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17歳
974 それですよ
「……でもさぁ、この間ベネットに嫉妬してなかった?」
ふと思い出して隣にいたティアンに問いかけると、彼はベッドに寝転んだまま「それは」と言葉を選ぶように視線を彷徨わせた。
「ベネットさんは、大人じゃないですか。向こうがルイス様に興味ないことは知っていますけど」
「そんなことない。ベネットは俺に興味あるよ。友達だもん」
「そう思っているのはルイス様だけですよ」
なんだと。
ベネットはフランシスの従者である。すごく大人で紳士的な人。あと黒髪を結んでいるので、そこも好き。ティアンの失礼な物言いに頬を膨らませるが、恋愛的な意味でベネットが俺を相手にしないのは事実だろう。
ベネットの姿を思い出してふふっと笑えば、ティアンが突然「それですよ」と苦い声で言った。
「それ? なにが?」
意味がわからなくて首を捻ると、ティアンが俺を横目で見た。
「ルイス様、ベネットさんのこと好きって気軽に言うじゃないですか」
「……あー、うん?」
好きだよ。俺、ベネットのことは好き。
でもそれはティアンに対する好きとは少し違う。
「ロニーが好きなのと一緒の感じの好きだよ」
「それは理解しているんですけど」
眉をひそめるティアンは、要するに俺がベネットとロニーを好きと言うのが気に入らないらしい。
「ジェフリーはいいのに?」
俺がジェフリーのこと好きと言っても、ティアンは嫉妬しないらしい。この違いはどこにあるのだろうかと考える。
「……ルイス様は、ジェフリー様のことをそういう意味で好きになることはないと思っています」
「そーだね」
それはそうだ。だって俺にとってのジェフリーは弟なんだもん。恋人って感じではない。
なるほどね。
ティアンは、俺がベネットやロニーのことを好きになる可能性があると思っているのか。まぁ俺はロニーに告白したことがあるからね。ティアンの心配も杞憂とは言えないのかもしれない。でも今更ロニーやベネットに告白したりしないのに。だって俺にはティアンがいるもんね。
「ルイス様は、ルイス様ご自身が思っているよりもずっと魅力的ですよ」
「うわぁ」
「なんですか、その反応」
えー、だって。
ティアンが俺をすごく甘い目で見つめてくる。
隣同士で寝転んで、そんな甘い目で、甘い声で囁かないでほしい。なんかむずむずしてくる。
俺の反応が気に入らなかったティアンは、顔をしかめた。俺から言わせれば、ティアンの方がずっと魅力的だ。
だって成長したティアンはすっかり大人になってしまった。物腰も柔らかいし、頼りになるし、イケメンだし。
けれどもティアンの自己評価はそう高くないようだ。
「僕は見ての通り、なんの取り柄もない平凡な人間なので」
「それってなんか嫌味っぽく聞こえるよ」
「どこがですか」
全部が。
ティアンのどこが平凡なんだ。意味わかんないと笑ってやれば、ティアンが「笑うところじゃないんですよ」と文句を言ってきた。いいや、今のは笑うところだったね。
「とにかく。僕よりも魅力的な人間なんてたくさんいると思うんですよ」
「そう?」
「そうです。でもルイス様以上に魅力的な人間なんていないと思うんです」
「えー? そうかなぁ?」
照れちゃうねぇ。
今の俺、なんだかすごく褒められている。にこにこしていると、ティアンが「だから僕は怖いんです」と素っ気なく言った。
「なにが怖いの?」
「だから、その」
ちらりと横目で俺を確認するティアンは、「いつ捨てられるのかと思うと、怖いんですよ」と淡々と言った。
なんだって?
俺がティアンを捨てるわけないだろ。
びっくりして体を起こした俺は、ベッドに寝転んだままのティアンの顔を上から覗き込む。
「ばーか」
ペシッとティアンの頬を叩いておく。眉をひそめるだけでたいしたリアクションをしないティアンは、俺を見上げていた。
「馬鹿とはなんですか」
「うるさい。ティアンのばーか! ブルース兄様に言ってやる」
「なにを? 変なこと吹き込まないでくださいよ」
「ばーか!」
「痛っ」
ティアンの頭を思い切り叩けば、ティアンが不満な顔になった。
いそいそと移動した俺は、寝転ぶティアンの上に跨った。ティアンの腰のあたりに座って、ティアンの顔を見下ろす。
「ティアンは俺のことなんだと思ってるの? 俺はそんな酷い人間じゃないもん」
「それは」
何事かを言いかけたティアンであるが、ふと我に返ったようで「ちょっと!」と声を荒げた。
「なんですか、この体勢。降りてください!」
「いーやー」
俺の肩を掴んで横に押し倒してきたティアンは、そのまま体を起こしてしまう。
「ほら! 部屋に戻る!」
「嫌だ。今日はここで寝るもん」
「じゃあ僕は向こうのソファで寝ます」
「意味ない!」
俺の抵抗をものともせずに、ティアンは俺をベッドから追い出してしまう。寝室からも追い出されそうになったので抵抗するが、ティアンには敵わない。
「ケチ! ティアンのケチ!」
「だから僕の気遣いをケチという言葉で片付けないでください」
結局、俺はティアンの寝室から追い出されてひとりで寝る羽目になった。
ふと思い出して隣にいたティアンに問いかけると、彼はベッドに寝転んだまま「それは」と言葉を選ぶように視線を彷徨わせた。
「ベネットさんは、大人じゃないですか。向こうがルイス様に興味ないことは知っていますけど」
「そんなことない。ベネットは俺に興味あるよ。友達だもん」
「そう思っているのはルイス様だけですよ」
なんだと。
ベネットはフランシスの従者である。すごく大人で紳士的な人。あと黒髪を結んでいるので、そこも好き。ティアンの失礼な物言いに頬を膨らませるが、恋愛的な意味でベネットが俺を相手にしないのは事実だろう。
ベネットの姿を思い出してふふっと笑えば、ティアンが突然「それですよ」と苦い声で言った。
「それ? なにが?」
意味がわからなくて首を捻ると、ティアンが俺を横目で見た。
「ルイス様、ベネットさんのこと好きって気軽に言うじゃないですか」
「……あー、うん?」
好きだよ。俺、ベネットのことは好き。
でもそれはティアンに対する好きとは少し違う。
「ロニーが好きなのと一緒の感じの好きだよ」
「それは理解しているんですけど」
眉をひそめるティアンは、要するに俺がベネットとロニーを好きと言うのが気に入らないらしい。
「ジェフリーはいいのに?」
俺がジェフリーのこと好きと言っても、ティアンは嫉妬しないらしい。この違いはどこにあるのだろうかと考える。
「……ルイス様は、ジェフリー様のことをそういう意味で好きになることはないと思っています」
「そーだね」
それはそうだ。だって俺にとってのジェフリーは弟なんだもん。恋人って感じではない。
なるほどね。
ティアンは、俺がベネットやロニーのことを好きになる可能性があると思っているのか。まぁ俺はロニーに告白したことがあるからね。ティアンの心配も杞憂とは言えないのかもしれない。でも今更ロニーやベネットに告白したりしないのに。だって俺にはティアンがいるもんね。
「ルイス様は、ルイス様ご自身が思っているよりもずっと魅力的ですよ」
「うわぁ」
「なんですか、その反応」
えー、だって。
ティアンが俺をすごく甘い目で見つめてくる。
隣同士で寝転んで、そんな甘い目で、甘い声で囁かないでほしい。なんかむずむずしてくる。
俺の反応が気に入らなかったティアンは、顔をしかめた。俺から言わせれば、ティアンの方がずっと魅力的だ。
だって成長したティアンはすっかり大人になってしまった。物腰も柔らかいし、頼りになるし、イケメンだし。
けれどもティアンの自己評価はそう高くないようだ。
「僕は見ての通り、なんの取り柄もない平凡な人間なので」
「それってなんか嫌味っぽく聞こえるよ」
「どこがですか」
全部が。
ティアンのどこが平凡なんだ。意味わかんないと笑ってやれば、ティアンが「笑うところじゃないんですよ」と文句を言ってきた。いいや、今のは笑うところだったね。
「とにかく。僕よりも魅力的な人間なんてたくさんいると思うんですよ」
「そう?」
「そうです。でもルイス様以上に魅力的な人間なんていないと思うんです」
「えー? そうかなぁ?」
照れちゃうねぇ。
今の俺、なんだかすごく褒められている。にこにこしていると、ティアンが「だから僕は怖いんです」と素っ気なく言った。
「なにが怖いの?」
「だから、その」
ちらりと横目で俺を確認するティアンは、「いつ捨てられるのかと思うと、怖いんですよ」と淡々と言った。
なんだって?
俺がティアンを捨てるわけないだろ。
びっくりして体を起こした俺は、ベッドに寝転んだままのティアンの顔を上から覗き込む。
「ばーか」
ペシッとティアンの頬を叩いておく。眉をひそめるだけでたいしたリアクションをしないティアンは、俺を見上げていた。
「馬鹿とはなんですか」
「うるさい。ティアンのばーか! ブルース兄様に言ってやる」
「なにを? 変なこと吹き込まないでくださいよ」
「ばーか!」
「痛っ」
ティアンの頭を思い切り叩けば、ティアンが不満な顔になった。
いそいそと移動した俺は、寝転ぶティアンの上に跨った。ティアンの腰のあたりに座って、ティアンの顔を見下ろす。
「ティアンは俺のことなんだと思ってるの? 俺はそんな酷い人間じゃないもん」
「それは」
何事かを言いかけたティアンであるが、ふと我に返ったようで「ちょっと!」と声を荒げた。
「なんですか、この体勢。降りてください!」
「いーやー」
俺の肩を掴んで横に押し倒してきたティアンは、そのまま体を起こしてしまう。
「ほら! 部屋に戻る!」
「嫌だ。今日はここで寝るもん」
「じゃあ僕は向こうのソファで寝ます」
「意味ない!」
俺の抵抗をものともせずに、ティアンは俺をベッドから追い出してしまう。寝室からも追い出されそうになったので抵抗するが、ティアンには敵わない。
「ケチ! ティアンのケチ!」
「だから僕の気遣いをケチという言葉で片付けないでください」
結局、俺はティアンの寝室から追い出されてひとりで寝る羽目になった。
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