吸血鬼なご主人様の侍女になりました。

しおの

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 午後は散策だった。みんなグループごとに固まって歩いている。わたし達はというと、レオン様とミーシャ様、ミーシャ様に手を繋がれるわたし。その後ろをミーシャ様に腕を掴まれたクロウ様。
 さっき吐き出したおかげか少しは良くなった。それからミーシャ様は、わたしに色々教えてくれた。小さい頃の三人の話。それと、クロウ様が国にとってとても大切な仕事をしていること。普段一緒にいることが多いから気づかなかった。クロウ様の家系は代々吸血鬼が生まれる家系で、それは貴族間では周知の事実なんだとか。
 そして吸血鬼は人間と違って能力値が高い。だから色々な分野で活躍しているんだって。王家でも重宝しているみたい。
 それから幼い頃から年が近かったこともあって、よく遊んでたみたい。ある歳になってからクロウ様はパタリと来なくなったって苦笑してたけど。お仕事忙しくなったのかなって思ってたけど、どうやら違うみたい。


「クロウ様ぁ、あっち行ってみましょうよぉ」
「行かない」
「そんなこと言わずにぃ。きゃっ」
 え?
 背中から誰かに押された気がして、それでいてわたしの目に飛び込んできたのは崖で、そのままわたしは落ちてしまった。
 落ちてる時、誰かに抱きしめられた気がしたけど、きっと気のせい。
 あー、わたし、死んだ……?
 そう思うと同時にわたしは意識を失ってしまった。




 寒い、冷たい、あったかい。
 なんだろう。なんか変。
 これ、天国……?
「アメリア? 大丈夫……?」
「あれ、クロウ様の声がする。気のせい……?」
 ぎゅっと抱きしめられた気がする。あったかい……
「気のせいじゃないよ。起きて」
 彼の声にハッと目が覚める。
 え、一緒に落ちてきちゃった……?
「俺、吸血鬼だから。ちょっと間に合わなくて川に落ちちゃったけど。迎えがくるまでどうしようか……寒いよね?」
 吸血鬼って、身体能力高いんだっけ。あの崖から落ちてもどこも痛くない……
 クロウ様、怪我してない……?
「俺は大丈夫だよ。とりあえず、アメリアは服ぬいで」
「え……?」
「着たままだと風邪ひくよ」
「でも……」
 そうこう言っているうちにあっという間に彼に脱がされてしまう。それから彼の服を着せられた。
 だいぶ大きいけど、さっきよりあったかい……
 クロウ様は寒くないの?って聞いたけど、「人より丈夫だから大丈夫」って言ってた。
 しばらく二人で身を寄せ合う。服を着替えたとはいえ、寒い。
 その時、ようやく救援が来たみたい。クロウ様に馬に乗せられ、一緒に合宿所まで戻った。


 
 ミーシャ様にすぐにお風呂に連れて行かれて、あたたまる。
 どうやら本当は野外で夕食だったみたいだけど、部屋にいていいみたい。
 しばらくするとクロウ様が迎えに来てくれて、そのまま彼の部屋へ向かう。
 あれ、生徒はみんな個室じゃ……ってクロウ様に言ったら「俺は事情が事情だからアメリアと二人部屋」って言われた。そうなんだ……お風呂はどうやら流石にってことでミーシャ様のところを借りるようになってたらしい。
「怖かったね。大丈夫……?」
「あ、はい。怪我もないし、大丈……くしゅん」
「風邪ひいたかな……薬頼んでおくよ」
 その後、食事を届けてくれたレオン様にクロウ様が薬を頼んでいた。忘れてるかもしれないけれど、彼は王太子殿下なんだけど……こんな雑用で使っていいのかな。
 ぷるぷる震えてくる。彼は手ずからご飯を食べさせてくれて、その後はベッドに横抱きで運んでくれた。
 うう……なんか体が熱い。ぼーっとする。けど、クロウ様のご飯……
「クロウ様、食事……」
「いいから。食事用のタブレットもあるからちゃんと休んで」
 え、タブレットというものがあるの……?飲まなくてもいいの……?
 って思ったけど、ぼんやりしてしまって、そのまま眠ってしまった。



 翌朝、目が覚めたけど、体が重い。それにまだ熱がある気がする。
 隣にはクロウ様が眠っていた。あれ、そういえば寝ているところを見るの初めてかも……
 彼の寝顔をじっと眺める。なんだかいつもは見れないから新鮮だ。
「んっ、あれ、アメリア……?起きてたの」
 うっ、なんだか寝起きのクロウ様なんというか、色っぽい……
 なんてことを考えてるのわたしっ。きっと、きっと熱のせい……
「ご飯はレオン達に頼んだから、くるまで寝てていいよ」
 瞼を撫でられ、心地よくなってまた眠った。



「クロウ、ご飯持ってきた。アメリア嬢は大丈夫か?」
「アメリア、大丈夫?」
 さっきよりも調子が良くなって、一人で起き上がれるまでになった。二人を笑顔で出迎えて、ちょっとだけお話しした。合宿の日程はお昼で終わりみたい。わたしは良くなるまで休んでていいって。看病をするためにクロウ様もお休みみたいだけど。
 ご飯を食べた後、再びベッドに戻されて一緒にまた眠った。



 その後は他のみんなと時間をずらして、ちょっと豪華な馬車に揺られて、学園へ戻ったのだった。
 
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