嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

文字の大きさ
443 / 1,003
16歳

485 報告

「ティアン!」
「なんですか」

 大声で呼べば、ティアンがちょっとだけ眉を寄せる。

 俺の自室にて。
 俺は先程からずっとあることが気になっていた。ティアンに教えてあげようと声を張り上げる。

「ティアン!」
「だからなんですか」

 面倒くさいといった表情をみせる彼の足を綿毛ちゃんがちょびっと踏んでいる。ティアンの片足の上に、前足を乗せてニマニマしている。地味な悪戯だ。

「足踏まれてるよ」
「知ってますよ」

 足元に視線を落としたティアンは、綿毛ちゃんのことをじっと観察している。相変わらずにやにやしている綿毛ちゃんは、ティアンの足から動く気配がない。

 なんでティアンは綿毛ちゃんを退かさないのだろうか。弱そうな犬だから遠慮しているのかもしれない。俺だったら容赦なく追い払うけどね。動かないティアンに代わって、俺が注意をしておく。

「やめろ、犬。ティアンをいじめるな」
『犬じゃないでーす。いじめてもないでーす』

 ぺろっと舌を出す綿毛ちゃんは、なんだかそわそわしている。毛玉の企みに気が付いた俺は、さっと綿毛ちゃんを抱き上げた。

 綿毛ちゃんは、まだお父様にしか打ち明けていない俺の夢をティアンに教えたいのだ。小声で「余計なことするな!」と注意するが、綿毛ちゃんは『えー?』と笑うだけで理解しているのかも怪しい。お喋り毛玉め。

 綿毛ちゃんをティアンから遠ざける。

 不思議そうにしているティアンであったが、詳しく尋ねてはこない。

 あの後、お父様は俺がカル先生と一緒に外出することを許可してくれた。とはいえ、護衛としてティアンも連れて行くという条件付きではあるが。

 というわけで、今度はティアンにも一から説明しなければならなくなった。お父様の許しがあるので、ティアンもダメとは言わないだろう。だろうけど、やっぱり打ち明けるのには多少の決意が必要。

「……」

 しかし、いつまでも黙っておくわけにはいかない。ここはさっさと報告を済ませてしまおう。

「今度、カル先生と一緒にお出かけするから。ティアンもついて来ていいよ」
「カル先生と? 珍しいですね」

 珍しいというか、初めてである。
 思えば、ティアンも昔はカル先生の授業を俺と一緒に受けていた。俺なんかよりもよっぽど積極的に取り組んでいたことを思い出す。

『お出かけいつにするの? オレも予定あけとくね』
「綿毛ちゃんはお留守番だよ。それに予定なんてないでしょ」
『ひどい』

 この毛玉は、毎日俺の隣でごろごろしている。予定なんて皆無だろうが。

 それに、喋る犬を連れて行くわけにはいかない。俺はカル先生の授業を見学に行くのだ。犬持参で行くのはどう考えてもおかしいと思う。

 だから綿毛ちゃんはお留守番ねと説明するのだが、我儘毛玉は『いやだぁ。オレも行きたい』とうるさい。

 カル先生と話し合った結果、俺はヴィアン家のルイスであることは内緒で見学に行くことにした。そうしないと見学先に必要以上に気を使わせてしまいそうだから。そう考えると、護衛としてティアンを引き連れて行くのも微妙な気がするけど、そこは仕方がない。どうにか誤魔化そうと思う。

 その前に、まずはティアンの叙任式。
 準備も着々と進みつつある。

「俺も見に行っていい?」

 特に誘われてはいないのだが、勝手に見に行く気満々でいた。一応、思い出してティアンに確認すれば「見に来てくれるんですか?」と顔を綻ばせた。

「嫌なら見に行かないけど」
「嫌なんて言ってませんけど」
『オレも行きたいぃ』

 ここぞとばかりに綿毛ちゃんが存在を主張する。先程からうるさい。

「エリスちゃんも連れて行くね」
「猫はちょっと」

 やんわり断ってきたティアンの腕をペシッと叩いておく。「なにするんですか」と文句を言うティアンは、ちょっぴり笑っていた。
感想 739

あなたにおすすめの小説

BLノベルの捨て駒になったからには

カギカッコ「」
BL
転生先は前世で妹から読まされたBLノベルの捨て駒だった。仕える主人命令である相手に毒を盛ったはいいものの、それがバレて全ての罪を被らされ獄中死するキャラ、それが僕シャーリーだ。ノベル通りに死にたくない僕はその元凶たる相手の坊ちゃまを避けようとしたんだけど、無理だった。だから仕方なく解毒知識を磨いて毒の盛られた皿を僕が食べてデッドエンドを回避しようとしたわけだけど、倒れた。しかしながら、その後から坊ちゃまの態度がおかしい。更には僕によって救われた相手も僕に会いにきて坊ちゃまと険悪そうで……。ノベル本来の受け担当キャラも登場し、周囲は賑やかに。はぁ、捨て駒だった僕は一体どこに向かうのか……。 これはこの先恋に発展するかもしれない青年たちのプロローグ。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 ※本編のロアン編完結。  ヴィルヘルム編を連載中です。

転生天使は平穏に眠りたい〜社畜を辞めたら美形王子の腕の中でとろとろに甘やかされる日々が始まりました〜

メープル
BL
毎日深夜まで残業、食事はコンビニの冷たいパン。そんな社畜としての人生を使い果たし、過労死した俺が転生したのは――なんと、四枚の美しい羽を持つ本物の天使だった。 ​「今世こそは、働かずに一生寝て過ごしたい!」 ​平穏な隠居生活を夢見るシオンは、正体を隠して王国の第一王子・アリスターの元に居候することに。ところが、この王子、爽やかな笑顔の裏で俺への重すぎる執着を隠し持っていた!?

落ちこぼれオオカミ、種族違いのため群れを抜けます

椿
BL
とあるオオカミ獣人の村で、いつも虐げられている落ちこぼれの受けが村を出ようと決意したら、村をあげての一大緊急会議が開催される話。

依存体質

ぽぽ
BL
冴えない大学生、優太(ユウタ)には小学生の頃から大好きなアイドルがいる。 それはアイドルとして活動する奏(カナタ)だ。 幼い頃に両親を亡くしてしまった優太には大きな心の支えだった。   握手会やイベント、ライブに足繁く通っていたため奏に認知をされていた優太だが、就職活動をきっかけに頻繁に通えなくなってしまう。 すっかり忘られてしまっただろうと思いながら行ったライブだが…

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

『死ぬほど愛されたい』と願ったら、最強の公爵家に転生して家族の愛が重すぎます!〜赤ちゃん令嬢は『慈愛の眼』で今日もデレを解析中〜

五十嵐紫
ファンタジー
元・社畜SE、今世は国宝級の赤ん坊!? 最強の父様とお兄様が過保護すぎて、一歩歩くだけで国が揺れちゃいます!