陰陽転化

煙々茸

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第二章 人形の怪

【弐】ー1

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 京都までは公共交通機関を乗り継いでの移動で、白蛇の騰蛇には申し訳ないがボストンバッグの中で過ごさせた。
「やっと着いたのか?」
 鞄の口を開くと漸く出られるのかとその白い頭がむくりと立ち上がる。
「これからタクシーで予約した宿に向かいます。まだ出ないで」
 白い頭を鞄の中に押し戻して注意する。
 ここは京都。神社仏閣が集中している土地は霊力の強い祓い師も多くいて、騰蛇のような存在は直ぐに目をつけられてしまう。
 晴明が使役している神獣ならば尚のことーー。
「分かってる。一応気配は消してるつもりだけど、鋭い奴には意味ないからな」
 そう言いながらも小さい頭を少しだけ出して外の景色を楽しんでいる。その程度なら咎めはしない。
 晴明は鞄に手を突っ込み白い蛇の体をかき分けて下にあるメモを取り出した。
 そして乗り込んだタクシーの運転手にメモに書かれた行き先を告げる。
「お客さんは芸能人か何かかい?」
「……いえ、違います」
 走り出して直ぐに飛んできた質問に晴明は淡々と答えるも、鞄の中で噴き出すような息遣いが聞こえ咄嗟に開けたままの鞄の口を上からギュッと握った。
 中から体当たりするような動きがあったが無視する。
「そうなのかい? テレビで見たような気がしたんだけどねえ。かっこよくて羨ましい限りで」
 褒めて煽てるのが客に対してのスタンスなのか、口の良い運転手は目的地に着くまで時折晴明に話しかけては京都のガイドまでしてくれた。
 こっちが相槌で返事をすれば運転手が勝手に話を進めるので然程鬱陶しく感じることもなかった。
「お兄ちゃん、今度はゆっくり観光に来てな。ほな仕事頑張って」
 目的地に着く頃には大分言葉遣いも砕けていた運転手はタクシーを降りた晴明に労いの言葉を残して走り去って行った。
「……陽気な人だったな」
「そうですね」
 また鞄から顔を覗かせた騰蛇にそう返しながらチェックインする。
 かなり古風で趣のある旅館。仕事で泊まるには勿体ない。
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