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77 さみしい?
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「……オリビアぁ」
「なんですか?」
急遽コンちゃんの部屋を用意した後。寝室にてオリビアを呼べば、くるりと振り返ってくれる。
先にベッドで寝ていた猫のユナを引っ張り出して、床に落としておく。ハッと目を見開いたユナが『なにするんだ!』と大声で抗議してきたけど無視しておく。人のベッドを勝手に占領するユナが圧倒的に悪いと思う。
「オリビアぁ」
「だから。なんですか?」
ベッドに腰掛ける俺の前に足を運んだオリビアは、膝をついて俺と目線を近付けてくれる。
綺麗に澄んだ瞳をぼんやり眺めながら、俺はうーんと唸ってしまう。これは訊いてもいいことなのだろうか。しかし遠慮していても仕方がないので、目の前に屈むオリビアの肩をぽんぽんと叩いてみる。
「オリビア。王立騎士団に戻っちゃうの?」
「え?」
目を見開くオリビアは「戻りませんよ」とあっさり否定してきた。そんな軽く答えちゃっていいのか。
「だって王立騎士団の団長に戻って来いって言われたんでしょ?」
正直、エヴァンズ公爵家の私営騎士団にいるよりも王立騎士団所属の方がずっと良い立場だと思う。そりゃあオリビアは色々あって王立騎士団を辞めてうちに移ってきた身だけど。実際にうちで働いてみて、やっぱりあちらに戻りたいと思っていたりするのかもしれない。
だから心配になってオリビアに直接聞いてみたのだが、彼女は目を瞬いて「どうして私があんなところに戻らないといけないんですか」と口の悪いことを言い始める。それ誰かに聞かれたらまずい発言だと思うぞ。この部屋には俺とオリビアしかいないけど。いやユナもいたな。ユナはなにもできない魔獣なので大丈夫だろう。
オリビアの顔をじっと見つめてみる。
相変わらず綺麗な顔をしている。なんだかムカついてきた。オリビアが屈んでいるのをいいことに、彼女の頭をペシッと叩いてやった。すぐにオリビアが「なにをするんですか」と眉を吊り上げるが気にしない。へらへら笑っておけば、オリビアは呆れたとばかりに息を吐く。
「オリビアもはやく寝なよ。夜更かししたら兄上に怒られるぞ」
「私は別に怒られませんよ」
苦笑するオリビアは、ゆったりした動作で立ち上がると俺の頭を軽く撫でてきた。珍しく優しい手つきである。
オリビアは俺の護衛なので、すぐ近くに部屋をもらっている。先程帰宅したばかりだし、もしかしたら夕食だってまだかもしれない。俺のことは気にせず休んでいいよと伝えれば、オリビアが「はい。ありがとうございます」と柔らかく笑った。
オリビアが去った後、俺はユナを抱えてベッドにもぐる。しかしどうしてもコンちゃんのことが気になって仕方がない。コンちゃんは、同じ階に部屋を用意してもらっていた。普段は客室として利用されている部屋である。
「コンちゃん、大丈夫かな? ひとりで寂しくて泣いてないかな」
『あいつが泣くわけないだろ』
眠そうにむにゃむにゃしながら答えるユナは冷たいと思う。たしかにコンちゃんは冷たい目をしたお兄さんだけど。
あれは人間姿に化けたらああいう見た目になったというだけであり、見た目通り冷たい性格というわけでもないと思う。それにこれまで野生で好き勝手に生きてきた魔獣が、突然人間の屋敷に連れてこられたのだ。慣れない環境で寂しくなっても仕方がない。むしろそれが自然だと思う。
「大変だぞ! 猫!」
『……へ? なに?』
半分寝ていたユナがきょろきょろしている。しかしこれは一刻を争う事態であった。
「コンちゃんが泣いているかもしれない! 助けに行かないと!」
『……え? なに。なんの話をしてるのさ』
「いくぞ!」
『行かないよ? もう寝ろや。何時だと思ってんの』
突然口が悪くなるユナをぎゅっと抱きしめたまま部屋を飛び出す。ユナの『やめろ、くるしい』という悲鳴のような声が聞こえてきて慌てて力を緩めた。
そうしてコンちゃんに割り当てられた部屋に突撃すれば、コンちゃんはベッドに横たわることなくソファに腰掛けて偉そうにふんぞり返っていた。
「なんの用だ」
ちらりと俺を一瞥して、コンちゃんが眉を寄せる。長い足を組んで座るコンちゃんはすごく偉そうな態度。ユナが『え、なにこいつ』と引いている。
とりあえずコンちゃんの隣に腰を下ろす。一瞬だけ嫌そうな顔を向けてきたコンちゃんは、しかしすぐに前を向くと黙り込んでしまう。
「コンちゃん」
「その名前は気に入らない」
「コンちゃんはコンちゃんだもん」
「違う。私は高貴な魔獣だぞ。そんな愛玩動物につけるような名前は相応しくない」
「コンちゃん。もふもふ。俺のペット」
「おまえのペットになった覚えはない」
ひどい。契約したもん。
しかしコンちゃんはペットと使い魔は全然違うと力説してくる。魔力が云々とか難しい話だ。七歳の俺には理解できない。ぽかんとしながらユナを撫でていれば、コンちゃんが舌打ちした。
「おまえ、私の話をなにも理解していないだろう?」
「コンちゃん、よく喋るね。お喋り好きなの? 俺も好き」
「おまえに何を言っても無駄だということはわかった」
真顔で変な宣言をしてくるコンちゃん。俺は賢い七歳児だぞ。馬鹿にするんじゃない。
「なんですか?」
急遽コンちゃんの部屋を用意した後。寝室にてオリビアを呼べば、くるりと振り返ってくれる。
先にベッドで寝ていた猫のユナを引っ張り出して、床に落としておく。ハッと目を見開いたユナが『なにするんだ!』と大声で抗議してきたけど無視しておく。人のベッドを勝手に占領するユナが圧倒的に悪いと思う。
「オリビアぁ」
「だから。なんですか?」
ベッドに腰掛ける俺の前に足を運んだオリビアは、膝をついて俺と目線を近付けてくれる。
綺麗に澄んだ瞳をぼんやり眺めながら、俺はうーんと唸ってしまう。これは訊いてもいいことなのだろうか。しかし遠慮していても仕方がないので、目の前に屈むオリビアの肩をぽんぽんと叩いてみる。
「オリビア。王立騎士団に戻っちゃうの?」
「え?」
目を見開くオリビアは「戻りませんよ」とあっさり否定してきた。そんな軽く答えちゃっていいのか。
「だって王立騎士団の団長に戻って来いって言われたんでしょ?」
正直、エヴァンズ公爵家の私営騎士団にいるよりも王立騎士団所属の方がずっと良い立場だと思う。そりゃあオリビアは色々あって王立騎士団を辞めてうちに移ってきた身だけど。実際にうちで働いてみて、やっぱりあちらに戻りたいと思っていたりするのかもしれない。
だから心配になってオリビアに直接聞いてみたのだが、彼女は目を瞬いて「どうして私があんなところに戻らないといけないんですか」と口の悪いことを言い始める。それ誰かに聞かれたらまずい発言だと思うぞ。この部屋には俺とオリビアしかいないけど。いやユナもいたな。ユナはなにもできない魔獣なので大丈夫だろう。
オリビアの顔をじっと見つめてみる。
相変わらず綺麗な顔をしている。なんだかムカついてきた。オリビアが屈んでいるのをいいことに、彼女の頭をペシッと叩いてやった。すぐにオリビアが「なにをするんですか」と眉を吊り上げるが気にしない。へらへら笑っておけば、オリビアは呆れたとばかりに息を吐く。
「オリビアもはやく寝なよ。夜更かししたら兄上に怒られるぞ」
「私は別に怒られませんよ」
苦笑するオリビアは、ゆったりした動作で立ち上がると俺の頭を軽く撫でてきた。珍しく優しい手つきである。
オリビアは俺の護衛なので、すぐ近くに部屋をもらっている。先程帰宅したばかりだし、もしかしたら夕食だってまだかもしれない。俺のことは気にせず休んでいいよと伝えれば、オリビアが「はい。ありがとうございます」と柔らかく笑った。
オリビアが去った後、俺はユナを抱えてベッドにもぐる。しかしどうしてもコンちゃんのことが気になって仕方がない。コンちゃんは、同じ階に部屋を用意してもらっていた。普段は客室として利用されている部屋である。
「コンちゃん、大丈夫かな? ひとりで寂しくて泣いてないかな」
『あいつが泣くわけないだろ』
眠そうにむにゃむにゃしながら答えるユナは冷たいと思う。たしかにコンちゃんは冷たい目をしたお兄さんだけど。
あれは人間姿に化けたらああいう見た目になったというだけであり、見た目通り冷たい性格というわけでもないと思う。それにこれまで野生で好き勝手に生きてきた魔獣が、突然人間の屋敷に連れてこられたのだ。慣れない環境で寂しくなっても仕方がない。むしろそれが自然だと思う。
「大変だぞ! 猫!」
『……へ? なに?』
半分寝ていたユナがきょろきょろしている。しかしこれは一刻を争う事態であった。
「コンちゃんが泣いているかもしれない! 助けに行かないと!」
『……え? なに。なんの話をしてるのさ』
「いくぞ!」
『行かないよ? もう寝ろや。何時だと思ってんの』
突然口が悪くなるユナをぎゅっと抱きしめたまま部屋を飛び出す。ユナの『やめろ、くるしい』という悲鳴のような声が聞こえてきて慌てて力を緩めた。
そうしてコンちゃんに割り当てられた部屋に突撃すれば、コンちゃんはベッドに横たわることなくソファに腰掛けて偉そうにふんぞり返っていた。
「なんの用だ」
ちらりと俺を一瞥して、コンちゃんが眉を寄せる。長い足を組んで座るコンちゃんはすごく偉そうな態度。ユナが『え、なにこいつ』と引いている。
とりあえずコンちゃんの隣に腰を下ろす。一瞬だけ嫌そうな顔を向けてきたコンちゃんは、しかしすぐに前を向くと黙り込んでしまう。
「コンちゃん」
「その名前は気に入らない」
「コンちゃんはコンちゃんだもん」
「違う。私は高貴な魔獣だぞ。そんな愛玩動物につけるような名前は相応しくない」
「コンちゃん。もふもふ。俺のペット」
「おまえのペットになった覚えはない」
ひどい。契約したもん。
しかしコンちゃんはペットと使い魔は全然違うと力説してくる。魔力が云々とか難しい話だ。七歳の俺には理解できない。ぽかんとしながらユナを撫でていれば、コンちゃんが舌打ちした。
「おまえ、私の話をなにも理解していないだろう?」
「コンちゃん、よく喋るね。お喋り好きなの? 俺も好き」
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