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17歳
885 笑っちゃう
「ティアン。寝てたんじゃなかったの? なんで起きてるの?」
「嫌な予感がしたので」
「ふーん?」
どうやらティアンは、綿毛ちゃんが一緒に寝ようと言い出したあたりから怪しさを感じていたようだ。綿毛ちゃんめ。どこが完璧な作戦なんだ。一番最初でつまずいているじゃないか。
ということは、ティアンは何かが怪しいと思いながら作戦に乗ってくれたことになる。
どうしてだろうか。
隣に座っているティアンを見上げると、困ったような控えめな笑みが返ってくる。
「ルイス様は、諦めが悪いので」
頬をかいたティアンは、それきり前を向いたまま黙ってしまう。
まぁ、確かに俺は諦めの悪いところもあるかもしれない。
「でもティアンもだよ。俺のこと部屋に入れてくれないし」
「今いるの僕の部屋ですけど」
「ここまで来るのにすごく苦労した」
全部ティアンの諦めの悪さが原因だぞ。
ティアンの肩をぐいっと強めに押すと、ティアンが小さく「それは申し訳ありませんでした」と言った。全然申し訳ないとは思ってない感じの言い方だった。生意気だぞ。
ペシペシとティアンの肩を叩いておく。なにも言わないティアンは、されるがままだった。
「……あの、ルイス様」
「なに?」
横目でこっちを見てきたティアンは、微かに眉を寄せている。おまけに唇を引き結んでいた。
これは何か言いたいことがあるのに、言うのを我慢している時の顔だな。
ティアンは、よくわからないけど俺に遠慮しているらしい。どうして俺に遠慮する必要があるのだろうかと不思議に思うけど、俺も時折ティアンに言ってもいいのか迷ってしまうことがある。
ずっと一緒にいるからといって、恋人だからといって、なんでもすんなり言えるわけじゃないと最近知った。
逆に、恋人だからこそ言えないこともあったりするのだ。
けれども俺は、別にティアンから何を言われても平気な気がする。
そりゃあ内容によっては普通に怒るし、しばらくティアンと喧嘩になるかもしれない。
でも、最終的にはなんか大丈夫な気がするのだ。根拠はないけど。
「なに? 俺はまだ寝ないけど」
部屋に戻れと言われても戻らないぞ。
そう思ってティアンを睨んでやると、苦笑が返ってくる。
「……ルイス様は、どうして僕のこと好きって言ってくれるんですか?」
しばらく黙り込んだあと、ティアンがぽつりと言った。
なにその質問。
目を瞬いた俺は、ティアンの背中を強めに叩いてやる。
「痛いんですけど。なにするんですか」
「うるさいぞ」
もう一度ティアンの背中を叩いて、ベッドに倒れ込む。ティアンが慌てたように「寝ないでくださいよ?」と声をかけてくる。
「どうしてそういうこと聞くの?」
「え?」
「俺がティアンのこと好きなのは、変?」
小声で言って、ティアンから顔を背けた。ティアンに背中を向けるような形で、傍に寝ていたエリスちゃんを引き寄せる。
もふもふを抱え込んで、黙り込んだ。
ティアンも黙ったままなので、部屋に妙な沈黙が降りる。
「すみません。今のは忘れてください」
ぽつりと言われて、エリスちゃんの背中に顔を埋める。
でも、どうしてもティアンの顔が見たくなって勢いよく体を起こした。
「ティアンのバーカ!」
「ちょっ、なにするんですか」
バシバシとティアンのことを叩いてやる。それでも逃げないティアンは、ちょっと困っている雰囲気だ。困っているのは俺もだけど?
「ティアンって、なんでそんな変なこと考えてるの?」
「変なことなんて考えていませんよ」
「細かいこと気にし過ぎ! 綿毛ちゃんを見習った方がいいよ。あの毛玉なんにも考えてないから!」
『考えてるよ、失礼なぁ』
急に割り込んできた綿毛ちゃんに、びっくりしてしまう。起きていたのか?
「綿毛ちゃんが考えてるのって、ごはんとおやつのことだけでしょ」
『違います。他にも考えてまーす』
むっと顔を伏せる綿毛ちゃんは、そのまま寝てしまう。
「……」
ティアンと顔を見合わせて、俺は思わず笑ってしまった。つられてティアンも笑う。
しばらく静かに笑ったあと、ティアンが目元を拭うような仕草をした。
「……さっきのは忘れてください」
「どれを?」
「え、あぁ。だから、なんで好きなのかって話ですよ」
「それ、さっきも忘れてくれって言ったよ」
「え? そうでしたっけ?」
首筋に手をやるティアンは、どうやら焦っていたらしい。もう何が何だかわからなくて、またもや笑ってしまう。
「ちょっと。そんなに笑わないでくださいよ」
「だって、ティアン。今日はなんか格好つかないね」
珍しくグダグダ。
ばつの悪そうに視線を逸らすティアン。
「でも俺、格好悪いティアンも好きだよ」
頼りになるティアンも好きだけど、困った顔のティアンも好き。何かやらかしてこっそり焦っているティアンも好き。
「そういうこと言わないでくださいよ」
「なんで? 別に揶揄ってるわけじゃないよ」
「……いや、嬉しくて眠れなくなりそうなので」
「どういうこと?」
思わぬ言葉に、笑っちゃう。
笑い事じゃないんですよと眉を寄せるティアンを見て、ますます笑っちゃう。
ベッドに倒れ込んだ俺は、それからしばらく笑いが止まらなかった。
「嫌な予感がしたので」
「ふーん?」
どうやらティアンは、綿毛ちゃんが一緒に寝ようと言い出したあたりから怪しさを感じていたようだ。綿毛ちゃんめ。どこが完璧な作戦なんだ。一番最初でつまずいているじゃないか。
ということは、ティアンは何かが怪しいと思いながら作戦に乗ってくれたことになる。
どうしてだろうか。
隣に座っているティアンを見上げると、困ったような控えめな笑みが返ってくる。
「ルイス様は、諦めが悪いので」
頬をかいたティアンは、それきり前を向いたまま黙ってしまう。
まぁ、確かに俺は諦めの悪いところもあるかもしれない。
「でもティアンもだよ。俺のこと部屋に入れてくれないし」
「今いるの僕の部屋ですけど」
「ここまで来るのにすごく苦労した」
全部ティアンの諦めの悪さが原因だぞ。
ティアンの肩をぐいっと強めに押すと、ティアンが小さく「それは申し訳ありませんでした」と言った。全然申し訳ないとは思ってない感じの言い方だった。生意気だぞ。
ペシペシとティアンの肩を叩いておく。なにも言わないティアンは、されるがままだった。
「……あの、ルイス様」
「なに?」
横目でこっちを見てきたティアンは、微かに眉を寄せている。おまけに唇を引き結んでいた。
これは何か言いたいことがあるのに、言うのを我慢している時の顔だな。
ティアンは、よくわからないけど俺に遠慮しているらしい。どうして俺に遠慮する必要があるのだろうかと不思議に思うけど、俺も時折ティアンに言ってもいいのか迷ってしまうことがある。
ずっと一緒にいるからといって、恋人だからといって、なんでもすんなり言えるわけじゃないと最近知った。
逆に、恋人だからこそ言えないこともあったりするのだ。
けれども俺は、別にティアンから何を言われても平気な気がする。
そりゃあ内容によっては普通に怒るし、しばらくティアンと喧嘩になるかもしれない。
でも、最終的にはなんか大丈夫な気がするのだ。根拠はないけど。
「なに? 俺はまだ寝ないけど」
部屋に戻れと言われても戻らないぞ。
そう思ってティアンを睨んでやると、苦笑が返ってくる。
「……ルイス様は、どうして僕のこと好きって言ってくれるんですか?」
しばらく黙り込んだあと、ティアンがぽつりと言った。
なにその質問。
目を瞬いた俺は、ティアンの背中を強めに叩いてやる。
「痛いんですけど。なにするんですか」
「うるさいぞ」
もう一度ティアンの背中を叩いて、ベッドに倒れ込む。ティアンが慌てたように「寝ないでくださいよ?」と声をかけてくる。
「どうしてそういうこと聞くの?」
「え?」
「俺がティアンのこと好きなのは、変?」
小声で言って、ティアンから顔を背けた。ティアンに背中を向けるような形で、傍に寝ていたエリスちゃんを引き寄せる。
もふもふを抱え込んで、黙り込んだ。
ティアンも黙ったままなので、部屋に妙な沈黙が降りる。
「すみません。今のは忘れてください」
ぽつりと言われて、エリスちゃんの背中に顔を埋める。
でも、どうしてもティアンの顔が見たくなって勢いよく体を起こした。
「ティアンのバーカ!」
「ちょっ、なにするんですか」
バシバシとティアンのことを叩いてやる。それでも逃げないティアンは、ちょっと困っている雰囲気だ。困っているのは俺もだけど?
「ティアンって、なんでそんな変なこと考えてるの?」
「変なことなんて考えていませんよ」
「細かいこと気にし過ぎ! 綿毛ちゃんを見習った方がいいよ。あの毛玉なんにも考えてないから!」
『考えてるよ、失礼なぁ』
急に割り込んできた綿毛ちゃんに、びっくりしてしまう。起きていたのか?
「綿毛ちゃんが考えてるのって、ごはんとおやつのことだけでしょ」
『違います。他にも考えてまーす』
むっと顔を伏せる綿毛ちゃんは、そのまま寝てしまう。
「……」
ティアンと顔を見合わせて、俺は思わず笑ってしまった。つられてティアンも笑う。
しばらく静かに笑ったあと、ティアンが目元を拭うような仕草をした。
「……さっきのは忘れてください」
「どれを?」
「え、あぁ。だから、なんで好きなのかって話ですよ」
「それ、さっきも忘れてくれって言ったよ」
「え? そうでしたっけ?」
首筋に手をやるティアンは、どうやら焦っていたらしい。もう何が何だかわからなくて、またもや笑ってしまう。
「ちょっと。そんなに笑わないでくださいよ」
「だって、ティアン。今日はなんか格好つかないね」
珍しくグダグダ。
ばつの悪そうに視線を逸らすティアン。
「でも俺、格好悪いティアンも好きだよ」
頼りになるティアンも好きだけど、困った顔のティアンも好き。何かやらかしてこっそり焦っているティアンも好き。
「そういうこと言わないでくださいよ」
「なんで? 別に揶揄ってるわけじゃないよ」
「……いや、嬉しくて眠れなくなりそうなので」
「どういうこと?」
思わぬ言葉に、笑っちゃう。
笑い事じゃないんですよと眉を寄せるティアンを見て、ますます笑っちゃう。
ベッドに倒れ込んだ俺は、それからしばらく笑いが止まらなかった。
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