嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

879 ごはん

「それで、結局日記を書くのはやめたのか?」

 翌日。
 朝食を食べながら訊いてきたユリスに、俺は首を横に振る。どうやらユリスも、俺の日記に興味があるようだ。

「ううん。ちゃんと書いたよ」

 それに俺はいいことを思いついたのだ。得意な顔で口を開く。

「アロンに見せてもいい用と、見せない用。ふたつ作ることにしたんだ。いいでしょ」
「なんだそれ」

 どうしてそんな面倒なことにと眉を寄せるユリス。そんなこと言われても仕方がないだろう。だってアロンがうるさいんだから。どうせまたすぐに日記を見せろと言ってくるに違いない。俺くらいになると、アロンの次の動向が予想できてしまうのだ。

 宣言通り、ティアンと手を繋いだ件もしっかり書いておいた。もちろんアロンには見せない用のノートに。アロンはティアンのことが嫌いなのだ。俺の日記が原因でティアンへの嫌がらせが増えたら可哀想だと思う。

 しかし書いていて思ったのだが、これでいいのだろうか。ティアンと付き合ってから、確実にティアンとの距離は縮まった。だが、まだまだという気もする。手を繋ぐくらい、ティアン以外とも普通にやっちゃうからね。

 俺はもっと恋人らしいことをしたいのに、ティアンは渋ってしまう。あんまり強引にいってティアンを困らせるのも本意ではない。

 部屋の中にティアンがいるのを見て、考える。

 ユリスにちょっと相談してみたいけど、ティアンいるしなぁ。どうにかティアンを追い出せないかと考えるが、あまり不自然なことをやると疑われてしまう。ユリスは、文句を言いながらも俺のことを助けてくれる。

「綿毛ちゃん、綿毛ちゃん」
『うーん?』

 小声で足元にいる綿毛ちゃんを呼んでみる。お皿に顔を突っ込んで懸命にご飯を食べている綿毛ちゃんは、上の空で返事してくる。

「綿毛ちゃんってば!」
『うーん』

 ガツガツ食べている綿毛ちゃんは、顔を上げる気配がない。食いしん坊め。

 ちょっぴり苛立った俺は、椅子を降りてから綿毛ちゃんのお皿を奪い取る。

『あー!!』

 大声を上げた綿毛ちゃんは、絶望顔で目を見開いている。

「俺の話聞いて!」
『オレのごはん……』

 ぷるぷる震える綿毛ちゃんに、ティアンとタイラーが寄ってきた。ついでにジャンも。

「ルイス様。なにをしているんですか」

 なぜか俺を注意してくるティアンに、頬を膨らませる。今のは俺の話を聞かない綿毛ちゃんが悪いのだ。

『ひどいよ、オレのごはん……』

 パタンと倒れる綿毛ちゃんは、そのまま動かなくなってしまった。ジャンが綿毛ちゃんのことを心配して声をかけているけど、毛玉はピクリとも動かない。

「……」

 なんで俺が悪いみたいな雰囲気になるのだ。ユリスがこの惨状を鼻で笑っている。見ていないで助けろよ。

 妙な空気に負けた俺は、そっとお皿を床に戻した。途端に綿毛ちゃんが起き上がって食べ始める。食いしん坊め。

 綿毛ちゃんに、ティアンのことを部屋から追い出してとお願いするつもりだったのに。みんなに注目されてしまった今では、そんな願いも口にできない。

 綿毛ちゃんの頭をぐいっと押してやる。

『ごはんの邪魔しないでくださぁい』
「綿毛ちゃんめ。もう一緒に遊んであげないから」
『えー? オレが坊ちゃんと毎日遊んであげてるんですけどぉ?』
「嘘つかないで」

 適当なことを言う綿毛ちゃんを睨んでから、俺も席に戻る。どう見ても俺が綿毛ちゃんを育てているのに、綿毛ちゃんはいつも綿毛ちゃんが俺を育てていると堂々と主張するのだ。そんなわけないのに。
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