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本編
16.体育祭っ
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体育祭当日。女生徒たちは艶めき立っていた。この体育祭、全学年対象で行われるのだ。順位は点数によって変わり、学年ごとの順位と総合順位で競うというルールになっている。
みんなは優勝目指すぞーって張り切っていたけど、わたしはそれどころではない。ガタガタ震えながら一生懸命ステップを思い出していた。
第一種目は乗馬だった。乗馬にはマルド様が参加される。わたしはシエル様と手を繋いでノーラ様と共に観戦席へ向かっていった。
周囲は黄色い声で溢れている。どの人に向けたものなのかは全くわからないけれど。そんな中私たちに気づいたマルド様はこちらに手を振った。慌てて振り返すと黄色い声がひたすら大きくなる。
おお、さすが公爵家嫡男だ。人気なのも頷ける。
学年順で行われるようで一年は最初だった。乗馬をしながらの障害物走だったみたいで、マルド様は周りを寄せ付けない勢いでゴールし、一位をとった。
何度かレースを繰り返し、最後は各学年の優勝者同士の争いとなる。これは総合優勝に関わってきて、このレースの点数が加点される仕組みらしい。
しかし相手は上級生だ。大丈夫かな……って思いながらレースを見守っていると、見事に一位をもぎ取っていった。
すごい。全然余裕そうだ……
多分これでさらにファンの子が増えるだろうな、なんて呑気に考えていた。
次は剣術だ。これはシエル様が参加されるらしい。わたしはノーラ様と手を繋いで観戦席へ向かう。
さすがというべきか、王子殿下は危なげもなく学年優勝していた。まぁ、王子殿下に剣を向けるなんて恐れ多いわよね……
そのまま学年優勝者の対決となる。なんと相手はルドルフ様。確か騎士の家系で幼いころから鍛えられているといってた。シエル様も彼に当たったら負けるといっていたなぁ。
ぼんやり眺めているうちに勝負がつき、優勝は二年生だった。
戻ってきたシエル様はちょっと悔しそうだったけど、頭を撫でて「お疲れ様」っていったらすぐ機嫌がなおっていた。ちなみにこれはノーラ様からリクエストされたので答えてみたのだ。
案の定効果抜群のようで、すっかり機嫌が治っていた。
次は射的だ。これはノーラ様とシエル様が参加する。わたしはシエル様の言いつけでマルド様と手を繋いでいる。
初めて繋ぐからちょっとドキドキしてしまって顔が赤くなる。普通にマルド様もイケメンなのだ。
「あれ、照れてる?ルシアちゃんかわいいねぇ」
手を繋いでない方の手で頭を撫でられてドキドキする。いや、これは世の女子みんながこうなるのだっ。不可抗力。
そんなことを思いながら会場に目を向けるとドス黒い空気を纏ったシエル様が……
ひぇぇっ。こ、これ、やばい?
焦っているわたしをみておかしそうに笑うマルド様。こそっとあることを耳打ちされてさらに顔が赤くなる。
――バギィィィッ
ものすごい音がして発生源を見るとシエル様の的が真っ二つに割れていた……
ああ、これ終わった……
そんなこんなでなんとか試合は終わった。男子、女子共に学年優勝して、男子は総合一位だった……
戻ってきたシエル様はそれはそれは恐ろしい顔で、頭にツノでも生えてそうな雰囲気で。マルド様とノーラ様は素早く避難していた。
「ルシア……僕の居ない間に随分楽しそうなことをしていたね?」
「ひぇぇぇっ」
プルプル震えるわたしは奇声を発するので精一杯だ。ど、どうしよう……
「僕よりマルドの方がいいとか、言わないよね……?」
もう、その視線で人殺せそうですけどっ⁈
てか周りの生徒男女問わず失神してないですかー⁈
あわあわしているわたしにさらに迫ってくるシエル様。もう壁ドン状態だ。
ふとマルド様の言葉を思い出し、実行する。
背伸びして彼の頬に手を添えて、わたしの唇は彼の頬へ届いていた。
一瞬にしてあの恐ろしい空気が消え失せ、セシル様は固まっている。成功した……?
恐るおそる彼の顔を見ると心臓に悪いくらい蕩けきった顔。ドキドキと胸が高まると同時に痛む頭。だんだんと痛みの方が勝っていき、すっと気持ちが落ち着いてしまった。
「ああ、もう。可愛すぎるっ」
ぎゅっとそのまま抱きしめられた。
どうやら落ち着いたみたいだ。よかった……
『ダンスに参加される生徒は、待機場所までお越しください』
アナウンスに二人してハッとして、手を繋いで待機所へ向かった。
なんだかだいぶ参加者が少ない気がする。例年ならほぼ全ての生徒がこれに参加するのに……
「シエルがやらかしたからねぇ。みんな保健室だよ」
マルト様がおかしそうに笑いながら答えてくれた。なるほど、そういえばかなりの人数が運ばれていったような気がする……
流れ始めた音楽に乗ってみんな踊り始めた。このダンスは特に順位等はなく、ペアごとに先生たちが採点していく。その点数がそのままクラス得点に加点されるらしい。
私たちのクラスはシエル様のあの黒いものに耐性ができていたのかほぼ全員参加していた。おお、日頃の訓練? の賜物なのかしら……なんて考えていたら、体育祭の終わりが告げられた。
私たちのクラスは学年優勝と総合優勝を果たした。どうやらルシル様やノーラ様、マルド様の活躍はもちろんのこと、ダンスの参加者が多くて加点が高かったのもあるみたい。
こうして恐怖の体育祭は幕を閉じた。
みんなは優勝目指すぞーって張り切っていたけど、わたしはそれどころではない。ガタガタ震えながら一生懸命ステップを思い出していた。
第一種目は乗馬だった。乗馬にはマルド様が参加される。わたしはシエル様と手を繋いでノーラ様と共に観戦席へ向かっていった。
周囲は黄色い声で溢れている。どの人に向けたものなのかは全くわからないけれど。そんな中私たちに気づいたマルド様はこちらに手を振った。慌てて振り返すと黄色い声がひたすら大きくなる。
おお、さすが公爵家嫡男だ。人気なのも頷ける。
学年順で行われるようで一年は最初だった。乗馬をしながらの障害物走だったみたいで、マルド様は周りを寄せ付けない勢いでゴールし、一位をとった。
何度かレースを繰り返し、最後は各学年の優勝者同士の争いとなる。これは総合優勝に関わってきて、このレースの点数が加点される仕組みらしい。
しかし相手は上級生だ。大丈夫かな……って思いながらレースを見守っていると、見事に一位をもぎ取っていった。
すごい。全然余裕そうだ……
多分これでさらにファンの子が増えるだろうな、なんて呑気に考えていた。
次は剣術だ。これはシエル様が参加されるらしい。わたしはノーラ様と手を繋いで観戦席へ向かう。
さすがというべきか、王子殿下は危なげもなく学年優勝していた。まぁ、王子殿下に剣を向けるなんて恐れ多いわよね……
そのまま学年優勝者の対決となる。なんと相手はルドルフ様。確か騎士の家系で幼いころから鍛えられているといってた。シエル様も彼に当たったら負けるといっていたなぁ。
ぼんやり眺めているうちに勝負がつき、優勝は二年生だった。
戻ってきたシエル様はちょっと悔しそうだったけど、頭を撫でて「お疲れ様」っていったらすぐ機嫌がなおっていた。ちなみにこれはノーラ様からリクエストされたので答えてみたのだ。
案の定効果抜群のようで、すっかり機嫌が治っていた。
次は射的だ。これはノーラ様とシエル様が参加する。わたしはシエル様の言いつけでマルド様と手を繋いでいる。
初めて繋ぐからちょっとドキドキしてしまって顔が赤くなる。普通にマルド様もイケメンなのだ。
「あれ、照れてる?ルシアちゃんかわいいねぇ」
手を繋いでない方の手で頭を撫でられてドキドキする。いや、これは世の女子みんながこうなるのだっ。不可抗力。
そんなことを思いながら会場に目を向けるとドス黒い空気を纏ったシエル様が……
ひぇぇっ。こ、これ、やばい?
焦っているわたしをみておかしそうに笑うマルド様。こそっとあることを耳打ちされてさらに顔が赤くなる。
――バギィィィッ
ものすごい音がして発生源を見るとシエル様の的が真っ二つに割れていた……
ああ、これ終わった……
そんなこんなでなんとか試合は終わった。男子、女子共に学年優勝して、男子は総合一位だった……
戻ってきたシエル様はそれはそれは恐ろしい顔で、頭にツノでも生えてそうな雰囲気で。マルド様とノーラ様は素早く避難していた。
「ルシア……僕の居ない間に随分楽しそうなことをしていたね?」
「ひぇぇぇっ」
プルプル震えるわたしは奇声を発するので精一杯だ。ど、どうしよう……
「僕よりマルドの方がいいとか、言わないよね……?」
もう、その視線で人殺せそうですけどっ⁈
てか周りの生徒男女問わず失神してないですかー⁈
あわあわしているわたしにさらに迫ってくるシエル様。もう壁ドン状態だ。
ふとマルド様の言葉を思い出し、実行する。
背伸びして彼の頬に手を添えて、わたしの唇は彼の頬へ届いていた。
一瞬にしてあの恐ろしい空気が消え失せ、セシル様は固まっている。成功した……?
恐るおそる彼の顔を見ると心臓に悪いくらい蕩けきった顔。ドキドキと胸が高まると同時に痛む頭。だんだんと痛みの方が勝っていき、すっと気持ちが落ち着いてしまった。
「ああ、もう。可愛すぎるっ」
ぎゅっとそのまま抱きしめられた。
どうやら落ち着いたみたいだ。よかった……
『ダンスに参加される生徒は、待機場所までお越しください』
アナウンスに二人してハッとして、手を繋いで待機所へ向かった。
なんだかだいぶ参加者が少ない気がする。例年ならほぼ全ての生徒がこれに参加するのに……
「シエルがやらかしたからねぇ。みんな保健室だよ」
マルト様がおかしそうに笑いながら答えてくれた。なるほど、そういえばかなりの人数が運ばれていったような気がする……
流れ始めた音楽に乗ってみんな踊り始めた。このダンスは特に順位等はなく、ペアごとに先生たちが採点していく。その点数がそのままクラス得点に加点されるらしい。
私たちのクラスはシエル様のあの黒いものに耐性ができていたのかほぼ全員参加していた。おお、日頃の訓練? の賜物なのかしら……なんて考えていたら、体育祭の終わりが告げられた。
私たちのクラスは学年優勝と総合優勝を果たした。どうやらルシル様やノーラ様、マルド様の活躍はもちろんのこと、ダンスの参加者が多くて加点が高かったのもあるみたい。
こうして恐怖の体育祭は幕を閉じた。
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