陰陽転化

煙々茸

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第二章 人形の怪

【肆】ー7

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 箱から現れたお菊人形は中路が言っていた通り――いや、恐らくそれ以上に状態は良くない。あったはずの鼻や口は完全に溶けてしまったのか見当たらず、目に至っては胸の辺りまで垂れ下がりどこを見ているのか分からない有様だ。
「うげっ……かなり歪んでるな。悪いもん溜め込み過ぎだ」
「騰蛇」
「分かってる。火傷しないように気を付けてくれよ……!」
 定めたモノにしか騰蛇の火は能力を発揮しないため晴明が火傷をすることはあり得ないが、火力を上げた蛇神の炎は身体が反射的に熱さを感じてしまいそうなほど強い力を帯びている。
 人形を中心に炎が円を描くように燃え上がると晴明は真言と共に結んだ印を真横に払いパンッと柏手を打った。
 密閉空間に響く柏手に呼応するかのように人形から溢れ出した瘴気。それは騰蛇の炎に阻まれたままどこへも行けずに弾けるように跡形もなく消え去った。
 原型を留めておけないほど崩れていた人形の顔も可愛らしい容姿に戻り、纏う着物も菊柄がくっきり浮き出た鮮やかな物に様変わりしていた。これが元のお菊人形の姿なのだろう。ただ切られた袖がそのままなのが残念だ。
 晴明より先に人形の側に歩み寄った雨月は箱ごと人形を持ち上げると中身を晴明に手渡し、箱に注目し始めた。
「やっぱり箱に何かあるんですか?」
 寺院でコレと対峙した時に感じた違和感について、晴明は答え合わせを求める。
 雨月は高さ二十センチほどの箱を執拗に撫でてはある一点で動きを止め、指先で軽く叩いて何かを抜き取ると晴明に差し出す。
「呪物化した原因はこいつだ」
「これは……?」
 彼の手にある物はただの木の破片に見えるが……。
 問い返すと雨月はふっと笑って逆に問うてきた。
「前に話した匣のことを覚えているか?」
「……ええ。確かここで君が探していた物でしたね……?」
「そうだ。この破片はその匣の一部。これが持つ力を知る者が故意に仕込んだのだ」
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