嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

文字の大きさ
877 / 965
17歳

873 ノート

 しかしオーガス兄様にノートを返す前に、ちょっとだけ中身を見てみようと思う。だって気になるもん。

 廊下の端に寄って、壁に背中を預けた俺はパラパラとノートを捲る。ティアンが「ダメですよ。勝手に見たら」と眉を寄せるけど、気にしない。だってユリスも読んでいたのだ。俺が読んでも問題はないだろう。

 困り顔のティアンの隣で、適当に目を通す。
 しかしそこに書かれているのは日々の出来事をメモした感じの素っ気ない単語の羅列だけ。何時に誰と会ったとか、どこへ行ったとか。何かを貰ったという記載や、逆にこれをあげたなど。

「これは日記っていうの?」
「さぁ?」

 ユリスが面白くないと言っていたが、本当に面白くない。ちょっと期待していたのと違った。

 しかし謎なのは、オーガス兄様がこれをどこかに隠していたということである。ユリスが勝手に持ってきたので、具体的な隠し場所は知らない。

 こんな面白くもない日記、隠す必要なんてないと思うけど。

 パタンとノートを閉じて、再びオーガス兄様の部屋を目指す。兄様は、ソファに座ってぼんやりしていた。

「あ、ルイス。何か用?」
「オーガス兄様、これ返すね」

 ノートを押し付けると、表紙を見た兄様が「あぁ」とやる気のない様子で頷いた。

「これ探してたんだ。ルイスが持ってたの?」
「ううん。ユリスが持ってた」
「ユリス。いつ持って行ったんだか」

 困ったねと苦笑するオーガス兄様は、慌てる様子がない。やはりこれは隠す必要なんてないノートだったのだ。

「それなに?」
「これ? これは日々の出来事を忘れないようにメモしてるんだよ」
「なんで?」
「え、なんでって言われても。忘れたら困ることとかあるから」
「ふーん?」

 たぶん仕事や人間関係の都合で記録しているのだろう。オーガス兄様は何も考えていないように見えて、意外とあれこれ考えているんだな。

 感心していると、オーガス兄様が「なんか失礼なこと考えてない?」と疑いの目を向けてくる。

 慌てて首を左右に振って否定しておく。

「ユリスがね。隠すならもっとマシな場所に隠せって言ってたよ」
「隠した覚えはないけど」

 目を瞬くオーガス兄様は、心当たりがないといった感じの表情だ。ユリスのやつ、一体どこから持ってきたのだろうか。

 オーガス兄様の向かいに腰をおろして、背もたれに背中を預けておく。そのまましばらくぼんやりしていると、兄様が「まだ何か用事?」と冷たい言葉を投げかけてくる。用事がないと来ちゃダメなのか?

「友達は帰ったの?」
「帰ったよ。サンドイッチが美味しいって言ってた」
「へー、そうなんだ」

 パラパラとノートを見返しながら相槌を打つ兄様は、ふうと息を吐く。ニックの姿は見当たらない。どうせセドリックの追っかけだろうと考えて、思い出してしまった。

「そういえば、ニックが」
「うん?」

 顔を上げたオーガス兄様は、「ニックがどうしたの?」と興味津々だ。

「セドリックに好きな人ができたって騒いでたけど、ほんとなの?」
「え?」

 眉間にぎゅっと力を入れたオーガス兄様は、すかさず「嘘だと思うよ」と言った。

「それかニックの勘違いだね」
「やっぱりオーガス兄様もそう思う?」

 俺もそう思う。
 だってあのセドリックである。極度の面倒くさがりの彼が、人を好きになるなんて考えられない。恋愛とか絶対に興味なさそうだもん。

「ニックは適当なことばっかり言うから」

 ニックのことを散々悪く言うオーガス兄様は、たぶんニックに恨みでもあるんだと思う。常に仕事をサボっているからね。オーガス兄様が文句を言いたくなる気持ちはよくわかるよ。

「ニックのことはどうでもいいんだよ。それよりルイスの友達だよ。なにしてたの?」

 やたらとテオドールとカミールに興味を示す兄様は、俺たちが何をして遊んでいたのかと根掘り葉掘り尋ねてくる。

「普通に遊んだよ」
「ルイスの言う普通ってなに?」
「猫触ったり、お喋りしたり」
「普通だね」

 だから普通だと言っているでしょうが。

「ルイスのことだから。もっと派手な遊びをしているのかと」
「派手な遊びってなに?」
「噴水に飛び込んだりとか」
「そんなことしないよ」

 オーガス兄様は、俺のことをいくつの子供だと思っているのだろうか。流石にもうそんなことはしない。
感想 731

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
【完結/番外編準備中】 目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです! ---------- 追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!! 完結しましたが回収しきれていないエピソードが私の中でいくつかあるので笑、後日番外編をアップしたいなと現在準備中です。 詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!