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脱却3
3-11
しおりを挟む――……。
少し間を開けてベッドに二人で座る。
先に沈黙を破ったのは李煌さんだった。
「俺って、そんなに分かりやすいかな……」
少しだけ沈んだ声に、俺は努めて明るく答えた。
「……家族だから分かるって程度だとは思うよ。俺的には分かりやすかった方が助かるしな」
「そっか。はぁ……無理、してるつもりなかったんだけどなー……」
言いながら李煌さんは後ろへポフッと倒れ込む。
「だから兄貴が動いたんだろ。李煌さんが隠す必要なくなるように」
「うん……そうだね」
李煌さんの顔の横に手を突き、そっと頬を撫でると安心したように微笑んだ。
「魁くんには早く打ち明けちゃいたかったんだ」
「どうして?」
「やっぱり、一番信頼しているからかな。隠しているのがちょっと辛かったよ。どう思われるのかも不安だったし……」
俺の手に手を重ねて李煌さんが小さく笑う。
「じゃあ、俺のことはどう思ってるんだ?」
「え? それは……」
頬を染めて俺から視線を逸らす。
そして、綺麗で可愛い唇がゆっくり動いた。
「大事な……恋人だよ……。決まってるでしょ?」
文句のつけようのない返答だ。
俺はクスリと笑って細い身体を抱きしめた。
「た、大河くんっ?」
下でもそもそと身じろぐ恋人が愛おしい。
「とりあえず、これで李煌さんの悩みごとが一つ減ったわけだ」
「そういうことになるね……」
「なら、李煌さんを頂戴」
「え……?」
少しだけ身体を離すと、目の前に驚きに目を丸くしている李煌さんがいた。
「ダメか?」
「え……っと、俺はもう大河くんのモノだよ?」
(本当、天然。はっきり言わないと気付いちゃもらえないか)
俺は小さく息を吐く。
「そうじゃなくて、李煌さんを抱きたいってこと」
「っ! ……だ、だから、そういうこと口にしなくても……大丈夫だよ。もう大河くんのモノなんだからっ」
「!?――……っ」
(この人、ちゃんと分かって――不安に思っていたのは俺の方か……)
急に笑いが込み上げて来た。
「はははっ」
「え……ちょっと大河くん? どうしたの??」
目の前の真っ赤な顔が今度は戸惑いに歪む。
それを俺は真っ直ぐ見つめた。
「ごめん、李煌さん。少しみくびってたかも」
「……もしかして俺のこと? ちょっとそれ酷くない?」
「だから御免って」
「まあ……ちゃんと愛してくれるなら? 赦してあげないこともないけど」
照れながらも強気に出る李煌さんに少し驚いた。
「ふぅん? 李煌さんでもそういう誘い文句言うんだ」
「あ……ちょ、ちょっと待って大河くんっ!今のは無し――!!」
「もう遅い」
やっとしっかりこの腕に抱くことができる。
誰にも染まる事の無い花だと思っていたこの人を、ゆっくり俺の色に染まってくれたらと思うが……。
その日はきっと来ないだろう。
俺が好きになった人は、そういう人だ。
【染まらない花】終。
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