嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

903 俺!

「俺、ちょっとお出かけしてくるね」
「どこに?」

 眉を寄せるブルース兄様は「街に行きたいならティアンも連れて行けよ」と一方的に話を終わらせてしまう。勝手に行き先を決めるんじゃない。

「旅行に行ってくるね」
「……あ?」

 簡潔に告げると、兄様の仕事の手が止まった。
 目を見開いて、まじまじと俺を見つめてくる兄様。

「待て。なんだ旅行って。どうして急にそんな話が出てくる」
「いいじゃん。ティアンも連れて行くから」
「いいわけないだろう。旅行ってなんだ。どこまで行くつもりだ。護衛がティアンだけで足りるわけがないだろ」
「ユリスとタイラーも行くよ。アロンも行くって。あとジェフリーも連れて行くから、アーキア公爵家も護衛とかいろいろ手配してくれるってさ」
「待て。なんでそんなに話が進んでいるんだ。聞いてないぞ」

 怖い顔になるブルース兄様は、執務机から立ち上がってこちらに回り込んでくる。

「一体いつの間に話がそこまで進んだ。誰がアーキア公爵家と話をつけたんだ」
「俺!」
「……」

 ドヤ顔で手をあげたところ、ブルース兄様が盛大に顔をしかめた。

 そうして何事かを考えるように少し黙った兄様は、やがて「何かの間違いじゃないのか?」と失礼なことを口走る。

「間違いじゃないよ。ちゃんとジェフリーとデニスと話し合ったもん」
「その話し合いはちゃんと意味のあるものだったのか? 遊びじゃなくて?」
「どういう意味? ちゃんと計画立てたもん」

 なぜか俺のことを疑うブルース兄様は、眉間に皺を寄せている。

「とりあえず俺からもアーキア公爵家に確認してみる。話はそれからだ」
「なんで信じてくれないの!」

 普通に失礼だぞ。

 ハドリーが無事にフランシスの居場所を突き止めてくれたのだ。なんでも現在は国境近くの割と大きな街に滞在しているらしい。あと数日はその街にいて、それから屋敷に帰るらしい。

 国境からフランシスの屋敷までは、結構長い道のり。しかし通るであろうルートは決まっているのだとか。というわけで、俺はフランシスが辿ってくるであろう帰り道をずっと旅することにした。そうすれば、どこかでフランシスと鉢合わせできる。

 デニスに相談したところ、ジェフリーも連れて行っていいと言ってくれた。アーキア公爵にもちゃんと話を通してある。公爵は、俺とジェフリーが仲良くしていることを喜んでいるらしい。一緒に旅行したいと伝えたところ、馬車や護衛など必要なものは公爵家で用意してくれると宣言してくれた。旅の途中でも、公爵家の伝手で宿を用意してくれるらしい。

 そういった話をブルース兄様にも説明するのだが、兄様はいまいち信じてくれない。自分でも公爵家に確認しないと気が済まないらしい。なんて失礼な兄なんだ。もう少し俺を信用してほしい。

「デニスは行かないんだって。ユリスが行くから本当は行きたいらしいけど。なんか忙しいんだって」
「だろうな。あれでも公爵家の跡継ぎだからな」
「ふーん?」

 まぁ、確かにオーガス兄様も忙しそうにしている。デニスもデニスで、やるべきことがたくさんあるのだろう。

「それにしても急だな」
「ごめんね。俺ね、どうしても旅行したくて」
「いや、まぁそうだな。屋敷にこもっていても仕方がないからな」
「うん」

 一応の理解を示してくれる兄様は、行き先を詳しく教えろと言ってくる。特に目的地があるわけではないのだが、国境に向けてずっと進んでいくつもりだ。

「……俺も行くか」
「えっ!?」

 眉間を揉んだブルース兄様が、そんなことを言った。忙しい兄様である。同行する可能性なんて考えてもいなかったので、びっくりしてしまう。

 目を見開く俺に、ブルース兄様は「いや、ちょうどそっち方面に用があったんだ」とため息を吐いた。

「どうせ近々行く予定だったんだ。だったらおまえたちと一緒に行った方が色々と都合がいいだろう」
「ほーん」

 ブルース兄様は、時折遠出をしている。オーガス兄様と違って、フットワークの軽いブルース兄様である。王立騎士団の人手が足りない時など、エリックに頼まれて国境近くまで赴くことも多い。

 兄様がいれば、旅行も安心安全なものになるのでは?

 なんだか急に楽しくなってきた俺は、笑顔になる。

「え、いいよ! 一緒に行こうね!」
「いや、まずは公爵家に確認してから」
「だからもう話はまとまってるの! 俺がちゃんとやったもん」

 公爵にも、ジェフリーのことを頼むと言われているのだ。
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