31 / 51
第二章 人形の怪
【壱】ー5
しおりを挟む
そう、娘のことも晴明が訊いたから話しただけだ。
自分の娘が酷い状態になっているというのに、それを真っ先に言わないのはおかしい。
それすらも助言されたことだったのか、ただ娘を守るために情報の開示を控えただけなのかは分からないが……。
「でも京都なんて、偶然? しかも禍の人形の服を切って持ってくるなんて……死にたいのかしら」
貴人が人形の一部である着物の切れ端に触れるより先に晴明の手がそれをかすめ取った。
「君は触れないでください」
「え? そんなに危ない物なの?」
「それから貴人、君は今回留守番です」
「は…………どうして!!?」
訳が分からないと貴人は喚く。
これまで遠方の仕事には必ずついて行った。近場の仕事でさえ一人では行かせられないとギリギリまで駄々をこねて晴明を呆れさせてきた。
少しくらい嫌われたって構わない。晴明を傍で守れるならーー。
「今回行くのは京都よ!? 晴明分かってるの? あいつらがもし……」
「貴人。理由は君が一番分かっているはず。ーー私が気付いていないとでも思っているんですか?」
「何を言って……ーーっ!!」
唐突に何かに思い当たった様子の貴人は口を噤んだ。
「まだ本調子ではないでしょう。今回は素直に従ってください」
唖然とする貴人に下から見上げていた騰蛇は小さく溜息を吐いた。
留守番を命じられたことより晴明に自分が厄介事を抱えていることを知られていた事実にショックを受けたようだ。
騰蛇は仕方ないと頭を振る。
「……今回は諦めろよ。晴明のことはオレが守るし……、晴明だって京都連中のことは毛嫌いしてるんだ。顔を合わせる前に引き上げるさ」
「…………」
ただ呆然と立ち尽くしている貴人にはこれ以上言葉を掛けることができなかった。
自分の娘が酷い状態になっているというのに、それを真っ先に言わないのはおかしい。
それすらも助言されたことだったのか、ただ娘を守るために情報の開示を控えただけなのかは分からないが……。
「でも京都なんて、偶然? しかも禍の人形の服を切って持ってくるなんて……死にたいのかしら」
貴人が人形の一部である着物の切れ端に触れるより先に晴明の手がそれをかすめ取った。
「君は触れないでください」
「え? そんなに危ない物なの?」
「それから貴人、君は今回留守番です」
「は…………どうして!!?」
訳が分からないと貴人は喚く。
これまで遠方の仕事には必ずついて行った。近場の仕事でさえ一人では行かせられないとギリギリまで駄々をこねて晴明を呆れさせてきた。
少しくらい嫌われたって構わない。晴明を傍で守れるならーー。
「今回行くのは京都よ!? 晴明分かってるの? あいつらがもし……」
「貴人。理由は君が一番分かっているはず。ーー私が気付いていないとでも思っているんですか?」
「何を言って……ーーっ!!」
唐突に何かに思い当たった様子の貴人は口を噤んだ。
「まだ本調子ではないでしょう。今回は素直に従ってください」
唖然とする貴人に下から見上げていた騰蛇は小さく溜息を吐いた。
留守番を命じられたことより晴明に自分が厄介事を抱えていることを知られていた事実にショックを受けたようだ。
騰蛇は仕方ないと頭を振る。
「……今回は諦めろよ。晴明のことはオレが守るし……、晴明だって京都連中のことは毛嫌いしてるんだ。顔を合わせる前に引き上げるさ」
「…………」
ただ呆然と立ち尽くしている貴人にはこれ以上言葉を掛けることができなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる