだい」
「いいけど一個にしてよ」
「ダメ。ユリスにもあげるから」
「えー?」
苦い顔になったオーガスくんだけど、諦めたように息を吐く。ラッセルさんにもらったというお菓子は、オーガスくんの大好物なのだとか。店が遠いらしく滅多に買いに行けないので大事にしていたらしい。
坊ちゃんに見せると根こそぎ持っていかれそうだもんね。
いそいそと箱を引き出しに戻すオーガスくんが、「全部持っていかれるかと思った」と小さく呟いていたのをオレは聞き逃さなかった。
『オーガスくんも大変だねぇ』
「え? いや綿毛ちゃんに僕の大変さはわからないよ」
『普通に失礼だねぇ』
オレのことを一体なんだと思っているのだろうか。
マフラーのおかげで暖かくなってきたオレは、気持ちよさに目を閉じた。今ならエリスちゃんにも邪魔をされずに、のんびりお昼寝できそうである。
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
【完結/番外編準備中】
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
----------
追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!!
完結しましたが回収しきれていないエピソードが私の中でいくつかあるので笑、後日番外編をアップしたいなと現在準備中です。
詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!