嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

875 遊んであげよう

 ブルース兄様からアロンのことを頼まれた俺は、アロンを連れてとりあえず庭に出てみた。深い意味はない。アロンをブルース兄様から引き離さなければと思っての行動である。ブルース兄様のためにも、俺がアロンと遊んであげようと思う。

「アロン。なにか面白いことして」
「急に無茶なこと言いますね、ルイス様」

 眉を寄せるアロン。
 しかし俺は、そもそも日記に書けるような面白い出来事を求めてブルース兄様の部屋を訪れたのだ。話題の提供者は、別にブルース兄様でなくても構わない。

 しばらく無言で庭を見渡していたアロンは、「じゃあニックを揶揄って遊びますか?」と雑な提案をしてきた。アロンは、よくニックのことを怒らせて遊んでいる。俺はもっと平和な遊びがしたい。

「あ、そういえば。ニックがね、セドリックに好きな人ができたって言ってたけど。ほんと?」
「嘘に決まってますよ」
「嘘なんだ」

 あっさり言い切ったアロンは「あの団長が恋なんてするわけないでしょ」と続けた。それはその通りだと思う。でも人生なにがあるかわからない。なんか衝撃の出会いでもあったのかもしれない。

 ティアンはどう思う? と背後を勢いよく振り返ると「僕も嘘だと思います」との答え。やっぱりそう思うのか。なんかここまでくるとセドリックが憐れだ。セドリックだって、人を好きになることあるかもしれないのに。

『えー? 嘘じゃないかもよぉ。セドリックさんだって、恋しちゃうかもよ?』

 綿毛ちゃんは、ニックの主張を信じるらしい。いや、これは面白がっているだけかもしれないけど。

 首を捻って悩んでいると、アロンがぱっと笑顔を見せた。

「じゃあ直接聞きに行きましょうよ」
「え」

 思わぬ提案に面食らう。別にそこまで気になるわけでもない。しかしアロンと綿毛ちゃんはすっかりその気だ。

「行きましょう、ルイス様」
「あ、うん」

 アロンに手招きされて、俺はあとを追う。

「なんか面倒なことになっちゃったかも」

 隣にいたティアンに向けてぽつりと呟くと、苦笑が返ってきた。

 セドリックは騎士棟にいるらしい。
 嬉々として先頭を行くアロンは、絶対にこの状況を面白がっていた。

「団長? ちょっといいですかぁ」

 変に間延びした声で団長の執務室に突撃したアロンだが、すぐに「あれ?」と首を傾げた。

「いないですね」

 肩をすくめるアロンに、ティアンが「外では?」と冷静に言う。訓練場にいるのではというその指摘に、アロンが無言を返している。ティアンの言葉だから無視したのだろうか。大人げないぞ。

『オレが探してきてあげる』
「どうやって?」
『どうにかして。がんばるよー』

 適当な毛玉は、今にも駆け出してしまいそうだ。その前に捕まえておく。

「じゃあ外に行ってみる?」
「そうですね。それがいいですね」

 ティアンの言葉は無視したのに、俺が言うと笑顔で賛成してくるアロン。相変わらずで笑ってしまう。

『あ、ロニーさんだぁ』
「え!」

 外に出ようと踵を返したところで、綿毛ちゃんがにこにこしながら声をあげる。こちらに歩いてくるロニーが見えた。

「ロニー!」

 急いで綿毛ちゃんをティアンに渡して、ロニーに駆け寄る。

「ルイス様。どうしたんですか?」
「えっとね、セドリックに用があって来たんだけど。まぁセドリックはどうでもいいや」

 俺はそこまでして真相を確かめたいわけでもない。

 不思議そうに「団長はもういいんですか?」と尋ねてくるロニーに勢いよく頷いてみせる。

「ルイス様」

 すると背後から近寄ってきたアロンが、不機嫌そうにロニーを睨みつける。

「なに? 団長ならいないけど」
「あれ? いませんでしたか?」

 目を瞬くロニー。どうやらロニーもセドリックを探していたらしい。

「じゃあ一緒に探そう」

 別にセドリックのことはどうでもいいけど、ロニーが困っているのであれば協力したい。優しく微笑んで「ありがとうございます」と言ってくれるロニー。

 その柔らかい雰囲気につられて、俺もにこにこになる。

『あー、ロニーさん! オレが一緒に探してあげる。抱っこして』

 急に飛び出してきた綿毛ちゃんが、ロニーに抱っこしてほしいと騒ぎはじめる。なにを言っているのだ。この毛玉め。

「綿毛ちゃん! うるさいよ」
『坊ちゃんにはティアンさんがいるでしょ。オレはロニーさんと仲良くします』
「ロニーは毛玉なんかと遊ばないから!」
『遊んでくれるもーん。ロニーさんは優しいもーん』

 ふんふん言いながら暴れる毛玉を急いで捕獲する。
 ロニーを困らせるのはやめるんだ。
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