嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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16歳

638 誘われてない

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「ユリスは? いないの?」

 ジェフリーの家に到着するなり駆け寄ってきたデニスは、ユリスがいないと知って舌打ちした。ユリスの前では絶対にそんなことしないだろ。

 明るめの茶髪にくりっとした目は、成長しても健在である。流石に身長は伸びたけど、それでも可愛い顔をしている。おまけに細身だから、フリルのついた可愛い系の服を着ていてもなにも違和感はない。

「デニスって顔だけは可愛いよね」
「は? 僕に喧嘩売ってる? でも残念。僕、君みたいなお子様は相手にしないから。僕に相手をしてほしければもうちょっと大人になってから出直しなよ」

 ひと言述べただけなのに、たくさん返ってくる言葉の数々。俺とユリスは同い年ですが? てかデニスとも一個しか違わないから。

 ユリスがいないとわかったのに、なぜか絡んでくるデニス。いつもであれば、ユリスがいない時点で踵を返しそうなものだけど。

「ねー、ルイスくん」

 唐突な猫撫で声に嫌な予感がする。
 デニスが俺に対して甘えた声をかける時は、なにかお願い事がある時だとこれまでの経験からわかってしまっている。身構える俺に、デニスは腕を絡めてきた。助けを求めて隣のカル先生に視線を向けるが、苦笑が返ってくるばかりで助けてもらえない。ティアンとアロンは馬を預けているためちょっと遅れている。誰も助けてくれない状況で、デニスがわざとらしく俺の耳に口を寄せてきた。

「ユリスにさ、いつになったら僕と結婚してくれるのか訊いてきてくれる?」

 なんだそのお願い。
 もっと無茶振りされるかと思っていた俺は一気に肩の力を抜く。

「自分で訊けば?」

 デニスは普段からユリス対して「結婚して! 責任とって!」とうるさく言っている。今更なにを遠慮しているのだろうか。

 首を傾げる俺に、デニスは珍しく下を向いた。
 なんだか照れたような仕草だ。え、なに?

「ユリスははぐらかして答えてくれないもん」
「ふーん」

 てかユリスはデニスと結婚しないと思うけどな。何度かデニスのことを聞いてみたことあるけど、素っ気ない反応しか返ってこない。

「だからルイスくん? 代わりに訊いといてね」
「別にいいけど」

 なんだろう。苦い顔で「は? なぜ僕がデニーと結婚しなければならない」とかなんとか。そんな反応が想像できてしまう。思わず苦笑すれば、デニスがパッと手を離した。

「よろしくね」
「う、うん」

 可愛くウインクされてたじろいでしまう。
 おそらくデニスが望むような答えは返ってこないと思うけど。ちょっと申し訳ない気分になる。

「ルイスくんってパーティーとかあんまり参加しないよね」
「え、うん」
「なんで?」

 なんで?
 なんでって言われても。この間エリック主催のパーティーには参加した。でもそれ以外は全然だな。

「誘われないから?」

 曖昧に答えれば、デニスが「嘘でしょ」と半眼になる。

「ルイスくんが誘われないとかありえないでしょ」
「え? そう?」

 でも特に招待されたことはない。
 もしかして兄様たちのところにきてる?
 よくわからないな。そもそも俺は社交界とはあまり縁のない生活を送ってきた。知り合いも少ないから招待されないんだと思う。

 てかなんの話?

 そろそろジェフリーのところに行かないと。静かに佇むカル先生と目が合って、小さく苦笑された。

「あ、じゃあ俺はジェフリーのとこに」
「カミールと仲良くなったの?」
「……うん?」

 なんで突然カミールの名前が出てくるんだ。
 先日、学園にお邪魔した際に仲良くなったのは事実だ。

 不思議そうな俺に、デニスが肩をすくめた。

「噂になってるよ。ルイスくんが学園に来たって。カミールと一緒にいたんでしょう?」
「噂になってるの?」

 ちょっと驚いて聞き返せば、呆れたとため息を吐かれた。

「ルイスくんはさ、自分がどういう立場にいるのか自覚したほうがいいよ? たぶん君が思っているよりもみんなルイスくんに注目してるよ」
「そう?」

 でも確かになぁ。学園に行った時も結構注目されていた記憶はある。騎士服のラッセルが目立っているだけかと思っていたけど、もしかして俺も注目されていたのかもしれない。

 それにしても。
 デニスの耳にまで入るのか。迂闊な行動ができないな。でも学園内は人が多かったしね。あっという間に噂が広まっても不思議ではない。

「なんかカミールが誕生日パーティーするらしいよ。ルイスくんも招待されたの?」
「え!? されてないけど!?」

 初耳である。
 驚きに目を見開けば、デニスが「あれ? 誘ってないのかな」と首を傾げた。

「デニスは誘われたの!?」
「まぁ。行かないけどね」
「行かないの?」
「行かないよ。なんで子爵家のパーティーなんて」

 ぐちぐち文句を言うデニスは、何かが気に食わないらしい。招待されたのに行かないなんてもったいない。てか俺は招待されてないんですけど? なんで?

 ぽかんとする俺に、デニスが「まぁ大公家に声かけるなんて勇気いるよね」とニヤッと笑った。つまりカミールは遠慮して俺を招待しなかったということらしい。遠慮なんてしなくていいのに。せっかく友達になったんだから。
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