設定めちゃくちゃな乙女ゲームのモブに転生したら、何故か王子殿下に迫られてるんですけどぉ⁈〜なんでつがい制度なんてつくったのぉ

しおの

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本編

2.お店に行ったのが間違いでした

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 わたしは非常に困っていた。そう、迷ってしまったのだ。だってゲームならショップボタンでひとっ飛びなんだもの……
 平民街にあるのはわかっていたんだけれど、どうにも細かい場所がわからない……
 うろうろしていたけれどついには疲れてしまって、わたしは近くのベンチに座り込んでいた。
「はぁ……」
 まずいなぁ。薬見つからなかったらどうしよう。途方に暮れていたその時、ふと顔を上げると見覚えのある建物。
 ショップだっ!
 嬉々として店に入る。中には店員が一人いて、目的のものを購入できた。ウキウキすぎて店員が何か言っていたけれど、きっとゲームの中のものと同じだろうと思い、そのまま店を後にした。
 店を出て場所を覚えておこうと振り返ったけれど、そこには何もなくて。
 あれ……
 首を傾げていたけれど、ゲーム特有のご都合主義というやつかなと思って、何も気にしていなかった。

 とことこと道を歩く。太陽の位置から多分こっちだと思うんだけど……
 なんだか物騒な道だ。人気がなくて暗い。なんだか怖くなって思わず小走りで進んでいくと誰かとぶつかってしまった。
「きゃっ」
 そこにはなんと恐ろしいことにお忍び中の第二王子、シエル・マーガスト様がいた。髪色を変えて服装も庶民のものを着ているけど、間違いない。
 やばいやばいやばい。この人攻略対象だ……
「君は……」
 逃げるが勝ち!
「も、申し訳ありませんでしたーっ!」
 令嬢らしからぬダッシュで走り抜け、無事に家に戻ってくることができた。
 危ない……
 でも目的は達成できたし、もうこれ以上外に出る必要はない。ということで学園入学まで引きこもろう。



 そう決めたわたしは、徹底的に対策をしようと画策した。
 元々顔立ちは地味な方だし、さらに影を薄くするために薄めの化粧をしてもらうように侍女のローラにも頼んである。髪も結い上げず下ろしてもらう予定だ。
 さらには、そばかすをわざと描いてもらった。これで地味で目立たない令嬢の完成だ。
 後は学園入学前日あたりに薬を飲んだら……
 完璧だ。

 一人でにやにやするわたしを怪訝な目でローラが見ているけれど、素知らぬふりをする。これにはわたしのこれからの人生が掛かっているのだから、誰にも邪魔させない。
 こうしてわたし、ルシアの学園生活は始まったのだった。





 緑が青々としげる門をくぐり。ついにわたしは物語の舞台となった学園へ入学するのだった。
「まずは入学式か」
 ゲームのメモをした手帳を手に、他の生徒の波に乗って入学式の会場となる会場へ向かう。
 一人一人席が決まっているようで、入口の教師に名前を告げて席を確認するとなぜか最前列のど真ん中。
 なんでこんな前なのよっ。
 わたしは心の中で文句を言いながら、席へ向かった。その隣はなぜか空席。もう片方の隣には、プラチナブロンドの髪を靡かせた美女が座っている。
 あ、もしかして、もしかする……?
 わたしに気づいた隣の美女が微笑む。
「あなた見ない顔ね。わたくし、ノーラ・ホルストと申します。あなたは?」
 この世界、爵位関係なく結婚はできるが、基本的なマナーは存在する。挨拶は目下のものから声をかけてはいけない。目上のものから声をかけられて初めて挨拶することができる。
 つまり、わたしは彼女に挨拶をしなければいけないわけで……
「わ、わたしはアルノルド子爵家長女のルシア・アルノルドと申します……」
「そう、よろしくね」
 にっこりと優しげな笑みを浮かべる彼女、何を隠そうゲームの中の悪役令嬢なのだ。彼女自身は紋様を持たず、つがいを探しているわけでもないごくごく普通の御令嬢。
 そんな彼女が好きなのはゲームの中の攻略対象の誰か。ヒロインが誰を選ぶかによって好きな人が変わる当て馬的存在だった。
 なるほど。こんなところで彼女とお知り合いになるのね……
 そんなことを考えていると隣に誰かが来る気配がする。あまりジロジロ見てもよくないと思ったわたしはこっそりと隣の席の主を盗み見た。
 が、すぐに後悔することとなる。
 綺麗な金色の髪にわたしと同じ緑の目。こないだ見た彼とそっくりだ。
 ばっちり目があってしまい、慌ててそらす。
 ぎゃーっ。
 なんでいるのよっ、しかもわたしの隣にっ。この席順決めたの誰……?
 普通に考えて第二王子の隣なんて爵位の高いものを配置すべきじゃないっ。ノーラ様と席を間違えた……?
 思わず隣のローラ様に確認してしまう。
「あ、あのっ。わたし、席、間違えました……?」
「いいえ?あっているわよ」
 にこにこしながら話す彼女。うっ、このままなのか。
 いやでも、きっとここだけ、ここだけよね……?
 確かクラスの席は自由席だったはずだし、こっちから近づかなければ問題ないわよね……?
 顎に手を当て考え込んでいると、ふと隣から声が聞こえた。
「ねぇ君、名前は?」
 ああぁぁぁ、流石に王子殿下の言葉は無視できない……
 諦めよう……
「ルシア・アルノルドと申します……」
 ちらりと彼の様子を伺うと悪魔のような笑みを浮かべていて、わたしは咄嗟に目を逸らす。くすくすと笑う声が聞こえたが、無視だ無視。平和なスローライフのために我慢だ。
「そう、これからよろしくね。ルシア」
 呼び捨てっ、いきなり呼び捨てっ!
 これはどんな状況なの……誰か教えてぇぇぇっ
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