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いつもよりちょっと大きめな鞄を持って学園へ登校した。今日は合宿だ。
この合宿の目的は自然に触れること、みたい。それからクラスの親睦を深めるためでもあり、全学年で行われるみたい。
ガタガタと音を鳴らしながら走る馬車の中、わたしの隣にはクロウ様、クロウ様の隣にはシャルル様。馬車の中ではずっとシャルル様がクロウ様に話しかけていて、それをレオン様とミーシャ様が困惑した様子で眺めていて、そしてわたしは窓から外をずっと眺めていた。
「わぁ、本当に森の中ですねっ。わたしのところもこんな感じだったから少し懐かしいですっ」
ずっとクロウ様の腕に抱きついているシャルル様。そんなシャルル様を無視しているクロウ様。
わたしは思わずため息をついてしまった。
そんなわたしを心配してミーシャ様は声をかけてくれる。
けれどわたしの耳にはその言葉はあまり届かなくて、ぼーっとしてしまって、そんなわたしの頭をレオン様は撫でてくれてた。
午前中は風景画を描く授業みたい。それぞれ好きな場所の風景を紙に描くようで、みんなそれぞれの場所に向かう。一人で書いてる人や友人と一緒の場所で書く人。
わたしはどこで描こうかな……
ふらふら歩いていると腕をクロウ様に掴まれる。
「どこへいくの」
「どこって、場所を探そうかなって……」
「一緒に行くから一人で行かないで」
さっきまで、シャルル様と一緒にいたのに、どうして? 二人でいたからわたしは一人でどこか見つけようと思ったのに……
あ、三つ葉……
思わず足を止めた。ここがいい。
座り込んでキャンパスを広げる。その隣にクロウ様も座り込んで描き始めた。
そこへ足音が近づいてくる。
「あーっ、こんなところにいたっ。急にいなくなって探したんだよー?私もここで描くー!」
ああ、また彼女……
一気に気持ちが暗くなる。すくっと立ち上がったわたしの手をクロウ様が握って、「どこいくの」って言ってたけど、わたしは頑張ってにこりと微笑んで「静かなところ」って言ったら彼は手を離してくれた。
またふらふら歩いているとレオン様とミーシャ様がいて、誘ってくれたのでそこで描くことにした。
時々楽しく話ながら描くのは楽しい。静かとかうるさいとかじゃなくて誰がそばにいるかでこんなに変わってくるんだなって思っていた。
「アメリア? どうしてクロウのそばを離れたの?」
「……ちょっと騒がしくなったから……」
「そう……」
ミーシャ様はそれ以上何も言わなくて、その気遣いが今は嬉しかった。
昼食になったら流石にくるだろうと思っていたけど、クロウ様は来なくて、レオン様とミーシャ様と一緒にご飯を食べた。
昼食を終えて談笑していると、なんだか怖い顔したクロウ様が近づいてくる。レオン様とミーシャ様は顔が青ざめていて、わたしのそばからパッと離れる。
え、なんで離れるの……?
クロウ様はわたしの腕を掴んでどこかに向かっている。いつもの優しげな感じはなくて、なんだか怖い。怒ってる……?
どこかの部屋へ連れ込まれて、鍵までかけてた。
え、わたし、閉じ込められてる……?
そのままそばにあったベッドへ連れ込まれる。
「アメリア。なんで? なんで俺のそばを離れるの」
怖い顔をしたままわたしを見つめるクロウ様。わたし……何かって思ったけど心当たりがあるから何もいえない……
黙り込むわたしに顔を徐々に近づけるクロウ様。ち、近いですっ。
「なんで? 何が嫌だったの」
なんで、なんでだろう。本当は、わかってる。シャルル様と一緒にいるクロウ様をみたくなかったから。胸が痛くなってくるから。嫌だなって思ってしまうから。わたしの心が醜いと思ってしまったから。
なんだかわからないけど目に涙が溜まってきているのがわかる。泣いちゃダメ。泣いたって、何も解決しない……
「言わないとわかんないよ、アメリア。ちゃんと俺の目を見て言って」
横向きに向かい合わせで寝そべって、クロウ様の両手で頬を固定されていて、勝手に彼の目を見つめてしまう。
こんな気持ち、言いたくない。嫌って思ったなんて知られたくないのに……
吸い込まれそうな彼の瞳に見つめられると、言葉が出てきてしまう。
「……いや、だったの」
「何が嫌だったの?」
「……あのこと一緒にいるのが。あのこにわたしの心地いい場所を、奪われるのが……」
「そう。いやだった? そんなに泣きたくなるくらい」
もう吐き出してしまってからはとめどなく流れる涙が止まる気配はない。クロウ様は人差し指でそれを拭ってくれて。
「アメリア。それは嫉妬というんだよ。嫉妬はね、大好きな人にしかしないんだよ」
大好き……? 嫉妬……
そう、なのかな。好き……
でも、レオン様もミーシャ様も好きだけど二人仲良くしてても何も思わない。むしろ嬉しい。
何が違うの……?
「ふふっ。ねぇ、アメリア。ご飯ちょうだい」
じゅっと啜る音がする。最近この音にもドキドキする。なんだか変。
「アメリア。俺とレオン達とじゃ、違うでしょう? 何が違うかわかる?」
何が、何が違う? でも何かが違う……
なんだろう……
――レオンじゃドキドキしないでしょう? こんなに泣いたりしないでしょう? 何が違う? 同じ好き? 違う好き?
違う、レオン様とクロウ様じゃ何かが違う。二人とも好きだけど、同じじゃない……
「そう。レオンと俺じゃ違うんだね。ふふ。あと、少しだね」
そのまま意識が遠のいて、眠ってしまった。
この合宿の目的は自然に触れること、みたい。それからクラスの親睦を深めるためでもあり、全学年で行われるみたい。
ガタガタと音を鳴らしながら走る馬車の中、わたしの隣にはクロウ様、クロウ様の隣にはシャルル様。馬車の中ではずっとシャルル様がクロウ様に話しかけていて、それをレオン様とミーシャ様が困惑した様子で眺めていて、そしてわたしは窓から外をずっと眺めていた。
「わぁ、本当に森の中ですねっ。わたしのところもこんな感じだったから少し懐かしいですっ」
ずっとクロウ様の腕に抱きついているシャルル様。そんなシャルル様を無視しているクロウ様。
わたしは思わずため息をついてしまった。
そんなわたしを心配してミーシャ様は声をかけてくれる。
けれどわたしの耳にはその言葉はあまり届かなくて、ぼーっとしてしまって、そんなわたしの頭をレオン様は撫でてくれてた。
午前中は風景画を描く授業みたい。それぞれ好きな場所の風景を紙に描くようで、みんなそれぞれの場所に向かう。一人で書いてる人や友人と一緒の場所で書く人。
わたしはどこで描こうかな……
ふらふら歩いていると腕をクロウ様に掴まれる。
「どこへいくの」
「どこって、場所を探そうかなって……」
「一緒に行くから一人で行かないで」
さっきまで、シャルル様と一緒にいたのに、どうして? 二人でいたからわたしは一人でどこか見つけようと思ったのに……
あ、三つ葉……
思わず足を止めた。ここがいい。
座り込んでキャンパスを広げる。その隣にクロウ様も座り込んで描き始めた。
そこへ足音が近づいてくる。
「あーっ、こんなところにいたっ。急にいなくなって探したんだよー?私もここで描くー!」
ああ、また彼女……
一気に気持ちが暗くなる。すくっと立ち上がったわたしの手をクロウ様が握って、「どこいくの」って言ってたけど、わたしは頑張ってにこりと微笑んで「静かなところ」って言ったら彼は手を離してくれた。
またふらふら歩いているとレオン様とミーシャ様がいて、誘ってくれたのでそこで描くことにした。
時々楽しく話ながら描くのは楽しい。静かとかうるさいとかじゃなくて誰がそばにいるかでこんなに変わってくるんだなって思っていた。
「アメリア? どうしてクロウのそばを離れたの?」
「……ちょっと騒がしくなったから……」
「そう……」
ミーシャ様はそれ以上何も言わなくて、その気遣いが今は嬉しかった。
昼食になったら流石にくるだろうと思っていたけど、クロウ様は来なくて、レオン様とミーシャ様と一緒にご飯を食べた。
昼食を終えて談笑していると、なんだか怖い顔したクロウ様が近づいてくる。レオン様とミーシャ様は顔が青ざめていて、わたしのそばからパッと離れる。
え、なんで離れるの……?
クロウ様はわたしの腕を掴んでどこかに向かっている。いつもの優しげな感じはなくて、なんだか怖い。怒ってる……?
どこかの部屋へ連れ込まれて、鍵までかけてた。
え、わたし、閉じ込められてる……?
そのままそばにあったベッドへ連れ込まれる。
「アメリア。なんで? なんで俺のそばを離れるの」
怖い顔をしたままわたしを見つめるクロウ様。わたし……何かって思ったけど心当たりがあるから何もいえない……
黙り込むわたしに顔を徐々に近づけるクロウ様。ち、近いですっ。
「なんで? 何が嫌だったの」
なんで、なんでだろう。本当は、わかってる。シャルル様と一緒にいるクロウ様をみたくなかったから。胸が痛くなってくるから。嫌だなって思ってしまうから。わたしの心が醜いと思ってしまったから。
なんだかわからないけど目に涙が溜まってきているのがわかる。泣いちゃダメ。泣いたって、何も解決しない……
「言わないとわかんないよ、アメリア。ちゃんと俺の目を見て言って」
横向きに向かい合わせで寝そべって、クロウ様の両手で頬を固定されていて、勝手に彼の目を見つめてしまう。
こんな気持ち、言いたくない。嫌って思ったなんて知られたくないのに……
吸い込まれそうな彼の瞳に見つめられると、言葉が出てきてしまう。
「……いや、だったの」
「何が嫌だったの?」
「……あのこと一緒にいるのが。あのこにわたしの心地いい場所を、奪われるのが……」
「そう。いやだった? そんなに泣きたくなるくらい」
もう吐き出してしまってからはとめどなく流れる涙が止まる気配はない。クロウ様は人差し指でそれを拭ってくれて。
「アメリア。それは嫉妬というんだよ。嫉妬はね、大好きな人にしかしないんだよ」
大好き……? 嫉妬……
そう、なのかな。好き……
でも、レオン様もミーシャ様も好きだけど二人仲良くしてても何も思わない。むしろ嬉しい。
何が違うの……?
「ふふっ。ねぇ、アメリア。ご飯ちょうだい」
じゅっと啜る音がする。最近この音にもドキドキする。なんだか変。
「アメリア。俺とレオン達とじゃ、違うでしょう? 何が違うかわかる?」
何が、何が違う? でも何かが違う……
なんだろう……
――レオンじゃドキドキしないでしょう? こんなに泣いたりしないでしょう? 何が違う? 同じ好き? 違う好き?
違う、レオン様とクロウ様じゃ何かが違う。二人とも好きだけど、同じじゃない……
「そう。レオンと俺じゃ違うんだね。ふふ。あと、少しだね」
そのまま意識が遠のいて、眠ってしまった。
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