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17歳
881 何をしたいのか
うるさい綿毛ちゃんのことはジャンに任せて、俺はユリスと向き合う。
「恋人ってなにすればいいの?」
「……」
腕を組んで考え込むユリスは、「なんで僕に訊くんだ」と小声で文句を言っている。それでも答えてくれるつもりはあるようで、眉を寄せて黙り込む。
「とりあえず口付けでもしておけばいいんじゃないか?」
「それはもうやったよ」
「勝手にやるな」
「なんでだよ」
不機嫌になるユリスは「やる前に僕に報告するのが礼儀ってものだろう」と変なことを口走った。どんな礼儀だよ。そんなの初耳なんですが。
「おまえ、それでも僕の弟か?」
「弟はユリスだろ」
「ふざけるな。僕が兄、ルイスが弟。そんなこと考えなくてもわかるだろ」
「俺が兄!」
「うるさい」
横暴なユリスは、一方的に自分が兄だと結論を出す。
『え? まだどっちが弟かで揉めてるの?』
綿毛ちゃんが呆れたような口調で首を傾げるけど、これは大事な問題なのだ。そう簡単に結論が出てたまるか。俺が兄。これは絶対に譲れない。
やれやれと偉そうに肩をすくめたユリスは、「おまえの言う口付けって、どうせあれだろ。子供っぽいやつだろ」と鼻で笑ってきた。なんだよ、その小馬鹿にした態度は。
「そんなことないよ。俺はユリスより大人だからね」
「子供がなに言ってんだ」
「お子様はそっちだろ! お子様ユリスめ!」
「うるさい」
こっちを睨んでくるユリスは、深く息を吐き出す。
そうしてたっぷり沈黙したユリスは、前触れなく「一緒に寝たらいいんじゃないか?」と言い放った。
これに声をあげたのはタイラーである。「それはちょっと」と珍しくオロオロするタイラーは、ジャンに「ですよね?」と意見を求めた。
綿毛ちゃんに絡まれていたジャンは、眉尻を下げて困った顔だ。
「ルイス様のお気持ちもわかりますが、こればかりはティアンさんに直接訊いてみないことにはなんとも」
控えめにそう言ったジャンは、要するに俺だけ先走っても仕方がないと言いたいのだろう。それはそうなんだけど。でもティアンに訊いても曖昧に誤魔化されてしまいそうな気がするのだ。
「ティアンはあれだな。意気地なしだからな」
ユリスのぽつりとした呟きに、タイラーが「意気地なしとは少し違うのでは?」と言い返している。タイラーは、なぜかティアンの味方をしがち。
どちらにせよ、これってティアンに直接言ってどうにかなる問題じゃない気もする。
いや、どうなんだろう。案外あっさり解決したりするのだろうか。そもそもなんでティアンは遠慮気味なんだろうか。付き合うことは、既にみんなに報告している。今更遠慮する必要はないと思うけど。
「……ユリス」
「断る」
「まだ何も言ってないだろ」
先走って断るユリスは、眉を寄せて面倒くさいと言わんばかり。
「どうせティアンのことをどうにかしてと曖昧なこと言うんだろ。僕にどうしろって言うんだ」
「そんな冷たいこと言わないでよ。クッキーあげるから」
「僕がクッキーで釣られると思うなよ」
え、釣られてくれないの?
お子様なのに?
ちょっと驚いていると、ユリスが大袈裟にため息を吐く。
「僕はティアンのことが嫌いだ」
「そんなはっきり言うなよ。ティアンが可哀想だろ」
「そんな僕にティアンの考えていることがわかるわけないだろう」
「そうなの?」
ティアンのことは理解できないと言い切ったユリス。まぁ、たしかにね。ユリスとティアンにはあまり共通点がない。
「そもそもルイスは、ティアンと何がしたいんだ。何をできれば満足なんだ」
「一緒に寝るんだよ。さっきからそう言ってるだろ」
「言ってないぞ」
「いいや、言ったね。最初から言ってたもんね」
『今そこはどうでもよくない?』
のんびり口を挟んでくる綿毛ちゃんは、『ティアンさんは、照れ屋さんだからぁ』とわかったような口を利く。綿毛ちゃんにティアンの何がわかるって言うんだ。
「もう一回旅行しようよ」
「はぁ?」
前のめりに提案すると、ユリスが片眉を持ち上げる。
「どういう話の流れなんだ、これ」
なぜかタイラーに向けて文句を言ったユリス。話を向けられたタイラーが「知りませんよ」と雑に返している。
「だって前にティアンと旅行したときね。宿で一緒の部屋だったんだよ。その時はティアンも一緒の部屋で寝てくれたもん」
「……おまえ、ほんと子供だな」
目を細めて俺を眺めたユリスは、眉間を押さえてしまう。
「一緒に寝るって、一緒の部屋だったら満足なのか?」
「夜中までお喋りするんだ」
「友達かよ」
「恋人だよ」
「馬鹿ルイス」
「俺の悪口言うな!」
つまらないと一方的に話を終わらせたユリスは、ジャンにお茶のお代わりを要求している。すかさず新しいお茶を淹れてあげるジャンを横目に、俺は頬を膨らませた。
「ユリス。俺の話、真面目に聞いて」
「もう散々聞いてやっただろ。じゃあ、あれだ。一緒に朝まで起きておこうとか適当に誘えばいいだろ」
そんなのでいいのか?
なんかユリス、面倒になって適当なこと言ってないか? 大丈夫?
「恋人ってなにすればいいの?」
「……」
腕を組んで考え込むユリスは、「なんで僕に訊くんだ」と小声で文句を言っている。それでも答えてくれるつもりはあるようで、眉を寄せて黙り込む。
「とりあえず口付けでもしておけばいいんじゃないか?」
「それはもうやったよ」
「勝手にやるな」
「なんでだよ」
不機嫌になるユリスは「やる前に僕に報告するのが礼儀ってものだろう」と変なことを口走った。どんな礼儀だよ。そんなの初耳なんですが。
「おまえ、それでも僕の弟か?」
「弟はユリスだろ」
「ふざけるな。僕が兄、ルイスが弟。そんなこと考えなくてもわかるだろ」
「俺が兄!」
「うるさい」
横暴なユリスは、一方的に自分が兄だと結論を出す。
『え? まだどっちが弟かで揉めてるの?』
綿毛ちゃんが呆れたような口調で首を傾げるけど、これは大事な問題なのだ。そう簡単に結論が出てたまるか。俺が兄。これは絶対に譲れない。
やれやれと偉そうに肩をすくめたユリスは、「おまえの言う口付けって、どうせあれだろ。子供っぽいやつだろ」と鼻で笑ってきた。なんだよ、その小馬鹿にした態度は。
「そんなことないよ。俺はユリスより大人だからね」
「子供がなに言ってんだ」
「お子様はそっちだろ! お子様ユリスめ!」
「うるさい」
こっちを睨んでくるユリスは、深く息を吐き出す。
そうしてたっぷり沈黙したユリスは、前触れなく「一緒に寝たらいいんじゃないか?」と言い放った。
これに声をあげたのはタイラーである。「それはちょっと」と珍しくオロオロするタイラーは、ジャンに「ですよね?」と意見を求めた。
綿毛ちゃんに絡まれていたジャンは、眉尻を下げて困った顔だ。
「ルイス様のお気持ちもわかりますが、こればかりはティアンさんに直接訊いてみないことにはなんとも」
控えめにそう言ったジャンは、要するに俺だけ先走っても仕方がないと言いたいのだろう。それはそうなんだけど。でもティアンに訊いても曖昧に誤魔化されてしまいそうな気がするのだ。
「ティアンはあれだな。意気地なしだからな」
ユリスのぽつりとした呟きに、タイラーが「意気地なしとは少し違うのでは?」と言い返している。タイラーは、なぜかティアンの味方をしがち。
どちらにせよ、これってティアンに直接言ってどうにかなる問題じゃない気もする。
いや、どうなんだろう。案外あっさり解決したりするのだろうか。そもそもなんでティアンは遠慮気味なんだろうか。付き合うことは、既にみんなに報告している。今更遠慮する必要はないと思うけど。
「……ユリス」
「断る」
「まだ何も言ってないだろ」
先走って断るユリスは、眉を寄せて面倒くさいと言わんばかり。
「どうせティアンのことをどうにかしてと曖昧なこと言うんだろ。僕にどうしろって言うんだ」
「そんな冷たいこと言わないでよ。クッキーあげるから」
「僕がクッキーで釣られると思うなよ」
え、釣られてくれないの?
お子様なのに?
ちょっと驚いていると、ユリスが大袈裟にため息を吐く。
「僕はティアンのことが嫌いだ」
「そんなはっきり言うなよ。ティアンが可哀想だろ」
「そんな僕にティアンの考えていることがわかるわけないだろう」
「そうなの?」
ティアンのことは理解できないと言い切ったユリス。まぁ、たしかにね。ユリスとティアンにはあまり共通点がない。
「そもそもルイスは、ティアンと何がしたいんだ。何をできれば満足なんだ」
「一緒に寝るんだよ。さっきからそう言ってるだろ」
「言ってないぞ」
「いいや、言ったね。最初から言ってたもんね」
『今そこはどうでもよくない?』
のんびり口を挟んでくる綿毛ちゃんは、『ティアンさんは、照れ屋さんだからぁ』とわかったような口を利く。綿毛ちゃんにティアンの何がわかるって言うんだ。
「もう一回旅行しようよ」
「はぁ?」
前のめりに提案すると、ユリスが片眉を持ち上げる。
「どういう話の流れなんだ、これ」
なぜかタイラーに向けて文句を言ったユリス。話を向けられたタイラーが「知りませんよ」と雑に返している。
「だって前にティアンと旅行したときね。宿で一緒の部屋だったんだよ。その時はティアンも一緒の部屋で寝てくれたもん」
「……おまえ、ほんと子供だな」
目を細めて俺を眺めたユリスは、眉間を押さえてしまう。
「一緒に寝るって、一緒の部屋だったら満足なのか?」
「夜中までお喋りするんだ」
「友達かよ」
「恋人だよ」
「馬鹿ルイス」
「俺の悪口言うな!」
つまらないと一方的に話を終わらせたユリスは、ジャンにお茶のお代わりを要求している。すかさず新しいお茶を淹れてあげるジャンを横目に、俺は頬を膨らませた。
「ユリス。俺の話、真面目に聞いて」
「もう散々聞いてやっただろ。じゃあ、あれだ。一緒に朝まで起きておこうとか適当に誘えばいいだろ」
そんなのでいいのか?
なんかユリス、面倒になって適当なこと言ってないか? 大丈夫?
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