6 / 25
6
しおりを挟む
「実は……」
わたしが学園にいた頃、ピンク髪の少女がいたこと。その少女から爵位のこともあって、結婚できないと思っていたこと。
でも、その少女のことはわたししか覚えていないこと。わたしの記憶とマクルトの記憶が違っていること。
とりあえずさっき話したことを伝えた。
「結婚の件は今夜ゆっくり話そうか」
ニヤリと笑う彼に背筋が凍る。え、今日もくるの……?
怖いという感情とちょっと嬉しいという感情がぐるぐるする。
「そのピンクの女は俺も知ってるし断片的だが記憶はある」
その言葉にハッと顔をあげる。
よかった……わたしの勘違いじゃなかった。
「ただ……今改めて思い返すと顔が思い出せない」
三人で考え込んでいたけど、全く答えは出なかった。
「学園にいた人に、聞いてみる……?」
「ああ、俺の予想が正しければおそらくその女の近くにいた人間しか覚えていないだろうからな」
「誰に聞いたらいいんだろう」
「それに関しては伝手があるから俺から探ってみるよ」
ひとまずここは彼に任せることにして一旦解散となった。
夜になり、鬱々とした気持ちで馬車を迎える。
ため息しか出ない。
お店について部屋に入り着替えをしにいく。
「あれ……」
昨日はワンピースだったのに今日は白のネグリジェだ。この世界ではこの姿は恥ずかしがる令嬢が殆どだが、日本での記憶があるからか特に抵抗はなかった。
むしろ動きやすくて好きだ。
着替え終わると仮面を持ってソファへ座る。しばらくして鈴が鳴った。急いで仮面をつけ、挨拶する。
「さっきぶりだね」
また彼だった。ここって高級娼館なんだよね……?そんなにお金持ってるのかしら。
彼は当たり前のように横に座る。
「さて、何から話そうか」
思ったよりも声色が優しくて思わず安心していたのに、いつの間にか彼に腕を引っ張られて向かい合って座らされる。
背中に支えがなくて、彼の腕もお尻のところに回っていて。
バランスが取れない。
「はい、俺の肩に腕回して」
わざとだ、絶対わざと!
背中に腕を回してくれたらわたしだってバランスが取れるのに。
でもいい加減後ろにひっくり返りそうだったから諦めて腕を回した。
「まずは爵位と結婚についてかな。問題です。俺と君の爵位はなんでしょう」
え? って思っているうちに後頭部に手を回され、なんだかどんどん彼に近づいてる気がする。
「っ、ウィルは辺境伯でわたしは子爵!」
慌てて答えた。ぴたりと手の動きが止まる。
「もうちょっと時間かけてくれてもよかったのに」
彼の声が近い。だいぶ近くまできた?
仮面は相手が見えないし、視界も狭い。全く状況が掴めない。
「じゃあ、第二問。王族と結婚できる爵位は?」
王族? 王族は……
考えているうちに唇が触れる。間に合わなかった……
「はい時間切れー。正解は、伯爵、侯爵、公爵、辺境伯だよ。爵位が低くても養子になれば結婚は可能だ」
ああ、そうなんだ。それは初めて知った。
「はい、第三問。貴族同士の結婚に爵位による縛りはあるか」
縛り……え、どうだったかな。でも公爵家とかはあまり下級貴族と結婚していなかったような……
「ある!」
「ハズレ。基本的に貴族であれば結婚できるんだよ。ただ、周りの目を気にして独自ルールを敷いている奴も多いが」
あ、そうなんだ。それは知らなかったな。
「はい、お仕置きだよ」
え? って思う暇もなく唇を奪われて、口内まで犯される。
「んんっ、ふぁ、んっ」
蠢く舌から逃げようとするけど逃げられない。捕まえられて吸い上げられる。
うまく呼吸できなくて、吐息が漏れる。
しばらく貪られ、なんだか唇が腫れた気がする。それにものすごい恥ずかしい。
「本当可愛い。食べちゃいたい」
なんだか怖い言葉が聞こえて、距離を取ろうとするも後頭部を抑えられてて動けなかった。
「さて、ここからが今日の本題かな」
今までのはなんだったのよ!思わず睨みつけたけど仮面をつけているから彼には効かなかった。
「ローズ?法律で俺と結婚できないって思ってたのか?」
こくりと頷く。だって現実的に考えて彼が爵位を放棄するしか結婚できる道はないって思ってたもの。結局嘘の知識だったけど。
「俺と結婚したかったのか?」
それに頷いたら好きだって認めてるようなものじゃない。頷きたくない。だってまだ借金だって残ってる。
結局は二日間彼にお金をもらってるけど……
「言わないと……」
「きゃっ、や、め」
耳朶をぺろりと舐められる。そのまま耳を嬲られる。舐められている音がダイレクトに聞こえてきて、むずむずする。
もうやだっ
「いう、いうから、やぁっ」
それでも彼の舌は止まらなくて。なんだかあそこが切なくなって足を閉じたくなってしまう。
けれど腰をぎゅっと引き寄せられてしまってそれもできない。
「け、結婚したかったのっ、あっ」
最後に耳たぶを食んで彼の攻撃は止んだ。
「じゃあ、結婚しようか」
わたしが学園にいた頃、ピンク髪の少女がいたこと。その少女から爵位のこともあって、結婚できないと思っていたこと。
でも、その少女のことはわたししか覚えていないこと。わたしの記憶とマクルトの記憶が違っていること。
とりあえずさっき話したことを伝えた。
「結婚の件は今夜ゆっくり話そうか」
ニヤリと笑う彼に背筋が凍る。え、今日もくるの……?
怖いという感情とちょっと嬉しいという感情がぐるぐるする。
「そのピンクの女は俺も知ってるし断片的だが記憶はある」
その言葉にハッと顔をあげる。
よかった……わたしの勘違いじゃなかった。
「ただ……今改めて思い返すと顔が思い出せない」
三人で考え込んでいたけど、全く答えは出なかった。
「学園にいた人に、聞いてみる……?」
「ああ、俺の予想が正しければおそらくその女の近くにいた人間しか覚えていないだろうからな」
「誰に聞いたらいいんだろう」
「それに関しては伝手があるから俺から探ってみるよ」
ひとまずここは彼に任せることにして一旦解散となった。
夜になり、鬱々とした気持ちで馬車を迎える。
ため息しか出ない。
お店について部屋に入り着替えをしにいく。
「あれ……」
昨日はワンピースだったのに今日は白のネグリジェだ。この世界ではこの姿は恥ずかしがる令嬢が殆どだが、日本での記憶があるからか特に抵抗はなかった。
むしろ動きやすくて好きだ。
着替え終わると仮面を持ってソファへ座る。しばらくして鈴が鳴った。急いで仮面をつけ、挨拶する。
「さっきぶりだね」
また彼だった。ここって高級娼館なんだよね……?そんなにお金持ってるのかしら。
彼は当たり前のように横に座る。
「さて、何から話そうか」
思ったよりも声色が優しくて思わず安心していたのに、いつの間にか彼に腕を引っ張られて向かい合って座らされる。
背中に支えがなくて、彼の腕もお尻のところに回っていて。
バランスが取れない。
「はい、俺の肩に腕回して」
わざとだ、絶対わざと!
背中に腕を回してくれたらわたしだってバランスが取れるのに。
でもいい加減後ろにひっくり返りそうだったから諦めて腕を回した。
「まずは爵位と結婚についてかな。問題です。俺と君の爵位はなんでしょう」
え? って思っているうちに後頭部に手を回され、なんだかどんどん彼に近づいてる気がする。
「っ、ウィルは辺境伯でわたしは子爵!」
慌てて答えた。ぴたりと手の動きが止まる。
「もうちょっと時間かけてくれてもよかったのに」
彼の声が近い。だいぶ近くまできた?
仮面は相手が見えないし、視界も狭い。全く状況が掴めない。
「じゃあ、第二問。王族と結婚できる爵位は?」
王族? 王族は……
考えているうちに唇が触れる。間に合わなかった……
「はい時間切れー。正解は、伯爵、侯爵、公爵、辺境伯だよ。爵位が低くても養子になれば結婚は可能だ」
ああ、そうなんだ。それは初めて知った。
「はい、第三問。貴族同士の結婚に爵位による縛りはあるか」
縛り……え、どうだったかな。でも公爵家とかはあまり下級貴族と結婚していなかったような……
「ある!」
「ハズレ。基本的に貴族であれば結婚できるんだよ。ただ、周りの目を気にして独自ルールを敷いている奴も多いが」
あ、そうなんだ。それは知らなかったな。
「はい、お仕置きだよ」
え? って思う暇もなく唇を奪われて、口内まで犯される。
「んんっ、ふぁ、んっ」
蠢く舌から逃げようとするけど逃げられない。捕まえられて吸い上げられる。
うまく呼吸できなくて、吐息が漏れる。
しばらく貪られ、なんだか唇が腫れた気がする。それにものすごい恥ずかしい。
「本当可愛い。食べちゃいたい」
なんだか怖い言葉が聞こえて、距離を取ろうとするも後頭部を抑えられてて動けなかった。
「さて、ここからが今日の本題かな」
今までのはなんだったのよ!思わず睨みつけたけど仮面をつけているから彼には効かなかった。
「ローズ?法律で俺と結婚できないって思ってたのか?」
こくりと頷く。だって現実的に考えて彼が爵位を放棄するしか結婚できる道はないって思ってたもの。結局嘘の知識だったけど。
「俺と結婚したかったのか?」
それに頷いたら好きだって認めてるようなものじゃない。頷きたくない。だってまだ借金だって残ってる。
結局は二日間彼にお金をもらってるけど……
「言わないと……」
「きゃっ、や、め」
耳朶をぺろりと舐められる。そのまま耳を嬲られる。舐められている音がダイレクトに聞こえてきて、むずむずする。
もうやだっ
「いう、いうから、やぁっ」
それでも彼の舌は止まらなくて。なんだかあそこが切なくなって足を閉じたくなってしまう。
けれど腰をぎゅっと引き寄せられてしまってそれもできない。
「け、結婚したかったのっ、あっ」
最後に耳たぶを食んで彼の攻撃は止んだ。
「じゃあ、結婚しようか」
45
あなたにおすすめの小説
山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる
しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは
ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、
王弟殿下と出会いました。
なんでわたしがこんな目に……
R18 性的描写あり。※マークつけてます。
38話完結
2/25日で終わる予定になっております。
たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。
この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。
バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
読んでいただきありがとうございます!
番外編5話 掲載開始 2/28
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?
うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。
濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!
【完結】お父様(悪人顔・強面)似のウブな辺境伯令嬢は白い?結婚を望みます。
カヨワイさつき
恋愛
魔物討伐で功績を上げた男勝りの辺境伯の5女は、"子だねがない"とウワサがある王子と政略結婚結婚する事になってしまった。"3年間子ども出来なければ離縁出来る・白い結婚・夜の夫婦生活はダメ"と悪人顔で強面の父(愛妻家で子煩悩)と約束した。だが婚姻後、初夜で……。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる