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17歳
900 ほんとだね
ほらもう寝ますよと俺を急かすティアンは、ちょっと焦りすぎだと思う。まだお茶飲んでないけど?
ヤカンを指さすと、ティアンも動きを止める。そうして咳払いで全部誤魔化そうとするティアンは、無言でティーカップを用意し始める。その様子を綿毛ちゃんと一緒になってニヤニヤと見守る。
「これ飲んだら寝てくださいよ」
「うん」
差し出されたティーカップを受け取って、口をつける。
「おいしい」
「そうですか。よかったです」
「ここ座って」
隣の椅子を示すと、ティアンがちょっとだけためらう。ティアンがこういう時に遠慮するのは、もはやいつもの流れである。一体なにを遠慮する必要があるのか。もう仕事も終わっている時間である。ちょっとくらい相手をしてくれてもいいだろう。
「ねー、ティアン。座って」
「……夜更かしはダメですよ」
なぜか文句を言いながら座ってくれたティアンに、俺は満面の笑みを浮かべる。綿毛ちゃんのニヤッとした視線を感じるけど、今は毛玉に構っている暇はないのだ。
「……」
「ちょっとルイス様」
距離を感じたので、椅子を近付ける。
なぜか制止に入ってくるティアンは、真面目すぎ。恋人同士なんだから、これくらいよくない?
「冷めますよ」
「うん。飲むよ」
せっかくティアンが用意してくれたお茶である。温かいうちに飲んでしまう。
その間、ティアンを逃さないようにと片手でティアンの袖を掴んでおく。固まるティアンは、ちょっと居心地悪そうだけど。
「……ねー、ティアン」
「なんですか?」
「ちょっとキスして」
「っ、はぁ!?」
急に大声を出すティアンは、すぐに「ダメですよ」と続ける。なんでダメなのか理由を説明してほしい。
「キスしてー」
「なに言ってるんですか。こんな時間に」
こんな時間ってなに?
ティアンは何時に訊いても、どうせダメって言うだろ。むしろ何時ならいいんだ。
足元で綿毛ちゃんが『ティアンさん。がんばれぇ』と応援している。いいぞ、綿毛ちゃん。綿毛ちゃんは俺の味方だ。そのままティアンの背中を押すんだ。
ティーカップを置いて、ティアンに向き直る。ティアンの膝に手を置いて、「いいでしょー?」とお願いしてみる。
「いや、ダメですよ」
「なんでぇ」
「眠れなくなるので」
「どういうこと?」
ティアンは真顔でこういうことを言うので、冗談だとわかりにくい。え、冗談だよね??
じっとティアンの顔を見つめる。
こちらを見据えるティアンは、眉間に皺が寄っている。恋人を前にして、どうしてそんな険しい顔をするんだよ。もうちょい肩の力を抜くべきだ。
「ティアン」
「ダメです」
「じゃあ一緒に寝よ」
「それもダメです」
「ダメばっかりじゃん。嫌だ。どっちか選んで」
あれもダメ、これもダメ。
ちょっと我儘だぞ。
「キスして。それか一緒に寝て」
「一緒に寝るのはダメなんですって」
「なんでなの?」
がんばれーと小声で応援してくる綿毛ちゃんに頷いて、俺は一歩も引き下がらない決意をした。
「キスしてくれないとやだ。眠れないもん」
「……」
上目遣いでティアンを見る。
まだ髪がしっとりしているティアンの頬にそっと手を伸ばしてみる。
うーん。なんかいける気がする。
えいっとティアンに顔を近付ける。けれども唇を合わせる前に、ティアンが手のひらを俺の口に押し付けてきた。
「……」
これはひどい。ティアンを睨むと、ふいっと顔を背けた彼が俺の口から手を離す。
「もう。なんでダメなの」
ひどいと顔をしかめていると、こちらに顔を戻したティアンがグッと近付いてきた。そのまま唇を奪われて、目を見開く。
「……うわぁ」
ティアンにキスされちゃった。
さっと元の距離に戻ったティアンが、自分の前髪を払ってから「はい、もう寝ましょうね」と言う。ちょっぴり早口の彼は、確実に照れている。
「……キスされちゃった」
赤くなった頬を両手で包んで、俺はへへっと笑う。
えー、どうしよ。キスされちゃった。
ニマニマが止まらない。ほんとどうしよう。これじゃ眠れそうにないや。
なんか一気に目が覚めた気がする。
「ティアン、眠れなくなっちゃったかも。どうしてくれるんだ」
責任取れとティアンの膝をペシペシ叩いてやる。
「だから眠れなくなるって言ったじゃないですか」
呆れを含んだ、けれども照れたように言うティアン。
ほんとだね。冗談じゃなかった。
もう眠れなくなっちゃった。どうすればいいんだろうか、これ。
困った俺は、ティアンと静かに顔を見合わせる。
「もう少しだけ、お喋りでもしますか?」
今日だけですよと夜更かしを許してくれるティアンに小さく頷いて、俺は幸せでニマニマしちゃう頬をひたすら押さえていた。
ヤカンを指さすと、ティアンも動きを止める。そうして咳払いで全部誤魔化そうとするティアンは、無言でティーカップを用意し始める。その様子を綿毛ちゃんと一緒になってニヤニヤと見守る。
「これ飲んだら寝てくださいよ」
「うん」
差し出されたティーカップを受け取って、口をつける。
「おいしい」
「そうですか。よかったです」
「ここ座って」
隣の椅子を示すと、ティアンがちょっとだけためらう。ティアンがこういう時に遠慮するのは、もはやいつもの流れである。一体なにを遠慮する必要があるのか。もう仕事も終わっている時間である。ちょっとくらい相手をしてくれてもいいだろう。
「ねー、ティアン。座って」
「……夜更かしはダメですよ」
なぜか文句を言いながら座ってくれたティアンに、俺は満面の笑みを浮かべる。綿毛ちゃんのニヤッとした視線を感じるけど、今は毛玉に構っている暇はないのだ。
「……」
「ちょっとルイス様」
距離を感じたので、椅子を近付ける。
なぜか制止に入ってくるティアンは、真面目すぎ。恋人同士なんだから、これくらいよくない?
「冷めますよ」
「うん。飲むよ」
せっかくティアンが用意してくれたお茶である。温かいうちに飲んでしまう。
その間、ティアンを逃さないようにと片手でティアンの袖を掴んでおく。固まるティアンは、ちょっと居心地悪そうだけど。
「……ねー、ティアン」
「なんですか?」
「ちょっとキスして」
「っ、はぁ!?」
急に大声を出すティアンは、すぐに「ダメですよ」と続ける。なんでダメなのか理由を説明してほしい。
「キスしてー」
「なに言ってるんですか。こんな時間に」
こんな時間ってなに?
ティアンは何時に訊いても、どうせダメって言うだろ。むしろ何時ならいいんだ。
足元で綿毛ちゃんが『ティアンさん。がんばれぇ』と応援している。いいぞ、綿毛ちゃん。綿毛ちゃんは俺の味方だ。そのままティアンの背中を押すんだ。
ティーカップを置いて、ティアンに向き直る。ティアンの膝に手を置いて、「いいでしょー?」とお願いしてみる。
「いや、ダメですよ」
「なんでぇ」
「眠れなくなるので」
「どういうこと?」
ティアンは真顔でこういうことを言うので、冗談だとわかりにくい。え、冗談だよね??
じっとティアンの顔を見つめる。
こちらを見据えるティアンは、眉間に皺が寄っている。恋人を前にして、どうしてそんな険しい顔をするんだよ。もうちょい肩の力を抜くべきだ。
「ティアン」
「ダメです」
「じゃあ一緒に寝よ」
「それもダメです」
「ダメばっかりじゃん。嫌だ。どっちか選んで」
あれもダメ、これもダメ。
ちょっと我儘だぞ。
「キスして。それか一緒に寝て」
「一緒に寝るのはダメなんですって」
「なんでなの?」
がんばれーと小声で応援してくる綿毛ちゃんに頷いて、俺は一歩も引き下がらない決意をした。
「キスしてくれないとやだ。眠れないもん」
「……」
上目遣いでティアンを見る。
まだ髪がしっとりしているティアンの頬にそっと手を伸ばしてみる。
うーん。なんかいける気がする。
えいっとティアンに顔を近付ける。けれども唇を合わせる前に、ティアンが手のひらを俺の口に押し付けてきた。
「……」
これはひどい。ティアンを睨むと、ふいっと顔を背けた彼が俺の口から手を離す。
「もう。なんでダメなの」
ひどいと顔をしかめていると、こちらに顔を戻したティアンがグッと近付いてきた。そのまま唇を奪われて、目を見開く。
「……うわぁ」
ティアンにキスされちゃった。
さっと元の距離に戻ったティアンが、自分の前髪を払ってから「はい、もう寝ましょうね」と言う。ちょっぴり早口の彼は、確実に照れている。
「……キスされちゃった」
赤くなった頬を両手で包んで、俺はへへっと笑う。
えー、どうしよ。キスされちゃった。
ニマニマが止まらない。ほんとどうしよう。これじゃ眠れそうにないや。
なんか一気に目が覚めた気がする。
「ティアン、眠れなくなっちゃったかも。どうしてくれるんだ」
責任取れとティアンの膝をペシペシ叩いてやる。
「だから眠れなくなるって言ったじゃないですか」
呆れを含んだ、けれども照れたように言うティアン。
ほんとだね。冗談じゃなかった。
もう眠れなくなっちゃった。どうすればいいんだろうか、これ。
困った俺は、ティアンと静かに顔を見合わせる。
「もう少しだけ、お喋りでもしますか?」
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