陰陽転化

煙々茸

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第一章 祓い師

【参】ー7

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 暗がりに目が慣れて来た晴明は慌てることなく体勢を整え、優れた身体能力とナイフ一つで餓鬼たちを蹴散らし道を切り開いていく。
 騰蛇の背後に立つと、何もない場所を仕切りに見回す彼に眉を顰める。何かあるかもしれないと言った理由が何となく分かった。
「確かに不穏な気配がしますが、何もないようです……今は」
 晴明は何かを確かめるようにしゃがみ込んで片手を地面につける。
 案の定、ゾワリと悪寒めいた何かが掌を伝って流れ込んできた。それを断ち切るように手を振って拳を握る。
「……“何かあった”が正しいようですね」
 それは物理的な物なのか、それともそれ以外の何かなのかまでは分からない。
「おい――晴明後ろ!」
 騰蛇の声と同時に背後に迫る気配に気付いて振り返る。
 残り少ない霊符を指に挟み放とうとした瞬間、餓鬼たちの潰れたような嗄れ声が聞こえたかと思えば一瞬で遠ざかって行った。
 何かの力によって弾き飛ばされたのだと分かる。晴明の霊符はまだ手の中だ。
 上に残してきた貴人が駆け付けて来たのかと一瞬思ったが、気配が違う。
 餓鬼を退けた時ほどの威圧感はもう感じられないが、餓鬼とは圧倒的に異なる得体の知れない何かが歩み寄ってきている。
 晴明は霊符を手に残したまま闇の中を見据えた。
「まったく、こんな所にまで湧いて出おって……」
 少し古風な喋り方だが声は若い男のものだ。気怠そうに響くその声は妙に耳心地が良い。
 そして暗闇の中で二つの金色(こんじき)の瞳が晴明を見た。星のように煌めくその瞳は強く魅惑的で、晴明を映したほんの一瞬ゆらりと揺らいだ。
 自然な足運びで隣に立った男は髪の色まで瞳と同じ金色で、それは腰の下まで長く続いていて肩甲骨の辺りで緩く一つに括られていた。
「逃げ足だけは速い……」
 男はそう独り言ちると何かを確かめるように一瞬その場に屈んだ。
 僅かに肩に掛かった柔らかそうな髪が男の動きに合わせてはらりと落ちる。
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