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17歳
658 不審者だよ
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ロニーと共に待っていれば、ハドリーが疲れた顔で戻ってきた。侵入経路を素直に白状したらしい。彼を囲んでいた騎士たちが慌ただしく動いている。次は簡単に侵入されないように対策を立てるのだろう。
「どこから入ってきたの?」
「内緒」
おどけるハドリーに、思わず半眼となる。たった今騎士たちに説明してきたんだろ? 俺に内緒にする意味ないだろ。
だが特に興味もないので、それ以上は突っ込まないでおく。あとハドリーのことである。他にも侵入経路を確保していそうな気がする。だってすごく簡単に白状したのだ。怪しいぞ。
「ブルース兄様の部屋に案内してあげる。アロンはいつも兄様の部屋にいるから。多分今もいると思うよ」
俺は現在すごく暇である。嬉々として案内を申し出れば、ハドリーが「いいの?」と訝しむ。
「自分で言うのもおかしいけど俺って不審者だよ? ちょっと言えないルートで大公家に入ってきたヤバい男だよ? そう軽々しく次男くんの部屋に入れていいの?」
「ブルース兄様は脳筋だから大丈夫だよ」
「意味がわかんないねぇ。さすがルイス様」
「どうも」
「褒めたつもりはなかったんだけどな」
へらへらしているハドリーは、ロニーに視線をやっている。ロニーのことが気になるのだろう。わかるよ。素敵な長髪だもんね。思わず見つめちゃうよね。
「ロニーも行く?」
仕事が忙しいのだろうかと思いつつ誘ってみれば、ロニーは「そうですね。私も同行します」と笑顔で応じてくれる。湿った綿毛ちゃんを抱っこして、早速ブルース兄様の部屋に向かう。
道中ハドリーに「なんでピアスしてんの?」と訊いてみたのだが、ニヤッと悪い笑みで「金くれたら教えてあげるよ」と言われてしまった。
「お金払ってまで知りたいとは思わないかも」
「そんなこと言わないでよぉ。もっと俺に興味持とう!?」
「無理」
「無理ってなに!? ひどくない?」
ハドリーは相変わらずお金がないとうるさい。前回会ったとき、グリシャに全財産を持っていかれていたという衝撃の事実が判明していた。そのせいで金欠なのかと思っていたのだが、どうやらそういうわけでもないらしい。
「なんでそんなにお金がないの?」
「あったらある分だけ使っちゃうんだよ」
「貯金しないの?」
「俺が貯金なんてできるように見える?」
「見えない!」
きっぱり断言すれば、ハドリーが「そんなに勢いよく言い切らなくても」と頬を引きつらせてしまう。
「ロニーはちゃんと計画的に貯金してるもんね?」
いや知らないけどさ。でもロニーは真面目である。どこぞの男みたいに気軽に全財産を賭けに突っ込んだりはしないだろう。
ぶつぶつ文句を言っているハドリーの背中を押して、ブルース兄様の部屋に押し込む。仕事中だった兄様が、ハドリーを見るなりぎょっとした。
「おい。なんでそいつがここにいる」
「アロンに会いにきたんだって」
お客さんだよとソファに寝転んでいたアロンを呼ぶ。こいつは常に仕事をサボっている。なんでブルース兄様が机に向かっているのに、側近のアロンが寝ているのだろうか。
「起きて」
目を閉じたまま動かないアロンの頭を勢いよく叩いてやる。それでも起きないので、アロンの胸元に湿った毛玉を乗せてやる。
「うわ、ちょっと。なんか濡れてるんですけど」
ようやく上半身を起こしたアロンは、綿毛ちゃんを床に捨ててしまう。ガシガシ頭を掻いて、「なんですか」と怠そうに口を開いた。
「お客さんだよ。お友達でしょ」
「……友達ではないですね。えっと、どちら様?」
目を細めてハドリーを観察するアロンはクソだと思う。ハドリーが「俺ですけど!? なにその塩対応!」と悲痛な声をあげている。
「せっかくアロンに会いにきてくれたんだよ。アロンに会うために、えっと。なんか頑張ってうちに侵入したんだよ。ハドリーに感謝したほうが、いや感謝するのはおかしいかも。あれ?」
ハドリーの応援をしようと思ったのだが、うまく言葉が出てこない。というかアロンに会いたいなら普通に真正面から会いに来ればよくない? 侵入する必要はまったくないよな。ハドリーのやったことって普通に悪いことでは?
急に黙り込んだ俺に、みんなが注目している。なんか言わないと。
「……えっと。とりあえずハドリーは俺に謝って」
「なんで!?」
なんでって。だって俺に迷惑をかけている。とりあえずなんでもいいから謝ってほしい。
「なんだこれは。言い争いなら他でやってくれ」
ブルース兄様の苦々しい声に、アロンが面倒くさそうに立ち上がる。そうしてハドリーの肩に腕を回したアロンは、兄様の部屋を出て行こうとする。
「はいはい。この不審者は俺がきっちり対処しておきますのでご安心ください」
「誰が不審者だよ」
いや不審者だよ。その点は間違っていない。
なぜか反論するハドリーは、アロンの友達を名乗るだけあって図太い性格である。
「どこから入ってきたの?」
「内緒」
おどけるハドリーに、思わず半眼となる。たった今騎士たちに説明してきたんだろ? 俺に内緒にする意味ないだろ。
だが特に興味もないので、それ以上は突っ込まないでおく。あとハドリーのことである。他にも侵入経路を確保していそうな気がする。だってすごく簡単に白状したのだ。怪しいぞ。
「ブルース兄様の部屋に案内してあげる。アロンはいつも兄様の部屋にいるから。多分今もいると思うよ」
俺は現在すごく暇である。嬉々として案内を申し出れば、ハドリーが「いいの?」と訝しむ。
「自分で言うのもおかしいけど俺って不審者だよ? ちょっと言えないルートで大公家に入ってきたヤバい男だよ? そう軽々しく次男くんの部屋に入れていいの?」
「ブルース兄様は脳筋だから大丈夫だよ」
「意味がわかんないねぇ。さすがルイス様」
「どうも」
「褒めたつもりはなかったんだけどな」
へらへらしているハドリーは、ロニーに視線をやっている。ロニーのことが気になるのだろう。わかるよ。素敵な長髪だもんね。思わず見つめちゃうよね。
「ロニーも行く?」
仕事が忙しいのだろうかと思いつつ誘ってみれば、ロニーは「そうですね。私も同行します」と笑顔で応じてくれる。湿った綿毛ちゃんを抱っこして、早速ブルース兄様の部屋に向かう。
道中ハドリーに「なんでピアスしてんの?」と訊いてみたのだが、ニヤッと悪い笑みで「金くれたら教えてあげるよ」と言われてしまった。
「お金払ってまで知りたいとは思わないかも」
「そんなこと言わないでよぉ。もっと俺に興味持とう!?」
「無理」
「無理ってなに!? ひどくない?」
ハドリーは相変わらずお金がないとうるさい。前回会ったとき、グリシャに全財産を持っていかれていたという衝撃の事実が判明していた。そのせいで金欠なのかと思っていたのだが、どうやらそういうわけでもないらしい。
「なんでそんなにお金がないの?」
「あったらある分だけ使っちゃうんだよ」
「貯金しないの?」
「俺が貯金なんてできるように見える?」
「見えない!」
きっぱり断言すれば、ハドリーが「そんなに勢いよく言い切らなくても」と頬を引きつらせてしまう。
「ロニーはちゃんと計画的に貯金してるもんね?」
いや知らないけどさ。でもロニーは真面目である。どこぞの男みたいに気軽に全財産を賭けに突っ込んだりはしないだろう。
ぶつぶつ文句を言っているハドリーの背中を押して、ブルース兄様の部屋に押し込む。仕事中だった兄様が、ハドリーを見るなりぎょっとした。
「おい。なんでそいつがここにいる」
「アロンに会いにきたんだって」
お客さんだよとソファに寝転んでいたアロンを呼ぶ。こいつは常に仕事をサボっている。なんでブルース兄様が机に向かっているのに、側近のアロンが寝ているのだろうか。
「起きて」
目を閉じたまま動かないアロンの頭を勢いよく叩いてやる。それでも起きないので、アロンの胸元に湿った毛玉を乗せてやる。
「うわ、ちょっと。なんか濡れてるんですけど」
ようやく上半身を起こしたアロンは、綿毛ちゃんを床に捨ててしまう。ガシガシ頭を掻いて、「なんですか」と怠そうに口を開いた。
「お客さんだよ。お友達でしょ」
「……友達ではないですね。えっと、どちら様?」
目を細めてハドリーを観察するアロンはクソだと思う。ハドリーが「俺ですけど!? なにその塩対応!」と悲痛な声をあげている。
「せっかくアロンに会いにきてくれたんだよ。アロンに会うために、えっと。なんか頑張ってうちに侵入したんだよ。ハドリーに感謝したほうが、いや感謝するのはおかしいかも。あれ?」
ハドリーの応援をしようと思ったのだが、うまく言葉が出てこない。というかアロンに会いたいなら普通に真正面から会いに来ればよくない? 侵入する必要はまったくないよな。ハドリーのやったことって普通に悪いことでは?
急に黙り込んだ俺に、みんなが注目している。なんか言わないと。
「……えっと。とりあえずハドリーは俺に謝って」
「なんで!?」
なんでって。だって俺に迷惑をかけている。とりあえずなんでもいいから謝ってほしい。
「なんだこれは。言い争いなら他でやってくれ」
ブルース兄様の苦々しい声に、アロンが面倒くさそうに立ち上がる。そうしてハドリーの肩に腕を回したアロンは、兄様の部屋を出て行こうとする。
「はいはい。この不審者は俺がきっちり対処しておきますのでご安心ください」
「誰が不審者だよ」
いや不審者だよ。その点は間違っていない。
なぜか反論するハドリーは、アロンの友達を名乗るだけあって図太い性格である。
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