嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

894 仕方ないですね

「ルイス様、ルイス様」
「うん?」

 ある日、廊下を歩いていると前方からやって来たアロンに手招きされた。

「どうしたの」

 ちょっと部屋を出て、ユリスに本でも借りようと思っていたところである。俺がひとりであること確認するように周囲を見渡したアロンは、俺の前で足を止めるなり「仕方がないですね」と苦い顔で呟いた。

 一体なにが仕方ないと言うのだ。
 訝しむ俺に、アロンは偉そうに腕を組んでみせる。

「今夜、寝る前にでも俺の部屋に来てください。いいですか。ティアンには内緒ですよ。ティアンは連れてこないでくださいね」
「うん、わかった。なにするの? 悪いこと?」

 わざわざティアンを呼ぶなと念押しするくらいである。ティアンにバレたら止められるような悪いことをするつもりなのだろう。

 好奇心の勝った俺は、深く考えずに頷いた。

「ねー、夜中になにするの?」

 けれども目的は気になる。こそこそ小声で尋ねると、アロンは眉を寄せた。

「ルイス様がどうしてもハドリーに会わせろって言ったんでしょ」
「え、ハドリー連れてきてくれるの?」
「今夜ですよ。ちゃんと来てくださいね」
「わかった! ありがとう、アロン」

 さすがアロン。
 正直、もう断られたんだと思っていたのに。

 ティアンは多分、ハドリーのことが嫌いだ。ティアンに知られると厄介なことになるので、彼には内緒なのだろう。そういうことなら了解した。

 俺はうまいこと部屋を抜け出してくるので、任せてほしい。

 アロンと別れて、当初の目的通りユリスの部屋にお邪魔する。アロンとの約束の件は、ユリスにも内緒にしておこう。ユリスがうっかりティアンに伝えてしまったらまずいから。

「ユリス。なんか面白そうな本かして」
「勝手に持っていけ」
「ありがとう」

 熱心に何かを書いているユリス。テーブルに数冊の本が開いたままになっているので、なにか調べ物でもしているのだろう。

 集中しているユリスの邪魔をしないように、無言で本棚をあさる。

「タイラーは?」

 けれどもすぐに沈黙が我慢できなくなって、どうでもいい質問をしてみた。顔を上げたユリスは、ぼんやりした様子で室内を見回す。どうやらタイラーの不在に今気がついたらしい。ぼんやりし過ぎじゃないか?

「どこかに行ったんだろう。知らない」
「ふーん」
「そっちこそ、ティアンはどうした」
「ティアンは俺の部屋にいるよ。ジャンも」

 ユリスはあまり賑やかなのが好きじゃないので、遠慮して俺ひとりでやってきたのだ。

 そうか、と短く応じるユリスは難しい顔でノートを見つめている。

「なにしてるの?」
「ルイスには関係ない」
「そんなこと言わないでよ」

 適当に本を一冊抜いて、ユリスの向かいに座る。

「ねー、ユリス」
「なんだ」
「ユリスの本、ジェフリーにも貸していい?」

 顔を上げたユリスは、少し間を置いてから「いいぞ」と言ってくれた。

「でもジェフリーはそういうの読むのか?」
「読むよ。面白いって言うよ、たぶん」

 ユリスの本棚には、魔法とか御伽話とか。そういう系統のものが多い。普通に面白いと思うし、ジェフリーもそういうものは好きだ。

 ユリスの許可をもらったので、今度何冊かジェフリーに持っていこうと思う。ジェフリーも喜んでくれるといいな。

 ジェフリーに貸せそうな本を選ぶべく再び本棚の前に戻る俺を一瞥して、ユリスが息を吐いた。

「どうしたの、ユリス。ため息?」
「違う。少し疲れただけだ」
「ふーん」

 おそらく魔法の研究でもしているのだろう。研究所に俺も連れて行ってくれと何度も頼んでいるのだが、いまだに連れて行ってもらえていない。

 しかしユリスいわく資料を集めただけの部屋らしい。イメージとしては図書館みたいな感じだろうか。楽しそうだけどね。一回くらいは行ってみたいよね。
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