設定めちゃくちゃな乙女ゲームのモブに転生したら、何故か王子殿下に迫られてるんですけどぉ⁈〜なんでつがい制度なんてつくったのぉ

しおの

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本編

15.練習っ

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 その後数日、練習を続けたけど一向に上手くならなくて、試しにマルド様と踊ってみたらすんなり踊れてしまった。それを見たシエル様は大層お怒りの様子で。終始黒ーい空気を纏いながら練習することになった……
 そんなある日ノーラ様の一言により、とんでもないことになる……
「んー、シエル様を意識しすぎて緊張してるのかしら……」
 ポツリとつぶやいたその言葉はそばにいたわたしですらはっきりと聞き取ることが難しかったのに、それより離れていたシエル様にはなぜかバッチリ聞こえていたみたいで。
 わたしは彼に連れられて、入学式の後に一度だけ行った執務室へと連れて行かれた。
 い、一体何を……
 戸惑うわたし。彼はソファに座り、両腕を広げている。これは、何を求めているのだろうか。近づけずにいるわたしに痺れを切らしたのか彼はわたしの腕を取り、自分の上に座らせる。
 後ろから抱きしめられるような形で座らされ、さらに困惑する。
「え、あの、シエル様……?」
「要は、僕に触られることに慣れればいいんでしょう?」
 弾むような声色でわたしをぎゅーぎゅー抱きしめる。いやこれ、付き合ってるラブラブな恋人同士でやるもんじゃないのっ?
 意味のわからない理屈に言い返そうと思ったけど、余計ひどくなっても困るので、大人しくすることにした。この日から数日、これが続き、無駄に順応性の高いわたしは慣れてしまった……



 再びダンスルームへ戻り、練習する。このあいだとは全然違って、スムーズに踊れていた。足の踏む回数も減っていき、とうとう完璧に踊れるようになったのだった。
「一体なんの練習をしたんだい?」
 マルド様に問われたが、答えられなかった。シエル様もシエル様で「秘密」っていってたから内緒にしてくれるらしい。よかった…… あれが知られたら、わたしお嫁にいけないっ。
「別に困らないだろう。僕と結婚したらいい」
 げっ。心を読まれていたようだ……
 黒い影が渦巻いている。もう怖い。
「はい、ごめんなさい」
 素直に謝っておくことにする。
 こうしてわたしのダンスの特訓は幕を閉じた。




 今日はノーラ様が射撃の練習をするらしい。シエル様とマルド様と共に射撃場へ向かった。専用の防具をつけて綺麗な姿勢で弓を弾くノーラ様。お美しい……
 汗もかかず次々的に当てていく。ほとんどの矢が真ん中に当たっていた。思わず見惚れているとノーラ様が帰ってきた。繋がれていた手はノーラ様に変わっていて。どうやらシエル様も練習するようだ。
 相変わらず体幹がしっかりしているのかブレのない姿勢で矢を射っていく。全て真ん中に当たり、最後の矢に至っては前に打った矢を裂いて同じところに刺さっていた。
 う、うますぎて怖いわ……
 額についていた汗を拭いながらこちらに来るその様は色気むんむんだ。ちょっとどきりとしたのは秘密。


 次の日はマルド様が乗馬の練習をするのだという。流石に幼い頃から嗜んでいるだけあって上手だった。
 その後何故か成り行きで乗馬体験させられた。わたしはシエル様に支えられて横向きで乗っている。見ている分には楽しそうだなぁなんて呑気だったけど、いざ乗ってみると高いっ。プルプル震えるわたしに彼はおかしそうに笑っていた。
 落ちるんじゃないかって怖くてひたすら彼にしがみついていた。彼はとろけた目をこちらに向けてそれはそれは楽しそうに「もっとぎゅってしていいんだよ」なんて蜂蜜のように甘い声で言ってくるもんだから、ドキドキしてしまって顔が赤くなっていた。
 その顔を隠すようにさらにしがみつくという悪循環を繰り返し、周辺にいたご令嬢は一人残らず運ばれていった……
 ごめんなさい。
 そんな私たちの様子を生暖かい目でノーラ様とマルド様は見つめていた。




 なんだか最近おかしい。いや、シエル様は誰が見ても超絶美形の王子様で、人当たりもいい……と思う。そりゃ世の女性たちは一瞬で恋に落ちるだろう。
 けれどわたしは今までたまにどきりとすることはあっても、頬を染めるなんて経験したことはなくて。それにだんだんドキドキする時間が伸びている気がする……
 え、まさか。まさか……ね。
 きっと近くに居すぎて麻痺してるだけ、だよね。きっと、そう、だよね……

 胸の高まりと共に頭が痛み出す。なんだかよくわからなくなってくるのだ。
 一体、どうなっているんだろうか。
 この気持ちは、いけないものなのだろうか。
 そうなら、この気持ちは封印しなければいけない。
 そうしなければ……


 
 『あの子は、好きな人と結ばれないっていってたもの。』
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