陰陽転化

煙々茸

文字の大きさ
16 / 51
第一章 祓い師

【肆】ー2

しおりを挟む
「ところで、あなたはどちら様かしら?」
 貴人の声にそうだったと彼を振り返る。晴明は目を見張った。
 暗い地下では分からなかったが、一緒に上がって来た男の格好は昼と夜の狭間に溶ける藍色の空に燃えるようなもみじの葉が堂々と咲き誇っている雅な和服を纏っていた。
 その藍色の着物は金色の髪が良く映える。
 下も何か穿いているのか白地の細袴のような物がちらりと覗いている。
 所々着崩しているにもかかわらず品が良く見えるのは長身で滑らかな立ち姿に合っているからなのか。彼は自分の見せ方を良く分かっている。
 男はただ晴明だけを見つめ、優雅に佇んでいるばかりで貴人の質問には反応すら示さない。
「ちょっと、聞いてるの?」
 その視線を遮るように晴明の前に立つと、漸く金色の瞳が貴人に向けられた。
「何か?」
「とぼけないで頂戴。聞こえてたでしょ? ……晴明に何か用?」
 男の晴明を見る目が気に入らない貴人は棘のある口調で相手を問いただす。
「関係者以外立ち入りは許可されていないはずよ。此処には何をしに来たの? 何処から入ったのか知らないけど用が済んだのなら即刻立ち去りなさい!」
 貴人も明らかに男が人間でないことを見抜いている言い回しだ。
 男はクッと笑った。
「ふざけたことを言うな。用があって出向いた先にコレが立っていたのだ。前はこんな物はなかった。後から入ってきたのはそちらだろう」
 そのまま聞くと何を言っているのかと問いたくなるところだが、この施設が立つ以前にも男はここを訪れていて、後から立てたのだから自分に非はないと主張しているのだ。
 屁理屈云々より驚愕な発言が飛び出たものだ。施設が立ったのはもう何十年も前。見るからに若々しいこの男はそれ以前から存在していることを平然と明かしたことになる。
 彼の目的は分からないが、嫌な感じは全くしない。
 かといって警戒を解いて全てを信用することもできないので暫くは様子を見る他なさそうだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強面若頭は、懐っこいナースの献身に抗えない ―極道、はじめての恋を処方される―

たら昆布
BL
ウブで堅物な極道若頭×明るいわんこ系看護師

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

俺の婚約者は小さな王子さま?!

大和 柊霞
BL
「私の婚約者になってくれますか?」 そう言い放ったのはこの国の王子さま?! 同性婚の認められるパミュロン王国で次期国王候補の第1王子アルミスから婚約を求められたのは、公爵家三男のカイルア。公爵家でありながら、長男のように頭脳明晰でもなければ次男のように多才でもないカイルアは自由気ままに生きてかれこれ22年。 今の暮らしは性に合っているし、何不自由ない!人生は穏やかに過ごすべきだ!と思っていたのに、まさか10歳の王子に婚約を申し込まれてしまったのだ。 「年の差12歳なんてありえない!」 初めはそんな事を考えていたカイルアだったがアルミス王子と過ごすうちに少しづつ考えが変わっていき……。 頑張り屋のアルミス王子と、諦め系自由人のカイルアが織り成す救済BL

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

義兄が溺愛してきます

ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。 その翌日からだ。 義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。 翔は恋に好意を寄せているのだった。 本人はその事を知るよしもない。 その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。 成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。 翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。 すれ違う思いは交わるのか─────。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

オレンジの奇跡~夕と凪、僕らが交わる世界~

けいこ
BL
両親が営む小さな旅館『久我屋』を手伝いながら、BL小説を書いている僕。 穏やかにゆっくりと過ごす日常に満足していたある日、僕の前にとんでもなく魅力的な男性が現れた。 今まで1度も誰かを好きになったことがない僕にとっては、この感情が何なのか理解できない。 複雑に揺れ動く心に逆らえず、今までとは明らかに違う現実に戸惑いながら、僕の心はゆっくり溶かされていく……

染まらない花

煙々茸
BL
――六年前、突然兄弟が増えた。 その中で、四歳年上のあなたに恋をした。 戸籍上では兄だったとしても、 俺の中では赤の他人で、 好きになった人。 かわいくて、綺麗で、優しくて、 その辺にいる女より魅力的に映る。 どんなにライバルがいても、 あなたが他の色に染まることはない。

処理中です...