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「アメリア。起きた?」
「あ、はい……」
「一体何があった。ミーシャからは聞いたが全く掴めない」
「わたしも何が何だか……ミーシャ様が先生に呼ばれてその場にいるように言われたんですけど……お手洗いが我慢できなくて、行って戻ろうと思ったらなんだか匂いがして、そのまま気を失って、気がついたらあの場所にいたんです」
クロウ様は何か考え込んでいるようだった。
「どんな匂いだった?」
「なんだか甘い香りで、頭がぼーっとしてしまって」
「麻酔の一種だね。でも一般的に医療に使われるもので医師以外には販売していなかったはずなんだけど……」
ああ、そういえば、わたしも手術の時に嗅いだことのある匂いだった気がする。確かに同じような匂いだったような。
でもそんなもの、学園で使うなんて……
「もう少し休んで。念のため血液検査させてるし、結果が出ないとなんともいえないから」
そう言って彼はわたしの瞼を閉じさせる。そのまますっとわたしは眠った。
あの日以来、クロウ様は学園を休むことが多くなった。レオン様とミーシャ様がそばにいてくれるから、特におかしなことも起こっていない。それに夜になればクロウ様が必ず帰ってきてくれるから、不安もあまりなかった。
夜は必ずキスをして抱きしめてくれる。それだけで心が落ち着くのはなんでだろう。ミーシャ様も良く撫でてくれるけど、それよりも心地いい。
もっともっとって、手を伸ばすけど、苦笑した彼に止められてしまって、ハッとする。わたし、いつからこんなにわがままになったんだろう。迷惑、だよね……?
「これ以上は俺が我慢できなくなるからダメ。早く、俺の元に堕ちておいで」
彼の言葉にドキドキする。すごく心臓がうるさくて、でも嫌じゃない。なんだろう、この気持ち。
「お出かけ、ですか……?」
「そう。みんなで行こうか」
どうやら四人でお出かけのようです。楽しみで、朝早くから起きたわたしをクロウ様は苦笑いしてた。そしてレオン様と一緒に部屋にきたミーシャ様にクロウ様はなぜか追い出される。「ここ、俺の部屋なんだけど……」って呟いててちょっとおかしかった。
ミーシャ様が服や髪結いをしてくれて、いつもとは違う仕上がりになった。わたしもびっくりするくらいお人形さんみたいになってて、ちょっとはしゃいだ。
今日のお出かけはウィッグとコンタクト、メガネはなしで久々に長時間本当の自分でいられる。あれをつけてると結構肩が凝ってしまうから解放感がすごいのだ。
「きゃあ! アメリアとっても可愛いわっ。隠したくなるクロウの気持ちわかるわぁ。でも、わたくし達にまで隠すことないのにっ」
いろんな角度からわたしを見て褒めてくれるミーシャ様にちょっとだけ照れてしまった。
そのまま扉を開けて、外で待っていたレオン様とクロウ様はわたしを見て目を見開いている。
え、なんか変だった……?
「これはこれは。ずいぶん可愛いお人形さんを隠していたな、クロウ。これじゃあお前の気持ちもわかるわ……」
「だろう? だからずっと隠してたんだよ」
わたしの手をとって歩くクロウ様について行って、みんなで馬車に乗り込んだ。廊下にいた寮生たちにこそこそ噂されてたけど、気にしないことにした。というかクロウ様が歩くの早すぎてついていくのに必死だっただけなんだけど……
そのまま馬車に乗ってわたし達は学園を後にした。
ついた先は大きな建物。ドーム状になっていて中にはたくさんの人がいた。
きょろきょろ周りを見渡すわたしをくすくす笑って「ここでは劇が行われるんだよ」って教えてくれた。演劇、なのかな。
連れられたのは周りとは区切られている席で、どうやら王族やその貴賓が来た時に使われる席のようだった。よく見えるところで、ソファも大きくて飲み物も出してくれるみたい。
きっとレオン様が用意してくれたんだろうなって思ってお礼を言ったら彼は苦笑して「用意したのはクロウだよ」って教えてくれた。
驚いているわたしを見た彼は笑っていた。
え、王族も使うここ、どうやってクロウ様がって思ったけど、ちょうど演劇が始まってしまい、わたしはそちらに意識を向けた。
今回の演劇は王道の恋愛ものみたい。ずっと一緒にいた男の子にちょっとずつ恋心を自覚して、色々な困難に立ち向かいながら愛を育むというもので。
その女の子の気持ちが痛いほどよくわかって、不思議な気分だった。愛とか恋とかよくわからないけど、どうしてこんなにも引き込まれるんだろうって思っていた。
これ、わたしがクロウ様に抱いている気持ちと、一緒……?
これって、もしかして、わたしはクロウ様に恋をしてしまっているの……?
演劇が終わって、わたし達は一階に向かっていた。どうやらここは三階みたい。二階は貴族の人が多いみたいで、人が多いんだそう。だから別階段が用意されていて、そこから降りられるようになってるみたい。
四人で仲良く降りているとそこにまたあのこが現れた。
「あれ、クロウ様っ。こんなところで偶然ですねっ」
休みの日にまで会うなんて……
あ、でも今のわたしは学園では違うから、向こうも気づかないかな……?
って思ってたんだけど、ぎろりと睨まれる。そして小さな声で「また邪魔するの?」ってわたしにしか聞こえないように言ってきて、どきりとする。
え、わたしだってことがバレてるの……?
なんで……
クロウ様はわたし達に「先に行ってて。すぐ追いかけるから」って言ってあのこを連れてどこかに行ってしまった。レオン様は苦笑して「行こうか」ってわたし達の背中を押す。ミーシャ様はそんなクロウ様をみてなんだか怒ってた。
クロウ様を待っている間、お手洗いに行きたくなってミーシャ様についてきてもらった。
なんだか怖そうな二人の男性がわたし達に近づいてくる。目を合わせないように俯いていたんだけど……
「あれ、こんな可愛い子初めてみたね。どう? この後一緒にどっか行かない?」
ああ、やっぱり関わったら面倒な感じだ……
「お断りします。そこを退いていてだけます?」
ミーシャ様は毅然とした態度で男性達を相手にしている。けれど相手の男性達はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて、わたし達のそばに近づいてくる。
そのうちの一人が腰に手を回してきて体がぞ割と震える。やだ、やだ、やだ。怖い……
まだミーシャ様ともう一人の男が話しているけどどんどん遠のいていく。わたしは口を塞がれ、近くにある部屋へ連れ込まれてしまった。
恐怖で動けないわたしをニヤリと笑う。
「こんな可愛い子がいたなんてラッキーだったな。さ、お兄さんと楽しいことしよう」
ジリジリと近づいてくる男性に動けないわたし。
やだ、やだ、助けて……
助けて、クロウ様っ。
もう体は触れていて距離がない。どうしよう、どうしよう……
キュッと目をつむった。
「あ、はい……」
「一体何があった。ミーシャからは聞いたが全く掴めない」
「わたしも何が何だか……ミーシャ様が先生に呼ばれてその場にいるように言われたんですけど……お手洗いが我慢できなくて、行って戻ろうと思ったらなんだか匂いがして、そのまま気を失って、気がついたらあの場所にいたんです」
クロウ様は何か考え込んでいるようだった。
「どんな匂いだった?」
「なんだか甘い香りで、頭がぼーっとしてしまって」
「麻酔の一種だね。でも一般的に医療に使われるもので医師以外には販売していなかったはずなんだけど……」
ああ、そういえば、わたしも手術の時に嗅いだことのある匂いだった気がする。確かに同じような匂いだったような。
でもそんなもの、学園で使うなんて……
「もう少し休んで。念のため血液検査させてるし、結果が出ないとなんともいえないから」
そう言って彼はわたしの瞼を閉じさせる。そのまますっとわたしは眠った。
あの日以来、クロウ様は学園を休むことが多くなった。レオン様とミーシャ様がそばにいてくれるから、特におかしなことも起こっていない。それに夜になればクロウ様が必ず帰ってきてくれるから、不安もあまりなかった。
夜は必ずキスをして抱きしめてくれる。それだけで心が落ち着くのはなんでだろう。ミーシャ様も良く撫でてくれるけど、それよりも心地いい。
もっともっとって、手を伸ばすけど、苦笑した彼に止められてしまって、ハッとする。わたし、いつからこんなにわがままになったんだろう。迷惑、だよね……?
「これ以上は俺が我慢できなくなるからダメ。早く、俺の元に堕ちておいで」
彼の言葉にドキドキする。すごく心臓がうるさくて、でも嫌じゃない。なんだろう、この気持ち。
「お出かけ、ですか……?」
「そう。みんなで行こうか」
どうやら四人でお出かけのようです。楽しみで、朝早くから起きたわたしをクロウ様は苦笑いしてた。そしてレオン様と一緒に部屋にきたミーシャ様にクロウ様はなぜか追い出される。「ここ、俺の部屋なんだけど……」って呟いててちょっとおかしかった。
ミーシャ様が服や髪結いをしてくれて、いつもとは違う仕上がりになった。わたしもびっくりするくらいお人形さんみたいになってて、ちょっとはしゃいだ。
今日のお出かけはウィッグとコンタクト、メガネはなしで久々に長時間本当の自分でいられる。あれをつけてると結構肩が凝ってしまうから解放感がすごいのだ。
「きゃあ! アメリアとっても可愛いわっ。隠したくなるクロウの気持ちわかるわぁ。でも、わたくし達にまで隠すことないのにっ」
いろんな角度からわたしを見て褒めてくれるミーシャ様にちょっとだけ照れてしまった。
そのまま扉を開けて、外で待っていたレオン様とクロウ様はわたしを見て目を見開いている。
え、なんか変だった……?
「これはこれは。ずいぶん可愛いお人形さんを隠していたな、クロウ。これじゃあお前の気持ちもわかるわ……」
「だろう? だからずっと隠してたんだよ」
わたしの手をとって歩くクロウ様について行って、みんなで馬車に乗り込んだ。廊下にいた寮生たちにこそこそ噂されてたけど、気にしないことにした。というかクロウ様が歩くの早すぎてついていくのに必死だっただけなんだけど……
そのまま馬車に乗ってわたし達は学園を後にした。
ついた先は大きな建物。ドーム状になっていて中にはたくさんの人がいた。
きょろきょろ周りを見渡すわたしをくすくす笑って「ここでは劇が行われるんだよ」って教えてくれた。演劇、なのかな。
連れられたのは周りとは区切られている席で、どうやら王族やその貴賓が来た時に使われる席のようだった。よく見えるところで、ソファも大きくて飲み物も出してくれるみたい。
きっとレオン様が用意してくれたんだろうなって思ってお礼を言ったら彼は苦笑して「用意したのはクロウだよ」って教えてくれた。
驚いているわたしを見た彼は笑っていた。
え、王族も使うここ、どうやってクロウ様がって思ったけど、ちょうど演劇が始まってしまい、わたしはそちらに意識を向けた。
今回の演劇は王道の恋愛ものみたい。ずっと一緒にいた男の子にちょっとずつ恋心を自覚して、色々な困難に立ち向かいながら愛を育むというもので。
その女の子の気持ちが痛いほどよくわかって、不思議な気分だった。愛とか恋とかよくわからないけど、どうしてこんなにも引き込まれるんだろうって思っていた。
これ、わたしがクロウ様に抱いている気持ちと、一緒……?
これって、もしかして、わたしはクロウ様に恋をしてしまっているの……?
演劇が終わって、わたし達は一階に向かっていた。どうやらここは三階みたい。二階は貴族の人が多いみたいで、人が多いんだそう。だから別階段が用意されていて、そこから降りられるようになってるみたい。
四人で仲良く降りているとそこにまたあのこが現れた。
「あれ、クロウ様っ。こんなところで偶然ですねっ」
休みの日にまで会うなんて……
あ、でも今のわたしは学園では違うから、向こうも気づかないかな……?
って思ってたんだけど、ぎろりと睨まれる。そして小さな声で「また邪魔するの?」ってわたしにしか聞こえないように言ってきて、どきりとする。
え、わたしだってことがバレてるの……?
なんで……
クロウ様はわたし達に「先に行ってて。すぐ追いかけるから」って言ってあのこを連れてどこかに行ってしまった。レオン様は苦笑して「行こうか」ってわたし達の背中を押す。ミーシャ様はそんなクロウ様をみてなんだか怒ってた。
クロウ様を待っている間、お手洗いに行きたくなってミーシャ様についてきてもらった。
なんだか怖そうな二人の男性がわたし達に近づいてくる。目を合わせないように俯いていたんだけど……
「あれ、こんな可愛い子初めてみたね。どう? この後一緒にどっか行かない?」
ああ、やっぱり関わったら面倒な感じだ……
「お断りします。そこを退いていてだけます?」
ミーシャ様は毅然とした態度で男性達を相手にしている。けれど相手の男性達はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて、わたし達のそばに近づいてくる。
そのうちの一人が腰に手を回してきて体がぞ割と震える。やだ、やだ、やだ。怖い……
まだミーシャ様ともう一人の男が話しているけどどんどん遠のいていく。わたしは口を塞がれ、近くにある部屋へ連れ込まれてしまった。
恐怖で動けないわたしをニヤリと笑う。
「こんな可愛い子がいたなんてラッキーだったな。さ、お兄さんと楽しいことしよう」
ジリジリと近づいてくる男性に動けないわたし。
やだ、やだ、助けて……
助けて、クロウ様っ。
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