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11歳
254 猫のお世話
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長旅の準備は大変だったらしい。主にブルース兄様が準備したので、俺はよくわからないが。「なんで俺が」と、兄様が不機嫌そうにぶつぶつ言っていた。
手伝おうと思ったのだが、なぜか丁重にお断りされてしまった。忙しそうなのに、なぜ。ひとりで準備するよりも、ふたりで準備した方が絶対にはやい。
「おまえに任せると、二度手間になる」
「二度手間……?」
そんなことを言って、手伝わせてくれなかった。
ユリスはなんにも気にせず、のんびりしていた。手伝おうという気は初めから持ち合わせていないようであった。
代わりに、タイラーが忙しく走りまわっていた。
「猫のこと、よろしくね」
「あ、僕が? そこはブルースに任せないんだ」
「ブルース兄様は顔が怖いから。猫がビビってしまう」
「あ、あぁ。なるほど?」
なるほどと口にしながら、しきりに首を捻るオーガス兄様は、本心ではよく理解していないようであった。猫は繊細なんだぞ。不機嫌顔のブルース兄様がご飯をあげても、警戒して食べないかもしれない。その点、オーガス兄様は見るからに弱そうだから少しは安心である。猫もあんまりビビらないかもしれない。
「名前はエリスちゃん。エリスちゃんって呼べば、おやつをもらいに寄ってくるよ」
「にゃー」
エリスちゃんという言葉に反応した白猫が、おやつの時間と勘違いして盛大に鳴いている。「こんなふうに、すごく鳴く」と説明すれば、オーガス兄様は「はぁ、そうなんだ」と気の抜けた返事をする。
ちゃんとわかっているのかな?
すごく心配である。やっぱりブルース兄様にお願いしようかな。迷っていると、オーガス兄様は「任せてよ。ニックがなんとかするよ」と、はやくも人任せ発言をしている。名前のあがったニックが、露骨に嫌そうな顔をする。
「……やっぱり、ブルース兄様に頼むからいい」
白猫をぎゅっと抱っこして、ふるふると首を左右に振れば、オーガス兄様が「え?」と驚きに目を丸くする。
「なんで? いいよ、僕が世話しておくよ」
「いい。大丈夫。遠慮する」
「なんでそんな急に」
言葉を失うオーガス兄様は、ニックと顔を見合わせている。けれども、そこまでの情熱はないらしく、あっさりと「そう? ならいいけど」と猫のお世話係を諦めてしまう。
ということで、猫のお世話はブルース兄様にお任せすることにした。
「よろしくお願いします」
猫を抱えてぺこりと頭を下げれば、ブルース兄様が天を仰ぐ。「なんで俺が」という苦い呟きが聞こえてきたような気もする。
「オーガス兄様はダメだった。ちゃんとお世話できるか怪しい」
低く唸ったブルース兄様も、同じ考えに至ったらしい。それ以上の反論はしてこなかった。
「名前はエリスちゃん。でもエリスって言うとおやつもらえると勘違いしてすごく鳴くから注意してね」
「にゃー」
再び盛大に鳴き始めた白猫をそっと見下ろして、次にブルース兄様を見上げる。
「ほら。こんなふうに」
「なんで呼んでみせたんだ」
鳴きまくる猫を持て余していると、兄様が文句を言ってくる。だって説明に必要だったんだから、仕方がないだろ。
「今はおやつの時間じゃないから、我慢しろ」
「にゃー」
根気強く言い聞かせるが、猫は理解してくれない。おやつはどこだと鳴いている。困ったな。
「ペットは飼い主に似るというのは、本当だな」
「どういう意味?」
しみじみ呟くブルース兄様を問いただせば、兄様はぎゅっと眉間に皺を寄せる。
「どうって。意地汚いところがそっくりじゃないか」
「俺はこんなんじゃない。大人だもん」
「どこがだ。毎日おやつ寄越せとうるさいだろ」
それはユリスも一緒である。俺はおやつ欲しいと主張するだけマシというものだ。対して、ユリスはおやつになんて興味のないフリを貫いている。しかし、いざおやつの時間になれば、すごく真剣におやつと向き合っている。俺が横から手を伸ばせば、すごい形相で睨み付けてくるのだ。
白猫を抱える腕に、力を込める。放っておけば、そのうち諦めるだろう。にゃあにゃあ言っている猫を抱えたまま、俺は自分の荷物を用意すべく、急いで自室へと駆け戻った。
手伝おうと思ったのだが、なぜか丁重にお断りされてしまった。忙しそうなのに、なぜ。ひとりで準備するよりも、ふたりで準備した方が絶対にはやい。
「おまえに任せると、二度手間になる」
「二度手間……?」
そんなことを言って、手伝わせてくれなかった。
ユリスはなんにも気にせず、のんびりしていた。手伝おうという気は初めから持ち合わせていないようであった。
代わりに、タイラーが忙しく走りまわっていた。
「猫のこと、よろしくね」
「あ、僕が? そこはブルースに任せないんだ」
「ブルース兄様は顔が怖いから。猫がビビってしまう」
「あ、あぁ。なるほど?」
なるほどと口にしながら、しきりに首を捻るオーガス兄様は、本心ではよく理解していないようであった。猫は繊細なんだぞ。不機嫌顔のブルース兄様がご飯をあげても、警戒して食べないかもしれない。その点、オーガス兄様は見るからに弱そうだから少しは安心である。猫もあんまりビビらないかもしれない。
「名前はエリスちゃん。エリスちゃんって呼べば、おやつをもらいに寄ってくるよ」
「にゃー」
エリスちゃんという言葉に反応した白猫が、おやつの時間と勘違いして盛大に鳴いている。「こんなふうに、すごく鳴く」と説明すれば、オーガス兄様は「はぁ、そうなんだ」と気の抜けた返事をする。
ちゃんとわかっているのかな?
すごく心配である。やっぱりブルース兄様にお願いしようかな。迷っていると、オーガス兄様は「任せてよ。ニックがなんとかするよ」と、はやくも人任せ発言をしている。名前のあがったニックが、露骨に嫌そうな顔をする。
「……やっぱり、ブルース兄様に頼むからいい」
白猫をぎゅっと抱っこして、ふるふると首を左右に振れば、オーガス兄様が「え?」と驚きに目を丸くする。
「なんで? いいよ、僕が世話しておくよ」
「いい。大丈夫。遠慮する」
「なんでそんな急に」
言葉を失うオーガス兄様は、ニックと顔を見合わせている。けれども、そこまでの情熱はないらしく、あっさりと「そう? ならいいけど」と猫のお世話係を諦めてしまう。
ということで、猫のお世話はブルース兄様にお任せすることにした。
「よろしくお願いします」
猫を抱えてぺこりと頭を下げれば、ブルース兄様が天を仰ぐ。「なんで俺が」という苦い呟きが聞こえてきたような気もする。
「オーガス兄様はダメだった。ちゃんとお世話できるか怪しい」
低く唸ったブルース兄様も、同じ考えに至ったらしい。それ以上の反論はしてこなかった。
「名前はエリスちゃん。でもエリスって言うとおやつもらえると勘違いしてすごく鳴くから注意してね」
「にゃー」
再び盛大に鳴き始めた白猫をそっと見下ろして、次にブルース兄様を見上げる。
「ほら。こんなふうに」
「なんで呼んでみせたんだ」
鳴きまくる猫を持て余していると、兄様が文句を言ってくる。だって説明に必要だったんだから、仕方がないだろ。
「今はおやつの時間じゃないから、我慢しろ」
「にゃー」
根気強く言い聞かせるが、猫は理解してくれない。おやつはどこだと鳴いている。困ったな。
「ペットは飼い主に似るというのは、本当だな」
「どういう意味?」
しみじみ呟くブルース兄様を問いただせば、兄様はぎゅっと眉間に皺を寄せる。
「どうって。意地汚いところがそっくりじゃないか」
「俺はこんなんじゃない。大人だもん」
「どこがだ。毎日おやつ寄越せとうるさいだろ」
それはユリスも一緒である。俺はおやつ欲しいと主張するだけマシというものだ。対して、ユリスはおやつになんて興味のないフリを貫いている。しかし、いざおやつの時間になれば、すごく真剣におやつと向き合っている。俺が横から手を伸ばせば、すごい形相で睨み付けてくるのだ。
白猫を抱える腕に、力を込める。放っておけば、そのうち諦めるだろう。にゃあにゃあ言っている猫を抱えたまま、俺は自分の荷物を用意すべく、急いで自室へと駆け戻った。
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