吸血鬼なご主人様の侍女になりました。

しおの

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 ざわめきが収まらない王宮ないに今度はクロウ様の声が響き渡る。
「さて、先ほどの件もう一人罰せねばなりません。心当たりのあるものは?」
 こんな空気の中出てこれる人なんていないと思うの……
 というか、もう一人って誰かな?
「シャルル・ソーイング嬢、前へ」
 え、シャルル様? 一体どうなってるの?
 シャルル様は騎士達に連れられて前へ出る。その顔は真っ青で震えている。
「さて、先ほどのとある令嬢に対する監禁、誘拐、暴行さらには王家領地への無断侵入。薬物の所持、使用。心当たりは?」
 冷たい、冷たい声。赤く綺麗な目も細められ、視線はシャルル様。
「っ、ありませんっ」
 大きな声ではっきりと否定したあのこはぎゅっとスカートを握っていた。顔は真っ青だけど、大丈夫かな……
「そうか。ではひとつひとつ説明しよう。学園での合宿の際、転んだふりをして崖下へ突き落としたこと。薬品を使用して彼女を拉致し、外から鍵が閉められた部屋へ監禁したこと。劇場で人を雇い、個室に連れ込み暴行しようとしたここと」
 シャルル様も青ざめているけれどそれと同じく私は青ざめていた。ちょっと待って、学園へ通うようになってからの変な出来事って、もしかして全て……
「それから彼女と私の母上を暴漢に襲わせたこと。王家所有の土地に無断で入り込んだこと。それだけにとどまらず、人を雇い彼女を誘拐、さらには負傷させたこと。全て証拠はあるんだよ? シャルル・ソーイング」
 クロウ様の声が響き渡る。シャルル様は膝をつき、何かをぶつぶつ言っている。
「何よ、なんでこうなるの? 私がクロウ様と結ばれるはずだったのに! なんでうまくいかないのよ」
「戯言を。連れていけ」
 そのままシャルル様も騎士に連れられて王宮を後にした。青ざめるものや隣とヒソヒソ話をするもの、そして淑女の中にはあまりのショックで倒れてしまうものが出るほどだった。
 こうして夜会という名の断罪は幕を閉じたのであった。



 レオン様が王宮に部屋をとってくれていたみたいで、そこで二人今日は休むこととなった。
 いつも通り、どちらともなくぎゅっと引っ付いている。まるでコアラの親子のよう。
 今までのおかしなことは全てシャルル様とその父親が仕組んだことだったらしい。そして今日も何やら画策していたようだったけど、先回りして全て潰したのだとか。
 クロウ様もお父様も相当お怒りのようで、取り調べやらに積極的に参加する予定なんだとか。徹底的に潰してやるって呟いているクロウ様が少し怖かった。
 それから、レオン様も大層お怒りのようで、これまた張り切っているのだとか。未遂とはいえ自分の婚約者を傷つけられるところだったんだから当たり前だよね。


 それからクロウ様は教えてくれた。シャルル様は全て自供したみたい。小説通りに行かないから無理やり事件を起こしたこと、クロウ様の隣に何故かわたしがいたことが気に入らなくて、邪魔をしていたこと。それも生死は問わなかったらしい。それもそうだよね、あの崖、かなり高かったし、普通に落ちたら即死だと思う。
 目的はただただクロウ様と小説の通りに結婚したかったかららしい。
 ちなみにクロウ様があのことよく話していたのは情報を聞き出すためだったとか。貴族の不正や事件を予知しているみたいに話すから、証言を聞き出すついでに、子爵家に関する情報を探っていたんだって。多分小説の中にある事件を言ったんじゃないかなって思う。それからわたしの正体や、クロウ様のことをやたらと詳しく知っていて、気味が悪かったのでついでに監視もして時々一言話してご機嫌取りをしていたみたい。
 一言と言っても「ああ」や「そう」しか言ってなかったみたいだけど、それだけで彼女は舞い上がって嬉々としていろいろ話してくれたそうで。
 それから途中からレオン様にもこのことを伝えて、協力してたみたい。これはレオン様からの以来ではなく、国王陛下からの依頼だったそうで、最後まで罪を洗ってから捕まえる算段だったみたい。
 だからわたしがおかしなことに巻き込まれても何もできなかったって悔しそうに言ってた。
 そして後日、恐れ多いことに国王陛下直々に謝罪をいただいた。隣にいた王妃様にかなりどやされて、縮こまってしまっていたのが少しおかしかった。


 こうしてソーイング子爵家は爵位剥奪の元、処罰された。シャルル様は当然学園を退学したのだが、その後彼女がどうなったのかは教えてもらえなかったので知らないけれど。
 バタバタした数日間が、過ぎていった……



 
  
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