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17歳
騎士団の日常5(sideニック)
「団長が、団長が困ってるんですよ。もう俺がどうにかするしかない」
「いや、団長はご自分でどうにかすると思いますけど?」
ここ最近、団長の周囲を変な人間がうろついている。その件で頭を悩ませていた俺を困ったように一瞥してから、ロニーが苦笑した。
「そもそも本当にそんな人がいるんですか? 私は見かけたことないのですが」
「さすがに相手もヴィアン家の中までは入ってこないから」
「あぁ、なるほど」
だから団長がヴィアン家の敷地内にいる間は安全だと自分に言い聞かせる。しかし団長もずっとヴィアン家にいるわけでもない。普通に街に買い物に行ったりするし、仕事で外に出たりもする。そんな時、決まって変な人間が湧いてくるのだ。
あれをどうにかしなければ。
そう思い詰める俺の隣で書類を整理していたロニーが「ニックさんが動く必要はないのでは?」と首を傾げながら言う。
アロンに相談してもまともに取り合ってもらえず、困った俺はロニーの執務室に押しかけていた。そこで書類整理をしていたロニー相手に、これまでの流れをつらつら説明したのだが、ロニーもあまり乗り気ではないように見える。みんなして団長に無関心すぎないか?
「ロニー、真面目に考えてくれ。団長になにかあってからじゃ遅いんだって」
「そんなこと言われましても」
僅かに眉を寄せるロニーは「私も仕事がありますから」と手元の書類に視線を落とす。
「そういうことは、アロンさんの方が得意なのでは?」
「そうなんだけど。あいつは笑ってばかりで役に立たないから」
「私もお役には立てないと思いますけど」
そんなことはない。
ロニーは、俺の知り合いの中では一番まともな人間だと思う。その次にまともなのはティアンだろうか。ティアンは真面目だが、なんかルイス様以外の人間に対して冷たいところがある。俺が相談しても「僕には関係のない話ですね」ときっぱり言われて終わりだろう。
だからロニーに相談しているのだ。
けれどもロニーは、困ったように微笑むばかり。
「団長のことは、とりあえずいいとして」
「なにもよくないけど?」
強引に話を終わらせようとするロニーは、書類を置いて立ち上がった。
「えっと、ティアンさんはルイス様のところですか?」
「ティアンなら出かけたらしいけど。なんか友達と飯行くって。なに? ティアンに用事?」
「ティアンさん、友達いるんですか?」
なんかロニーが、さらっと失礼なことを言った。珍しくて思わずロニーの顔を凝視すると、ロニーが己の失言に気がついたらしい。慌てた様子で「あ、いえ。つい口が滑りました」と言って自分の口元を押さえる。
「いや、わかるよ。ティアンは友達とか興味なさそうな感じに見えるからな。王立騎士団の子だってさ」
俺のフォローに、ロニーがなんとも言えない表情になる。けれどもすぐに「あぁ、もしかしてあの時の」とひとりで頷いた。
「なに? 知り合い?」
「以前仕事で一緒に。ルイス様がカミール様の誕生日パーティーに行くと言ってお出かけになった際に一緒にいた人でしょうか?」
「いや俺は知らないけど」
そう言えばそんなこともあったな。ロニーいわく、その時にティアンの友達を名乗る人物がひとりいたらしい。
「ティアンさんは、ルイス様にべったりだと思っていたので」
「それはわかる。あいつルイス様にべったりしすぎだよな」
なにをするにもルイス様ルイス様でちょっと引くと肩をすくめると、ロニーが「え、あなたがそれを言っちゃうんですか?」と頬を引きつらせた。どういう意味だ。
「いや、俺は団長を心配して見守ってるだけだから」
「……」
「なんだよ、その目は」
呆れたような視線を向けてくるロニーは、話題を切り替えるように頭を振った。
「なんにせよ、ティアンさんにちゃんと友達がいるのだと知って安心しました」
「まー、そうだな。で、問題は団長だよ」
「ですから。団長の件は私に言われてもわかりませんよ」
逃げるように部屋を出るロニーを追いかける。
この件については本当にアロンがあてにならないので、ロニーに頼むしかないのだ。
一緒に団長のことを考えてほしいと言い募るが、ロニーは眉をひそめるだけで協力してくれるとは言ってくれなかった。
「いや、団長はご自分でどうにかすると思いますけど?」
ここ最近、団長の周囲を変な人間がうろついている。その件で頭を悩ませていた俺を困ったように一瞥してから、ロニーが苦笑した。
「そもそも本当にそんな人がいるんですか? 私は見かけたことないのですが」
「さすがに相手もヴィアン家の中までは入ってこないから」
「あぁ、なるほど」
だから団長がヴィアン家の敷地内にいる間は安全だと自分に言い聞かせる。しかし団長もずっとヴィアン家にいるわけでもない。普通に街に買い物に行ったりするし、仕事で外に出たりもする。そんな時、決まって変な人間が湧いてくるのだ。
あれをどうにかしなければ。
そう思い詰める俺の隣で書類を整理していたロニーが「ニックさんが動く必要はないのでは?」と首を傾げながら言う。
アロンに相談してもまともに取り合ってもらえず、困った俺はロニーの執務室に押しかけていた。そこで書類整理をしていたロニー相手に、これまでの流れをつらつら説明したのだが、ロニーもあまり乗り気ではないように見える。みんなして団長に無関心すぎないか?
「ロニー、真面目に考えてくれ。団長になにかあってからじゃ遅いんだって」
「そんなこと言われましても」
僅かに眉を寄せるロニーは「私も仕事がありますから」と手元の書類に視線を落とす。
「そういうことは、アロンさんの方が得意なのでは?」
「そうなんだけど。あいつは笑ってばかりで役に立たないから」
「私もお役には立てないと思いますけど」
そんなことはない。
ロニーは、俺の知り合いの中では一番まともな人間だと思う。その次にまともなのはティアンだろうか。ティアンは真面目だが、なんかルイス様以外の人間に対して冷たいところがある。俺が相談しても「僕には関係のない話ですね」ときっぱり言われて終わりだろう。
だからロニーに相談しているのだ。
けれどもロニーは、困ったように微笑むばかり。
「団長のことは、とりあえずいいとして」
「なにもよくないけど?」
強引に話を終わらせようとするロニーは、書類を置いて立ち上がった。
「えっと、ティアンさんはルイス様のところですか?」
「ティアンなら出かけたらしいけど。なんか友達と飯行くって。なに? ティアンに用事?」
「ティアンさん、友達いるんですか?」
なんかロニーが、さらっと失礼なことを言った。珍しくて思わずロニーの顔を凝視すると、ロニーが己の失言に気がついたらしい。慌てた様子で「あ、いえ。つい口が滑りました」と言って自分の口元を押さえる。
「いや、わかるよ。ティアンは友達とか興味なさそうな感じに見えるからな。王立騎士団の子だってさ」
俺のフォローに、ロニーがなんとも言えない表情になる。けれどもすぐに「あぁ、もしかしてあの時の」とひとりで頷いた。
「なに? 知り合い?」
「以前仕事で一緒に。ルイス様がカミール様の誕生日パーティーに行くと言ってお出かけになった際に一緒にいた人でしょうか?」
「いや俺は知らないけど」
そう言えばそんなこともあったな。ロニーいわく、その時にティアンの友達を名乗る人物がひとりいたらしい。
「ティアンさんは、ルイス様にべったりだと思っていたので」
「それはわかる。あいつルイス様にべったりしすぎだよな」
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「いや、俺は団長を心配して見守ってるだけだから」
「……」
「なんだよ、その目は」
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「なんにせよ、ティアンさんにちゃんと友達がいるのだと知って安心しました」
「まー、そうだな。で、問題は団長だよ」
「ですから。団長の件は私に言われてもわかりませんよ」
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