嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

文字の大きさ
687 / 892
17歳

708 縮んで

しおりを挟む
「ジェフリーは、もう少し小さい方がいいと思うよ」
「そう言われましても」

 困った顔で小首を傾げるジェフリーは、そろそろ本当に俺の身長を追い越してしまいそう。ここ最近、俺はジェフリーに会う度にひやひやしている。弟みたいだと思っていたジェフリーに、身長を抜かされるのはかなりショックだ。そんなに大きくなる必要ないと思うぞ。

 今日もジェフリーの授業を見学するため、アーキア公爵家にお邪魔していた。

 俺たちが到着するなり、まずデニスが出てきてユリスが一緒かどうかを確認する。ユリスがいるとわかれば、彼の腕を引いてにこにこと去っていく。ユリスがいなければ「なんで連れてこないの?」と、俺に文句を言ってから去っていく。これが毎回のお決まりだ。

 今日、ユリスはお留守番。案の定、デニスは「つまんない」と文句を言っていた。俺に言われてもな。面倒くさがって外出しないのはユリスだ。文句であれば、ユリスに直接言ってもらわないと。

 授業も終わり、ジェフリーと一緒におやつを食べる。カル先生は、ひとりで本を読みながら熱心にメモをとっている。

 忙しそうなカル先生を横目に、俺はジェフリーの肩をグッと下に押してみる。ちょっと縮まないかなと奮闘するが、椅子に座ったジェフリーは困惑気味に「あの、多分縮まないと思います」と言ってのける。そんなのやってみないとわからないだろう。

「どうしてそんなに大きくなるの? なに食べてるの」
「えっと。普通に」

 特別なことはなにも、と苦笑するジェフリーは、ティーカップを両手で包み込むようにしている。

 出会った当初は弱そうなお子様だったのに。身長が伸びたせいなのか。顔つきもキリッとしてきた。兄のデニスが可愛い系なので、てっきりジェフリーも可愛い系のまま成長すると思っていたのに。予想に反して、なんだか男の子って感じに成長しつつある。このままだと可愛い弟枠から外れてしまうぞ。

「頑張って縮んで! やればできるよ! ジェフリーは小さい方が可愛いよ!」
「そう言われても。多分まだ伸びます」
「もう無理だよ」
「いいえ、伸びます」

 頑なに主張するジェフリーは、まだまだ成長するつもりでいるらしい。ちょっと諦めた方がいいと思うぞ。

「それに、僕はかっこいい大人になって、ルイス様に認めてもらうという目標があるので」
「ダメ。ジェフリーは可愛いのが似合うよ。ちょっと綿毛ちゃんに似てるから、今のままがいいと思う」
「綿毛ちゃんに……」

 なぜか半眼になってしまうジェフリーは、「綿毛ちゃんって、ルイス様の飼っている犬ですよね?」と不満そう。綿毛ちゃん似と言われるのが嫌なのか? もふもふだぞ。弱そうで可愛いんだぞ。

「カル先生」
「はい?」

 熱心に仕事しているカル先生は、訝しむように顔を上げる。

「ジェフリーを縮ませたい。どうすればいい?」

 カル先生ならなにか知っているかもしれないと訊いてみるが、先生ではなくジェフリーが「や、やめてください」と弱々しく声を上げた。カル先生も「さぁ? そういった方法は知りませんね」と素っ気ない。

 はぁっと、ため息を吐く。

 そのうちジェフリーは俺より大きくなる。すごく悲しい。

「そういえば、誕生日パーティーに参加されたんですよね。どうでした?」

 不自然に明るい声を出すジェフリーは、話題を変えたいという本音が丸わかり。まぁ、ジェフリーの成長を嘆いていても仕方がないからな。

 それにカミールの誕生日パーティーに参加するにあたって、ジェフリーには色々アドバイスしてもらった。どうすれば招待状を送ってもらえるのか、一緒に考えてもらったのだ。結果を報告するのは当然だろう。

「楽しかったよ。ヘイゼルと仲良くなった。あ、ヘイゼルっていうのは、カミールの妹でね」

 パーティーでの出来事を思い出しながら、自然と頬が緩んでしまう。道中のお泊まりもすごく楽しかった。初めての経験がたくさんあったと報告する度に、ジェフリーは一緒になって喜んでくれる。

「あ、ヘイゼルはジェフリーと同じ十五歳だって。でもジェフリーより大人だったよ。落ち着きがあって、優しかった」
「ぼ、僕もこれから大人になります! 身長だって伸びます!」

 いかにヘイゼルが大人な振舞いをしていたか説明すれば、ジェフリーが悔しそうに拳を握る。やはりヘイゼルのほうが断然大人だった。ジェフリーは、まだまだ子供っぽい。そのままでいいと思う。

「ちょっとね、ヘイゼルのこと好きだなぁって思ったけどね」
「え……」

 固まるジェフリーは、「え」と繰り返す。
 そのまま目を見開くジェフリーは、「え、好き?」と動揺を見せた。

 あぁ、そういえば。ジェフリーも俺のこと好きとか言っていたなぁ。でもジェフリーのことはちゃんと振った。ジェフリーも理解してくれた。なにも問題はない。

「でも告白するのはやめておいた」
「そ、そうですか」

 露骨に安堵するジェフリーは、カップを傾けて紅茶を飲み干してしまう。本を読んでいたはずのカル先生が、呆然とこちらを見ていた。
しおりを挟む
感想 717

あなたにおすすめの小説

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する

SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する ☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。