吸血鬼なご主人様の侍女になりました。

しおの

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 屋敷へ帰ってからはお母様からは泣かれ、お父様はカンカンでなんだかすごいことになってしまっていた。学園へ行くときも泣きながら引き止められたけど、クロウ様が「大丈夫。全部終わらせるから」って言ってた。
 何かあるんだろうか……
 学園へ戻ってからは、わたしは部屋で勉強するように言いつけられた。そのため、あの変装もせず素顔のままで過ごしている。
 それから、サヨさんがついてくれることになった。部屋も変えてもらい、一番広い部屋だそうで四人は使用人をつけることができるらしい。ちなみに王族専用だそうだ。
 クロウ様は変わらず学園へ通い続けていた。どうやらしょっちゅうシャルル様に絡まれているそう。これはたまに遊びにくるレオン様とミーシャ様情報だ。
 本当にあのこは一体なんなのかな……
「あ、そういえば、今度の夜会は参加できるんでしょう? 楽しみだわぁ」
「そうみたいですね。それが終わったらまた学園へ通っていいそうです」
「早く一緒に行けるといいわね」
「はいっ」
 そう。どうやらわたしの引きこもりは近々王宮で行われる夜会が終わったら解禁されるようだ。その日を今か今かと待っているんだけど、最近クロウ様の様子が変わってきた。
 夜は、キス以外に耳や首筋を触られたりすることが増えてきてるし、「好き?」って何度も聞かれて真っ赤になる。
 返事ができなくてもじもじしているわたしを意地悪い笑顔で見つめてくるのだ。
 前にもましてベッタベタで、戸惑ってしまう。
「そういえば最近、周りが騒がしくてね。しばらくくることができないかもしれない。アメリア嬢、ミーシャのことよろしくね」
 小首を傾げるわたしにレオン様は説明してくれる。
「どうやら僕を失脚させようとするもの達が現れてね。クロウを王太子にしようと動いているようだ。ミーシャにも危険が及ぶかもしれないから、なるべく気をつけるように」
 なんてこと……クロウ様を王太子にって一体誰が。
 レオン様が失脚することで喜ぶ人ってことだよね? 見た感じミーシャ様との婚約は揺るがないものだし、公爵家ってことは後ろ盾が強い。だからミーシャ様とレオン様を引き裂こうとしているってこと?
 それで、クロウ様が王太子になったら、今は彼に婚約者がいないから、その座を狙っている人ってこと……?
 まさか、まさかね。その人にとってわたしが邪魔でだから色々おかしなことが起こってたってこと……?
 なんだかすごいことに巻き込まれてしまった気がする。



 そして、王家主催の夜会の日となった。
 わたしはキラッキラ、ヒラっヒラのドレスを着せられる。髪も結い上げて飾りもつけられる。なんだか別人みたい……
 わたしの準備が終わった頃、クロウ様が入ってくる。ひゅっと息を呑む音が聞こえてきて、彼は満面の笑みで「アメリア、綺麗だね」って言ってくれた。そんなクロウ様もいつもとは違う正装でドキドキしてしまってあまり顔を見れなかった。
 そんなわたしをくすくす笑って頭を撫でてくれて「さ、いこう」とわたしの手をとった。そのまま馬車に乗り、王宮へ向かう。
 一応、今日のためにお休みの間にお母様とマナーの復習はしたけど、上手にできるかな……
 そんな不安を抱えながら、二人手を取り合って入場する。
 中のみんなの視線が突き刺さる。ふるりと震える手をぎゅっと握ってくれて安心させてくれるクロウ様は読心術でも持っているのだろうか……
 いつも不安になればこうしてわたしの気持ちを穏やかにしてくれる。にこりと微笑んで見つめる。クロウ様の深紅の目もこちらを向いていて、なんだか恥ずかしくなってくる。けれどここは王宮だ。頑張らなくちゃ。
 スタスタと歩く彼に連れられて、国王陛下の元へ挨拶へ向かう。初めて見た国王陛下はお母様によく似ている。レオン様は王妃様に似たみたい。
 そんなことを考えていると、レオン様が壇上へ立った。
「今宵はお集まりいただき、ありがとうございます。しかし、今夜は皆様に残念なお知らせをしなければなりません」
 集まった貴族達がざわざわし始める。学園の生徒もたくさんいるみたいで見知った顔も見かけていた。
「ソーイング子爵。皆の前へ」
 ソーイング? ソーイングって、誰だっけ。
 クロウ様がわたしの腰をしっかりと抱き寄せる。
「なぜ呼ばれたか心当たりは?」
「あ、ありませんなぁ。私が何をしたと?」
 少し体型のふくよかな方だった。ん? よくよく見ると誰かに似ているような……
「証拠は揃っているが、一つ一つ読み上げようか? では一つ、違法に医療者にしか扱えない薬品を所持、販売、使用した罪。一つ、子爵領における書類の改竄、横領。一つ、とある令嬢に対する監禁、誘拐、暴行を加えた罪。一つ、王家領地内への無断侵入」
 ダラダラと青ざめ、汗をかく子爵。体も震えていて、座り込んでしまっている。
「一つ、王太子の婚約者に危害を与えようとしたこと」
 え……? それって、ミーシャ様? クロウ様を見上げると、彼は「未遂だから大丈夫」って教えてくれた。ミーシャ様も笑顔でこちらをみていて、大丈夫そうだ。
 よかった……
「一つ、虚偽の噂をばら撒き失脚させようと画策、それによる王家への反逆罪。さて、ソーイング子爵、何か申し開きはあるか?」
「……」
 もう心ここに在らずな様子の子爵は何もいえないようで、控えていた騎士達に囲まれてどこかへ連れて行かれたのだった。 
 
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