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17歳
897 意地悪
フランシスの居場所は、ハドリーが調べてくれるらしい。
「近くにいるといいね」
『ねー』
にこにこと応じる綿毛ちゃんは、『お出かけ楽しみだねぇ』とのんびり笑っている。
「綿毛ちゃんはお留守番だよ」
『えっ』
だってジェフリーもいるんだぞ。それにフランシスも。お喋りする変な犬なんて連れて行けるわけないだろう。
けれども綿毛ちゃんは、当然のように自分も同行できると思っていたらしい。ぽかんとした顔でしばらく固まっていたけど、やがて小さく震え始める。
『え、オレも行きたい』
「ダメだよ」
『そんなぁ』
震える綿毛ちゃんは、それきり黙り込んでしまった。背中を撫でていると、アロンが「ティアンは置いて行きましょうね」と唐突に言った。
「なんで?」
「だってティアンがいると邪魔ですよ。せっかく俺とルイス様がふたりきりになれる機会なのに」
「ふたりきりではないよ。ジェフリーも連れて行くから」
「は?」
急に真顔になったアロンは「それはダメですよ」と不機嫌になる。
「なんで?」
「いや普通に無理ですよ。誰が面倒見るんですか。あんな子供」
「ジェフリーはそんなに子供じゃないよ。それに俺が面倒見るから大丈夫だよ」
「なにも大丈夫じゃないですよ」
そうかな?
ジェフリーはそもそも自分のことは自分でできる子だ。
しかし、なぜか俺とふたりきりの旅行だと勘違いしているらしいアロンは舌打ちしてしまう。
「アロン。我儘言わないで」
「なんでこれが我儘なんですか。酷いですよ、ルイス様。俺をもてあそぶなんて」
いや、言い方。
もてあそんでなんていないけど?
我儘なアロンを半眼で眺めていると、ハドリーが「遠出なんて面倒じゃない?」と口を挟んでくる。
「面倒じゃない。楽しいよ。前に旅行した時もすごく楽しかった」
「あぁ、あれ。俺はあんまり楽しくなかったですね」
苦い声で応じるアロンに、俺は驚いてしまう。
「え!? 楽しくなかったの?」
「だってルイス様。ずっとティアンと一緒だったじゃないですか」
それは仕方ないだろ。
俺の護衛がティアンの仕事なんだから。
「俺もルイス様と一緒の部屋がいいです」
「えー?」
そんなこと言われても。
ティアンとアロンと俺。三人一部屋ってことだろうか。ティアンが嫌がると思う。それに、俺もちょっと嫌かな。
アロンと同じ部屋は楽しそうなんだけど。
俺には旅行でやりたいことがある。
ティアンと一緒に寝ることだ。
一回チャレンジしたけど、ティアンは手強い。目が覚めたら自分の部屋に戻されていた。俺はそれがすごく不満。
だが、前に宿に泊まった時にはティアンも一緒に寝てくれた。あの時は、護衛のこととか色々考えてああなったのだ。
ティアンは真面目なので、仕事となれば俺と一緒に寝てくれるかも。今回の旅行には、そんな下心もあるのだ。
そういうわけで、アロンと同室だと俺の目的が達成できない。そこまで考えた俺は「アロンはひとりで寝て」と突っぱねる。
これにアロンが片眉を上げた。
「……おい、ハドリー」
雑にハドリーを呼んだアロン。
「なんだよ」
「今の話だけど。やっぱり調べなくて」
「アロン!!」
やっぱり調べなくていいと言おうとしたアロンを急いで遮る。そういうのはずるいと思うぞ。卑怯だぞ。
「アロン、そういう意地悪しないで」
「意地悪……」
目を瞬くアロンの肩をペシペシ叩いてやる。俺の邪魔をするのは許さないから。
ハドリーを振り返って「ちゃんと調べてね!」と念押ししておく。「はいはい」と苦笑するハドリーは、疲れた顔で欠伸を噛み殺していた。
「近くにいるといいね」
『ねー』
にこにこと応じる綿毛ちゃんは、『お出かけ楽しみだねぇ』とのんびり笑っている。
「綿毛ちゃんはお留守番だよ」
『えっ』
だってジェフリーもいるんだぞ。それにフランシスも。お喋りする変な犬なんて連れて行けるわけないだろう。
けれども綿毛ちゃんは、当然のように自分も同行できると思っていたらしい。ぽかんとした顔でしばらく固まっていたけど、やがて小さく震え始める。
『え、オレも行きたい』
「ダメだよ」
『そんなぁ』
震える綿毛ちゃんは、それきり黙り込んでしまった。背中を撫でていると、アロンが「ティアンは置いて行きましょうね」と唐突に言った。
「なんで?」
「だってティアンがいると邪魔ですよ。せっかく俺とルイス様がふたりきりになれる機会なのに」
「ふたりきりではないよ。ジェフリーも連れて行くから」
「は?」
急に真顔になったアロンは「それはダメですよ」と不機嫌になる。
「なんで?」
「いや普通に無理ですよ。誰が面倒見るんですか。あんな子供」
「ジェフリーはそんなに子供じゃないよ。それに俺が面倒見るから大丈夫だよ」
「なにも大丈夫じゃないですよ」
そうかな?
ジェフリーはそもそも自分のことは自分でできる子だ。
しかし、なぜか俺とふたりきりの旅行だと勘違いしているらしいアロンは舌打ちしてしまう。
「アロン。我儘言わないで」
「なんでこれが我儘なんですか。酷いですよ、ルイス様。俺をもてあそぶなんて」
いや、言い方。
もてあそんでなんていないけど?
我儘なアロンを半眼で眺めていると、ハドリーが「遠出なんて面倒じゃない?」と口を挟んでくる。
「面倒じゃない。楽しいよ。前に旅行した時もすごく楽しかった」
「あぁ、あれ。俺はあんまり楽しくなかったですね」
苦い声で応じるアロンに、俺は驚いてしまう。
「え!? 楽しくなかったの?」
「だってルイス様。ずっとティアンと一緒だったじゃないですか」
それは仕方ないだろ。
俺の護衛がティアンの仕事なんだから。
「俺もルイス様と一緒の部屋がいいです」
「えー?」
そんなこと言われても。
ティアンとアロンと俺。三人一部屋ってことだろうか。ティアンが嫌がると思う。それに、俺もちょっと嫌かな。
アロンと同じ部屋は楽しそうなんだけど。
俺には旅行でやりたいことがある。
ティアンと一緒に寝ることだ。
一回チャレンジしたけど、ティアンは手強い。目が覚めたら自分の部屋に戻されていた。俺はそれがすごく不満。
だが、前に宿に泊まった時にはティアンも一緒に寝てくれた。あの時は、護衛のこととか色々考えてああなったのだ。
ティアンは真面目なので、仕事となれば俺と一緒に寝てくれるかも。今回の旅行には、そんな下心もあるのだ。
そういうわけで、アロンと同室だと俺の目的が達成できない。そこまで考えた俺は「アロンはひとりで寝て」と突っぱねる。
これにアロンが片眉を上げた。
「……おい、ハドリー」
雑にハドリーを呼んだアロン。
「なんだよ」
「今の話だけど。やっぱり調べなくて」
「アロン!!」
やっぱり調べなくていいと言おうとしたアロンを急いで遮る。そういうのはずるいと思うぞ。卑怯だぞ。
「アロン、そういう意地悪しないで」
「意地悪……」
目を瞬くアロンの肩をペシペシ叩いてやる。俺の邪魔をするのは許さないから。
ハドリーを振り返って「ちゃんと調べてね!」と念押ししておく。「はいはい」と苦笑するハドリーは、疲れた顔で欠伸を噛み殺していた。
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