借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの

文字の大きさ
5 / 25

5

しおりを挟む
 横抱きにされて、ベッドへ連れていかれる。
 そのまま押し倒されて、唇を食まれる。
 彼の舌が口を割って入ってきて、わたしの舌を捕まえる。
 そのまま引っ張り出されて、彼の口に吸い込まれて。

「んっ」

 じゅって音がして。なんだかいやらしく聞こえて赤面する。
 そんなわたしの頬を優しく撫でながらそのまま下に降りていく。
 下から首筋撫でられて思わず声が漏れてしまって。
 そんなわたしをくすくす彼が笑ってて。

「今日はおしまい。もう仕事行かないと」
 なんだか恥ずかしくて、腕で口元隠してたらそれを外されて、最後は触れるだけのキスをした。



 どうしよう。
 ドキドキが止まらない。だって好きなんだもの。仕方ない。
 もう彼以外、受け入れられない。

 

 地道に返していくしかないのかな。
 ぼーっとしているわたしにアウロさんが声をかけてくれた。
 今日はもう終わりみたい。馬車に乗せてもらって家へ帰った。

 次の日、珍しくマクルトがうちに来た。
 部屋で話そうか?って聞いたけど遠慮された。
 そのまま二人で歩いてカフェに入る。流石に今日は個室じゃなかった。
「昨日あいつ行ったんだろ?まだ続ける気か?」
 こくりと頷くわたしに彼は呆れたようにため息をつく。
「なんでそこまで」
「だって、だって……」
「言ってみろ」

「辺境伯家と子爵家は結婚できないんでしょう」
 涙が溢れてくる。そんなわたしにギョッとしながら慌ててハンカチを差し出してくる。
「頼むから泣くな。あいつに殺される」
 あいつって誰よ。って思いながらもらったハンカチで鼻をかむ。
「あー!鼻噛むなよ。つか言っておくけどそんな法律ねぇよ」


 ーーん?
「今なんて言ったの」
「だから、結婚すんのに爵位がなんだって制限あんのは王族だけだって」
「……えぇっ?」
 思わず大きい声を出してしまい、口を手で覆う。恥ずかしい……
「ハンカチで鼻噛んでたやつが今更恥ずかしがるなよ」
 腹が立つけどごもっともです。
 でもどういうこと?
 わたしヒロインちゃんからそうやって聞いたんだけど。王族と勘違いしてた……?
「もしかしてお前、ずっとそう思ってたのか……?」
 どうだったろう。実はヒロインちゃんも転生者で、影でこっそり手助けしてて、その時聞いたんだけど、そう言われてみればそうだったかも……?
「……これ、やばい?」
「ウィル、カンカンだろうな」
 どうしよう。ものすごい勘違いして勝手に一緒になれないって思い込んでて、ひどいことしちゃった?
 でも、結局借金はそのままなんだよね。まだ問題は残ってる。

「でも、借金が……」
「それはウィルにまかしときゃそのうちどうにかなるだろ」
「どうにかって……?」
「それはウィルに聞け」
 ひどい。教えてくれたっていいのに。でもいくら辺境伯家といえど、そんな大金すぐ出せるわけないし何も返せない。
 それにお金の貸し借りはトラブルの元だ。日本では特にそうだったと思う。

 混乱しているわたしにマルクスは訪ねる。
「ところでお前、誰からその話聞いたんだ?」
 その言葉にわたしは固まる。そういえばヒロインちゃんにはデフォルトの名前があったはずだ。
 あれ?なんだっけ……
「ねぇ、同じクラスにいたピンクの髪に緑の目の女の子覚えてる?」
「んなやついたか?記憶にねぇな」
「あれ、いなかったっけ?王太子殿下と恋仲になってなかった……?」
 マルクスは顎に手を当てていて、どうやら考え込んでいるようだ。

「は?何言ってんだ。王太子殿下の婚約者はカトリーナ公爵令嬢だろ?」

 え……どうなってるの?

 混乱しているわたしをみて首を傾げるマルクス。
「なんだか面倒なことになってるな……」
 そう、カトリーナ公爵令嬢とはゲームの中の悪役令嬢。主人公をいじめて断罪されて追放されるはずだ。
 わたしは部分部分しか見れなくて、最後にどうなったかはわからないけれど確かにイベントをこなしていたのはヒロインちゃんのはず。
 あれ、記憶の中の王太子殿下と一緒にいる人の姿が真っ黒だ。

「とりあえず、お前の家に行こうぜ」
 マクルトと共にわたしは家へ戻った。





 部屋にはいると全く違和感なく彼がくつろいでいる。
 昨日のこともあって気まずくて、顔を見れない。それに今日は衝撃の事実を知ってしまったから余計だ。
 俯いているとおもむろに彼が立ち上がって、隣にいたマクルトの胸ぐらを掴み上げる。
 びっくりして固まっていると彼はじっとマクルトを睨みつけていた。
「お前、泣かせたな」
 胸ぐらを掴み上げられたマクルトは慌てて否定する。
「オレじゃないって、元はといえばお前だ」
 まだ疑っているような表情をしていたが、彼は手を離した。そのままソファへ座るよう促され、なぜかわたしは彼の隣に座らされる。
 どういう態度でいればいのかわからない。頭ん中ぐちゃぐちゃだ。


「で?わざわざお前まで来たんだ。何かあったんだろ?」
 わたしとマクルトは顔を見合わせた。クイっとマクルトにあごで合図され、わたしは観念した。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる

しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、 王弟殿下と出会いました。 なんでわたしがこんな目に…… R18 性的描写あり。※マークつけてます。 38話完結 2/25日で終わる予定になっております。 たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。 この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。 バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。 読んでいただきありがとうございます! 番外編5話 掲載開始 2/28

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?

うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。 濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

【完結】お父様(悪人顔・強面)似のウブな辺境伯令嬢は白い?結婚を望みます。

カヨワイさつき
恋愛
魔物討伐で功績を上げた男勝りの辺境伯の5女は、"子だねがない"とウワサがある王子と政略結婚結婚する事になってしまった。"3年間子ども出来なければ離縁出来る・白い結婚・夜の夫婦生活はダメ"と悪人顔で強面の父(愛妻家で子煩悩)と約束した。だが婚姻後、初夜で……。

コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。 彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。 そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。 幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。 そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

真面目な王子様と私の話

谷絵 ちぐり
恋愛
 婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。  小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。  真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。 ※Rシーンはあっさりです。 ※別サイトにも掲載しています。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...