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脱却
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水泳部の更衣室。
俺はロッカーの扉を開けたまま携帯を弄っていた。
「大河、おっはよ~」
「……おはよ」
唐木が俺の隣のロッカーを開けて荷物を放り込む音がした。
「あ、誰かにメール?」
「……李煌さんからだ」
「何て何て? そういえば、来てくれるんだって? 今日」
「ああ。そのことについてのメールだ。……今返し終わった」
今日は水泳記録会の日。
李煌さんからのメールの内容は【頑張ってね。絶対行くから】という応援メールだった。
俺の出番は午後からだから、慌てなくていい旨を李煌さんに伝えたところだ。
携帯をカバンに仕舞い、代わりに水着を取り出す。
水着の上にジャージを着て準備を済ませた。
「でもさ、どうして気が変わったの?」
「何の話だ?」
と切り返しながらも俺は何の事だか察しはついていた。
「お兄さんを招待するなんて、ちょっと吃驚したからさ。あ、良い事だとは思うけどね」
「……ここでの俺も、知ってもらいたかったからだ」
「おお。ご家族に少しは気を許したってことだね」
微笑む唐木。
それには少しばかり違和感があって、俺は僅かに眉を顰めた。
「まあな」
「うん。……それだけならいいんだけど」
正直ギクリとした。
もちろん顔には出さないが、明らかに唐木は何かを掴みかけている。
(李煌さんのことバレても構わないが……なんか、面倒だな……)
どうしたものかと考えながら、プールサイドに向かった。
少しして、他校の生徒もぞくぞくと集結し、屋内プールは本格的なイベント会場と化した。
(……って、煩過ぎ)
部員ではない生徒まで押しかけてきている。
上の細いギャラリーからも見下ろす観客でいっぱいだ。
「なんでこんなに人多いんだよ」
「それはほら、大河目当てでしょ」
「……」
呟いた言葉にいちいち反応してくる唐木。
しかし、その回答は受け入れ難い。
俺は李煌さんにさえ来てもらえればそれでいい。
李煌さんはまだのはずだが、つい彼の姿を探してしまう。
その時、視線が一人の他校生とぶつかった。
そのまま逸らされると思ったのだが、予想を反してこっちに向かって歩いて来た。
鋭く、勝気そうな視線が俺を捉えたまま目の前で立ち止まった。
「あんた、黒川大河か?」
「……違う」
「いや、間違ってはねぇはずだけど」
コイツは何様だろうか。
(何で俺のこと知ってる? どこかで会った覚えは……)
「――今は相見だ」
「相見? ……ああ、転校した理由って、そういうことか」
転校というキーワード。
小学生の時の俺を知っていると言う事になる。
「誰?」
と遠慮がちに唐木が横から小声で訊いて来た。
「いや、分からない」
俺も声を顰めて緩く首を振る。
俺はロッカーの扉を開けたまま携帯を弄っていた。
「大河、おっはよ~」
「……おはよ」
唐木が俺の隣のロッカーを開けて荷物を放り込む音がした。
「あ、誰かにメール?」
「……李煌さんからだ」
「何て何て? そういえば、来てくれるんだって? 今日」
「ああ。そのことについてのメールだ。……今返し終わった」
今日は水泳記録会の日。
李煌さんからのメールの内容は【頑張ってね。絶対行くから】という応援メールだった。
俺の出番は午後からだから、慌てなくていい旨を李煌さんに伝えたところだ。
携帯をカバンに仕舞い、代わりに水着を取り出す。
水着の上にジャージを着て準備を済ませた。
「でもさ、どうして気が変わったの?」
「何の話だ?」
と切り返しながらも俺は何の事だか察しはついていた。
「お兄さんを招待するなんて、ちょっと吃驚したからさ。あ、良い事だとは思うけどね」
「……ここでの俺も、知ってもらいたかったからだ」
「おお。ご家族に少しは気を許したってことだね」
微笑む唐木。
それには少しばかり違和感があって、俺は僅かに眉を顰めた。
「まあな」
「うん。……それだけならいいんだけど」
正直ギクリとした。
もちろん顔には出さないが、明らかに唐木は何かを掴みかけている。
(李煌さんのことバレても構わないが……なんか、面倒だな……)
どうしたものかと考えながら、プールサイドに向かった。
少しして、他校の生徒もぞくぞくと集結し、屋内プールは本格的なイベント会場と化した。
(……って、煩過ぎ)
部員ではない生徒まで押しかけてきている。
上の細いギャラリーからも見下ろす観客でいっぱいだ。
「なんでこんなに人多いんだよ」
「それはほら、大河目当てでしょ」
「……」
呟いた言葉にいちいち反応してくる唐木。
しかし、その回答は受け入れ難い。
俺は李煌さんにさえ来てもらえればそれでいい。
李煌さんはまだのはずだが、つい彼の姿を探してしまう。
その時、視線が一人の他校生とぶつかった。
そのまま逸らされると思ったのだが、予想を反してこっちに向かって歩いて来た。
鋭く、勝気そうな視線が俺を捉えたまま目の前で立ち止まった。
「あんた、黒川大河か?」
「……違う」
「いや、間違ってはねぇはずだけど」
コイツは何様だろうか。
(何で俺のこと知ってる? どこかで会った覚えは……)
「――今は相見だ」
「相見? ……ああ、転校した理由って、そういうことか」
転校というキーワード。
小学生の時の俺を知っていると言う事になる。
「誰?」
と遠慮がちに唐木が横から小声で訊いて来た。
「いや、分からない」
俺も声を顰めて緩く首を振る。
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