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133 伝言
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本日はいよいよお出かけである。とりあえず朝起きてすぐにオーガス兄様の部屋に向かった俺は、眠そうなオーガス兄様を前にペンを握っていた。
「エリックになにか言うことある? 伝言する」
「え? いや別に」
くわっと欠伸したオーガス兄様は、「僕あんまりエリックとは仲良くないし」と遠い目をする。
「エリックのこと嫌いなの?」
「あのテンションがさ。ついていけないよね。あと無駄に声大きいし」
「ほうほう」
確かにエリックとオーガス兄様は正反対な感じだもんな。遠慮のないエリックに対して、オーガス兄様はいつも気弱だから。うんうん頷きながら俺はペンを走らせる。
「正直あんまり会いたい相手ではないよね」
「あいたく、ない」
「ん?」
必死にメモを取っていると、俺の手元を覗き込んだオーガス兄様が目を見開く。
「ちょっと待って⁉︎ なに書いてんの?」
「伝言メモ」
「やめて⁉︎」
あわあわしたオーガス兄様が俺の伝言メモを奪おうとしてくる。なにするんだ、こいつ。
「大丈夫。ちゃんと伝言するから」
「伝言されたら困るんだけど⁉︎」
急に大声を発し始めたオーガス兄様はようやく頭が冴えてきたらしい。先程までの兄様は寝ぼけていそうな感じだったもんな。
「じゃあ俺もう行くから」
「ちょ、待って」
「行ってきまーす」
「待って⁉︎」
そろそろ準備もあるから待てない。我儘を言うオーガス兄様を振り切って、俺は急いで自室に戻る。なにやら兄様が「それ伝えないでね⁉︎ いやマジで⁉︎」と騒いでいる。朝っぱらからうるさい人だな。
「おはようございます」
「……なんでティアンがいるの?」
部屋に戻った俺を待ち構えていたティアンは、いつものお飾りバッグを肩にかけている。まさかこいつも同行するつもりか。お誘いした覚えはないぞ。
「ティアンは留守番ね」
「行きますけど?」
勝手に決めるな。だが浮かれているらしいティアンは聞く耳持たない。「手土産は持ちましたか?」とうきうきでお出かけ準備をしている。
「言っておくけど。そのお菓子はマーティーにあげるやつだから。ティアンは食べたらダメだからね」
「食べませんよ。ユリス様じゃないんですから」
すんっと真顔になったティアンがわかったような口を利く。本当にわかっているのかは怪しいな。俺がちゃんとお土産お菓子を見張っておかないと。
どうやら様子を見る限り、ティアンとジャン。それにタイラーが同行するみたいだ。王宮はわりと近いし、身内だから少人数で行くらしい。フランシスの屋敷はちょっと遠かったからな。それに比べたら今回の移動は楽だ。
タイラーとジャンは馬車や荷物の準備をするため外に出ている。部屋にはティアンと黒猫ユリスしかいない。
うきうきで忘れ物確認をする浮かれティアンは、幸いにも俺を見ていない。やるなら今だ。
ジャンに用意してもらった大きめバッグを開いた俺は、床に落ちていた黒猫ユリスを抱えた。
『なんだ』
「一緒に行くんでしょ? 大人しくしててね」
『は?』
怪訝そうに周囲を見渡した黒猫ユリスは、俺が広げたバッグを見て『まさか』と絶句する。ちょうどよく固まった黒猫ユリスをそのままバッグに押し込んでやれば『おい馬鹿! 僕を殺す気か!』と強めの抗議が上がった。
「大丈夫。馬車の中で出してあげる」
『信用できない』
ぐちぐち言う黒猫ユリスをなんとかバッグに押し込める。どうしても同行したいらしい黒猫ユリスは最終的には折れてくれた。心配せずともバッグは密閉じゃないし、馬車を走らせてしばらくしたら出してあげるつもりだ。タイラーに見つかったらうるさそうだからそれまでの辛抱だ。
「準備できましたか?」
「うん、ばっちり」
バッグを抱えてティアンに駆け寄れば「なんですか、その大荷物」と不思議そうにしている。
「マーティーにお土産」
「そうなんですか?」
うんうん頷いてバッグをぎゅっと抱え込む。なにやら小声で『なんでこんなことを』と文句が聞こえてくる。頼むからもうちょっとだけ我慢してくれ。
「エリックになにか言うことある? 伝言する」
「え? いや別に」
くわっと欠伸したオーガス兄様は、「僕あんまりエリックとは仲良くないし」と遠い目をする。
「エリックのこと嫌いなの?」
「あのテンションがさ。ついていけないよね。あと無駄に声大きいし」
「ほうほう」
確かにエリックとオーガス兄様は正反対な感じだもんな。遠慮のないエリックに対して、オーガス兄様はいつも気弱だから。うんうん頷きながら俺はペンを走らせる。
「正直あんまり会いたい相手ではないよね」
「あいたく、ない」
「ん?」
必死にメモを取っていると、俺の手元を覗き込んだオーガス兄様が目を見開く。
「ちょっと待って⁉︎ なに書いてんの?」
「伝言メモ」
「やめて⁉︎」
あわあわしたオーガス兄様が俺の伝言メモを奪おうとしてくる。なにするんだ、こいつ。
「大丈夫。ちゃんと伝言するから」
「伝言されたら困るんだけど⁉︎」
急に大声を発し始めたオーガス兄様はようやく頭が冴えてきたらしい。先程までの兄様は寝ぼけていそうな感じだったもんな。
「じゃあ俺もう行くから」
「ちょ、待って」
「行ってきまーす」
「待って⁉︎」
そろそろ準備もあるから待てない。我儘を言うオーガス兄様を振り切って、俺は急いで自室に戻る。なにやら兄様が「それ伝えないでね⁉︎ いやマジで⁉︎」と騒いでいる。朝っぱらからうるさい人だな。
「おはようございます」
「……なんでティアンがいるの?」
部屋に戻った俺を待ち構えていたティアンは、いつものお飾りバッグを肩にかけている。まさかこいつも同行するつもりか。お誘いした覚えはないぞ。
「ティアンは留守番ね」
「行きますけど?」
勝手に決めるな。だが浮かれているらしいティアンは聞く耳持たない。「手土産は持ちましたか?」とうきうきでお出かけ準備をしている。
「言っておくけど。そのお菓子はマーティーにあげるやつだから。ティアンは食べたらダメだからね」
「食べませんよ。ユリス様じゃないんですから」
すんっと真顔になったティアンがわかったような口を利く。本当にわかっているのかは怪しいな。俺がちゃんとお土産お菓子を見張っておかないと。
どうやら様子を見る限り、ティアンとジャン。それにタイラーが同行するみたいだ。王宮はわりと近いし、身内だから少人数で行くらしい。フランシスの屋敷はちょっと遠かったからな。それに比べたら今回の移動は楽だ。
タイラーとジャンは馬車や荷物の準備をするため外に出ている。部屋にはティアンと黒猫ユリスしかいない。
うきうきで忘れ物確認をする浮かれティアンは、幸いにも俺を見ていない。やるなら今だ。
ジャンに用意してもらった大きめバッグを開いた俺は、床に落ちていた黒猫ユリスを抱えた。
『なんだ』
「一緒に行くんでしょ? 大人しくしててね」
『は?』
怪訝そうに周囲を見渡した黒猫ユリスは、俺が広げたバッグを見て『まさか』と絶句する。ちょうどよく固まった黒猫ユリスをそのままバッグに押し込んでやれば『おい馬鹿! 僕を殺す気か!』と強めの抗議が上がった。
「大丈夫。馬車の中で出してあげる」
『信用できない』
ぐちぐち言う黒猫ユリスをなんとかバッグに押し込める。どうしても同行したいらしい黒猫ユリスは最終的には折れてくれた。心配せずともバッグは密閉じゃないし、馬車を走らせてしばらくしたら出してあげるつもりだ。タイラーに見つかったらうるさそうだからそれまでの辛抱だ。
「準備できましたか?」
「うん、ばっちり」
バッグを抱えてティアンに駆け寄れば「なんですか、その大荷物」と不思議そうにしている。
「マーティーにお土産」
「そうなんですか?」
うんうん頷いてバッグをぎゅっと抱え込む。なにやら小声で『なんでこんなことを』と文句が聞こえてくる。頼むからもうちょっとだけ我慢してくれ。
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