878 / 965
17歳
874 日記
「オーガス兄様を見習って、俺も日記書いてみようかな」
「勝手に書けばいいだろ」
オーガス兄様に日記を届けるというミッションを達成した俺は、ユリスの部屋に戻ってそう宣言してみた。
けれども冷たいユリスは、俺に一瞥もくれない。なんて愛想の悪いお子様だ。
俺はオーガス兄様の日記を見てしまった。とはいえ中身は日々の出来事を記しただけの面白くないものだったけど。オーガス兄様も、別に見られても問題はないと言っていた。
しかし日記というのは面白そうな気がした。早速使っていないノートを一冊引っ張り出してきた俺は、ユリスの部屋でペンを握る。「自分の部屋で書けよ」と眉を寄せるユリスを無視して、なにを書こうかと考える。
「……」
考えてみるが、日記に書くような面白い出来事はまだ何も起きていない気がする。
ペンを握ったまま、俺は向かいに座って本を読んでいるユリスを見た。
「ねー、ユリス」
「なんだ」
「日記に書けるような面白いことして」
ゆっくり顔をあげたユリスは、俺を見据えて「ルイス」と口を開く。
「おまえ、自分が無茶なことを言っている自覚はあるのか?」
「ないね」
「そうか。僕じゃなくてブルースにでも頼めばいいだろ」
適当に返してくるユリスはやる気がない。タイラーに顔を向けてみるが、彼も苦笑するだけで役に立たない。
やる気のない奴の側に張り付いていても仕方がないので、ここはユリスのアドバイスに従っておくことにする。
『ねぇねぇ、オレのこと書いてもいいよぉ?』
「ティアン! ブルース兄様のとこ行こう」
『ねー、オレのこと日記に書いていいよぉ』
ティアンを引き連れて、早速ブルース兄様の部屋に向かう。なんだか背後から追いかけてくるもふもふ毛玉がぶつぶつ言っている。テオドールたちが帰ったと聞いて、部屋から出てきたらしい。ジャンが連れてきたのだろうか。
『ひどい。こんなに可愛いオレを無視するなんてぇ』
ブルース兄様は部屋にいた。
眉間を揉んで疲れた表情の兄様は、俺を見るなり「今忙しいんだ」と謎アピールをしてくる。
「ねー、兄様ぁ。なんか面白いことして」
「帰れ」
短く言い放ったブルース兄様は、おそらく仕事が忙しくてイライラしているのだ。
「アロン。アロンも仕事したほうがいいよ」
「え? 仕事……?」
ソファで寝ていたアロンに声をかけてみたところ、そんな言葉初めて聞いた的な反応が返ってきた。さすがアロン。
アロンの肩を叩いて起きるように促した。ソファに座り直したアロンは、忙しそうなブルース兄様に「頑張ってくださーい」と半笑いで声をかけた。やめろ。
案の定、ブルース兄様の眉間の皺が深くなった。
「おい、ルイス」
「なに?」
「そいつを連れてどっか行ってくれないか」
「……」
ブルース兄様が「そいつ」と言ったのは、もちろんアロンのことである。
仕事手伝ってもらわなくていいのだろうかと思ったが、ブルース兄様いわく、「どうせ手伝わないのであれば俺の視界から消えてくれた方が数倍マシだ」とのこと。なるほどね。目の前でゴロゴロされると腹が立つってことね。
了解した俺は、アロンの手を引いて立たせる。
「アロン。俺が遊んであげるから外に行こう」
「いいですよ」
にこやかに応じるアロンは、ブルース兄様に手を振ってから廊下に出た。そんなアロンのことをティアンがずっと無言で睨んでいる。だらしない先輩に呆れていることが伝わってくる。
『ブルースくん。がんばれぇ』
「静かにするんだ、綿毛ちゃん」
ブルース兄様の機嫌がこれ以上悪くなってはいけない。へらへら笑っている綿毛ちゃんを抱き上げて、素早く兄様の部屋から離れた。
「アロン。ブルース兄様の邪魔したらダメだよ」
「ルイス様。昨日はあの人たちと何をしていたんですか?」
俺の注意をガン無視したアロンは、怠そうな声でそんな質問をしてきた。テオドールとカミールのことを聞いているのは明白だ。
昨夜、アロンもしばらく一緒にいたのだ。途中で俺が追い出す形になったんだけど。どうやらアロンは、自分が客室を出た後に、俺が何をしていたのか知りたいらしい。
「普通にお喋りしてたよ」
「俺と話していた方が楽しいですよ、絶対に」
「あっうん」
真顔で断言されて、反応に困ってしまう。腕の中の綿毛ちゃんはケラケラ笑っているけど。
「あ! でもティアンとお喋りするよりは、あのお友達と喋る方が楽しいですよね」
ティアンを横目にそんなことを言うアロン。アロンは、いつだってティアンに対する嫌がらせを忘れない。
アロンの言葉を聞き流すティアンの方が、よほど大人だと思う。
苦笑した俺は「ティアンと話すのも楽しいよ」と答えておく。
『オレはぁ? オレとのお喋りも楽しいでしょ?』
「うんうん。綿毛ちゃんと話すのも楽しいよ」
『わーい! やったぁ。オレも坊ちゃんと話すの好きだよ』
満面の笑みを浮かべる綿毛ちゃんを抱え直して、俺はティアンを窺う。アロンのことを呆れきった目で見ていたティアンは、俺の視線に気がついて小さく微笑んでくれた。
「……」
なんだろう。ティアンとは、別に会話がなくても楽しいんだよな。
「勝手に書けばいいだろ」
オーガス兄様に日記を届けるというミッションを達成した俺は、ユリスの部屋に戻ってそう宣言してみた。
けれども冷たいユリスは、俺に一瞥もくれない。なんて愛想の悪いお子様だ。
俺はオーガス兄様の日記を見てしまった。とはいえ中身は日々の出来事を記しただけの面白くないものだったけど。オーガス兄様も、別に見られても問題はないと言っていた。
しかし日記というのは面白そうな気がした。早速使っていないノートを一冊引っ張り出してきた俺は、ユリスの部屋でペンを握る。「自分の部屋で書けよ」と眉を寄せるユリスを無視して、なにを書こうかと考える。
「……」
考えてみるが、日記に書くような面白い出来事はまだ何も起きていない気がする。
ペンを握ったまま、俺は向かいに座って本を読んでいるユリスを見た。
「ねー、ユリス」
「なんだ」
「日記に書けるような面白いことして」
ゆっくり顔をあげたユリスは、俺を見据えて「ルイス」と口を開く。
「おまえ、自分が無茶なことを言っている自覚はあるのか?」
「ないね」
「そうか。僕じゃなくてブルースにでも頼めばいいだろ」
適当に返してくるユリスはやる気がない。タイラーに顔を向けてみるが、彼も苦笑するだけで役に立たない。
やる気のない奴の側に張り付いていても仕方がないので、ここはユリスのアドバイスに従っておくことにする。
『ねぇねぇ、オレのこと書いてもいいよぉ?』
「ティアン! ブルース兄様のとこ行こう」
『ねー、オレのこと日記に書いていいよぉ』
ティアンを引き連れて、早速ブルース兄様の部屋に向かう。なんだか背後から追いかけてくるもふもふ毛玉がぶつぶつ言っている。テオドールたちが帰ったと聞いて、部屋から出てきたらしい。ジャンが連れてきたのだろうか。
『ひどい。こんなに可愛いオレを無視するなんてぇ』
ブルース兄様は部屋にいた。
眉間を揉んで疲れた表情の兄様は、俺を見るなり「今忙しいんだ」と謎アピールをしてくる。
「ねー、兄様ぁ。なんか面白いことして」
「帰れ」
短く言い放ったブルース兄様は、おそらく仕事が忙しくてイライラしているのだ。
「アロン。アロンも仕事したほうがいいよ」
「え? 仕事……?」
ソファで寝ていたアロンに声をかけてみたところ、そんな言葉初めて聞いた的な反応が返ってきた。さすがアロン。
アロンの肩を叩いて起きるように促した。ソファに座り直したアロンは、忙しそうなブルース兄様に「頑張ってくださーい」と半笑いで声をかけた。やめろ。
案の定、ブルース兄様の眉間の皺が深くなった。
「おい、ルイス」
「なに?」
「そいつを連れてどっか行ってくれないか」
「……」
ブルース兄様が「そいつ」と言ったのは、もちろんアロンのことである。
仕事手伝ってもらわなくていいのだろうかと思ったが、ブルース兄様いわく、「どうせ手伝わないのであれば俺の視界から消えてくれた方が数倍マシだ」とのこと。なるほどね。目の前でゴロゴロされると腹が立つってことね。
了解した俺は、アロンの手を引いて立たせる。
「アロン。俺が遊んであげるから外に行こう」
「いいですよ」
にこやかに応じるアロンは、ブルース兄様に手を振ってから廊下に出た。そんなアロンのことをティアンがずっと無言で睨んでいる。だらしない先輩に呆れていることが伝わってくる。
『ブルースくん。がんばれぇ』
「静かにするんだ、綿毛ちゃん」
ブルース兄様の機嫌がこれ以上悪くなってはいけない。へらへら笑っている綿毛ちゃんを抱き上げて、素早く兄様の部屋から離れた。
「アロン。ブルース兄様の邪魔したらダメだよ」
「ルイス様。昨日はあの人たちと何をしていたんですか?」
俺の注意をガン無視したアロンは、怠そうな声でそんな質問をしてきた。テオドールとカミールのことを聞いているのは明白だ。
昨夜、アロンもしばらく一緒にいたのだ。途中で俺が追い出す形になったんだけど。どうやらアロンは、自分が客室を出た後に、俺が何をしていたのか知りたいらしい。
「普通にお喋りしてたよ」
「俺と話していた方が楽しいですよ、絶対に」
「あっうん」
真顔で断言されて、反応に困ってしまう。腕の中の綿毛ちゃんはケラケラ笑っているけど。
「あ! でもティアンとお喋りするよりは、あのお友達と喋る方が楽しいですよね」
ティアンを横目にそんなことを言うアロン。アロンは、いつだってティアンに対する嫌がらせを忘れない。
アロンの言葉を聞き流すティアンの方が、よほど大人だと思う。
苦笑した俺は「ティアンと話すのも楽しいよ」と答えておく。
『オレはぁ? オレとのお喋りも楽しいでしょ?』
「うんうん。綿毛ちゃんと話すのも楽しいよ」
『わーい! やったぁ。オレも坊ちゃんと話すの好きだよ』
満面の笑みを浮かべる綿毛ちゃんを抱え直して、俺はティアンを窺う。アロンのことを呆れきった目で見ていたティアンは、俺の視線に気がついて小さく微笑んでくれた。
「……」
なんだろう。ティアンとは、別に会話がなくても楽しいんだよな。
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
【完結/番外編準備中】
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
----------
追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!!
完結しましたが回収しきれていないエピソードが私の中でいくつかあるので笑、後日番外編をアップしたいなと現在準備中です。
詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!