20 / 23
20
しおりを挟む
「アメリアちゃんっ、気をつけるのよ」
「アメリア、何かあればすぐいうんだぞ」
お父様とお母様に頭を撫でてもらって出発する。馬車が見えなくなるまで手を振ってくれて、なんだか嬉しくなった。
「まぁ、アメリアっ。待ってたわぁ」
ミーシャ様がぎゅっとハグしてくれる。レオン様も「いらっしゃい」と歓迎してくれた。わたし達も結構な人数の護衛を引き連れてきたけれど、この別荘にもたくさんいるみたい。
「さ、お茶にしましょう」
みんなでテーブルを囲んで、お茶をする。わたしは隣に座るアメリア様と談笑していた。男性陣二人は何やらこそこそ物騒な話をしているようだ。
その後は部屋へ荷物を運び込む。
そして庭へ来るように言われ向かってみると真ん中に火を起こしていて、みんなで串を持っている。クロウ様に手を引かれて向かうとどうやらバーベキューのようだ。さまざまな食材を護衛の人がみんな焼いていてワイワイ食べている。
用意されていた椅子に座って串を手渡される。周りを真似して火に近づけてクルクル回しながら焼いてみるとなんだか楽しかった。
「そろそろ食べれると思うよ」
クロウ様が教えてくれて、フーフーしながらかぶりつくととても美味しくて。ほっぺたが落ちそうになっていた。それからは次から次へと焼いてくれて、手渡されたものをもぐもぐ食べる。みんな笑顔で楽しんでいて、この時間が続くといいなって思った。
それから数日は特に変わったことはなかった。みんなで一緒に何かをして、とてもとても楽しんだのだった。
ある日、四人で屋敷の周りを散歩していた時のこと。
「まぁっ、こんなところで会うなんて偶然ですねぇっ」
ああ、とてもピンクだ。ふりふり全開だ……
そのまま彼女はいつものようにクロウ様に抱きつく。頭を抱えたクロウ様は「……先に行っててくれ」ってため息混じりに言っていた。
それに従ってわたしはミーシャ様とレオン様とそばを離れる。というか、ここは確か王家の敷地内って聞いたんだけど……どうしてあのこはこの場所がわかったのかな。
もしかして……小説の知識?
確か長期休みに王家所有の別荘地にいた彼と偶然出会うところがあった気がする。場所も細かく描写されていた気もするし……
しっかり内容を覚えていたら、特定は可能かも……?
そういうわたしはぼんやりとしか覚えていなかったからいつも後々思い出していたけれど。
「というかレオン。ここ、王家の敷地内よね? あれ、いいの?」
ちょっと怖い顔でレオン様に詰め寄るミーシャ様。タジタジになりながらもレオン様は告げた。
「事情があるんだよ。今は我慢してくれ」
納得できないと言った表情のミーシャ様に苦笑したレオン様は頭を撫でてあげていた。
仲が良さそうで何よりだ。わたしは二人をにこにこ見守っていた……んだけどっ
「きゃっ」
突然何かに足を引っ張られ、転んでしまう。
え、何もなかったはずで、わたし動いてないのに……
というか……ここ、どこ……?
周りは岩に囲われていて真っ暗だ。あの一瞬で何があったのか、わからない。
何かが足に引っかかってそれがわたしの足を引っ張って、どこかに引き摺り込んだ……?
「いったぁ」
今更あちこち痛み出す。小さな切り傷がたくさんできていて、地味に痛い。
歩こうにもどうも足を捻ってしまったみたいで、這って動くしかなかった。
お腹や脛をあちこちに擦りながら、光のある方へ進む。というか、なんでわたしだけこんな目に……
王家で罠でも仕掛けてたのかな。それにまんまと引っかかったとか……?
だとしたらわたし相当間抜けね……
「よいしょ、案外前に進まないものね……あ、腕で進んだ方がスムーズに行けるのか」
謎に匍匐前進を極めるわたし。さっきよりも全然早いわ。
やっと出入り口に近づいたと思ったら、誰かに抱き上げられた。
「ギャッ」
視界が一瞬で変わって、変な声が出る。どうやら横抱きにされているようだ。
ふと顔を上げるとそこには怒っているような困惑しているようなクロウ様がいた。
「え、あ、あの、ありがとう、ございます」
「……ごめん。もう我慢できん。やっと掴めたし、そろそろおいたは終わりにしてもらわないといけないな」
「え?」
「いや、こっちの話だから気にしないで。それより痛かったね。さ、戻ろう」
屋敷に戻ったわたしは数名のお医者様に診察されて、包帯をぐるぐる巻きにされた。小さな切り傷なのに大袈裟な……と思ったけれど、お医者様が施した処置なら仕方ない。
身動きが取りづらいことに加えて困ったのはお風呂だった。傷に染みるからお湯に入れないことは覚悟していたけれど、この屋敷にはなぜか使用人がおらずその代わりにたくさんの騎士だけだった。
ミーシャ様に手伝ってもらうのはなんだか申し訳ないしと思っていたら、いつの間に呼び寄せたのかサヨさんが駆けつけてくれて、お世話をしてくれた。
あちこち切り傷だらけで染みる。特に腕が一番多いかもしれない……
匍匐前進が失敗だったかな。サヨさんは傷口になるべく染みないように気を遣ってくれて、とてもありがたかった。
お風呂が終わると再びお医者様に包帯を撒かれる。ちょっと大袈裟で恥ずかしい。
その日からクロウ様は食事をしなくなった。その代わりずっと引っ付いている。足も捻挫していたから、どこかに行くたびに横抱きにされて、とても恥ずかしい。
やっと傷口が良くなってきた頃、一旦クロウ様の屋敷へと帰った。
「アメリア、何かあればすぐいうんだぞ」
お父様とお母様に頭を撫でてもらって出発する。馬車が見えなくなるまで手を振ってくれて、なんだか嬉しくなった。
「まぁ、アメリアっ。待ってたわぁ」
ミーシャ様がぎゅっとハグしてくれる。レオン様も「いらっしゃい」と歓迎してくれた。わたし達も結構な人数の護衛を引き連れてきたけれど、この別荘にもたくさんいるみたい。
「さ、お茶にしましょう」
みんなでテーブルを囲んで、お茶をする。わたしは隣に座るアメリア様と談笑していた。男性陣二人は何やらこそこそ物騒な話をしているようだ。
その後は部屋へ荷物を運び込む。
そして庭へ来るように言われ向かってみると真ん中に火を起こしていて、みんなで串を持っている。クロウ様に手を引かれて向かうとどうやらバーベキューのようだ。さまざまな食材を護衛の人がみんな焼いていてワイワイ食べている。
用意されていた椅子に座って串を手渡される。周りを真似して火に近づけてクルクル回しながら焼いてみるとなんだか楽しかった。
「そろそろ食べれると思うよ」
クロウ様が教えてくれて、フーフーしながらかぶりつくととても美味しくて。ほっぺたが落ちそうになっていた。それからは次から次へと焼いてくれて、手渡されたものをもぐもぐ食べる。みんな笑顔で楽しんでいて、この時間が続くといいなって思った。
それから数日は特に変わったことはなかった。みんなで一緒に何かをして、とてもとても楽しんだのだった。
ある日、四人で屋敷の周りを散歩していた時のこと。
「まぁっ、こんなところで会うなんて偶然ですねぇっ」
ああ、とてもピンクだ。ふりふり全開だ……
そのまま彼女はいつものようにクロウ様に抱きつく。頭を抱えたクロウ様は「……先に行っててくれ」ってため息混じりに言っていた。
それに従ってわたしはミーシャ様とレオン様とそばを離れる。というか、ここは確か王家の敷地内って聞いたんだけど……どうしてあのこはこの場所がわかったのかな。
もしかして……小説の知識?
確か長期休みに王家所有の別荘地にいた彼と偶然出会うところがあった気がする。場所も細かく描写されていた気もするし……
しっかり内容を覚えていたら、特定は可能かも……?
そういうわたしはぼんやりとしか覚えていなかったからいつも後々思い出していたけれど。
「というかレオン。ここ、王家の敷地内よね? あれ、いいの?」
ちょっと怖い顔でレオン様に詰め寄るミーシャ様。タジタジになりながらもレオン様は告げた。
「事情があるんだよ。今は我慢してくれ」
納得できないと言った表情のミーシャ様に苦笑したレオン様は頭を撫でてあげていた。
仲が良さそうで何よりだ。わたしは二人をにこにこ見守っていた……んだけどっ
「きゃっ」
突然何かに足を引っ張られ、転んでしまう。
え、何もなかったはずで、わたし動いてないのに……
というか……ここ、どこ……?
周りは岩に囲われていて真っ暗だ。あの一瞬で何があったのか、わからない。
何かが足に引っかかってそれがわたしの足を引っ張って、どこかに引き摺り込んだ……?
「いったぁ」
今更あちこち痛み出す。小さな切り傷がたくさんできていて、地味に痛い。
歩こうにもどうも足を捻ってしまったみたいで、這って動くしかなかった。
お腹や脛をあちこちに擦りながら、光のある方へ進む。というか、なんでわたしだけこんな目に……
王家で罠でも仕掛けてたのかな。それにまんまと引っかかったとか……?
だとしたらわたし相当間抜けね……
「よいしょ、案外前に進まないものね……あ、腕で進んだ方がスムーズに行けるのか」
謎に匍匐前進を極めるわたし。さっきよりも全然早いわ。
やっと出入り口に近づいたと思ったら、誰かに抱き上げられた。
「ギャッ」
視界が一瞬で変わって、変な声が出る。どうやら横抱きにされているようだ。
ふと顔を上げるとそこには怒っているような困惑しているようなクロウ様がいた。
「え、あ、あの、ありがとう、ございます」
「……ごめん。もう我慢できん。やっと掴めたし、そろそろおいたは終わりにしてもらわないといけないな」
「え?」
「いや、こっちの話だから気にしないで。それより痛かったね。さ、戻ろう」
屋敷に戻ったわたしは数名のお医者様に診察されて、包帯をぐるぐる巻きにされた。小さな切り傷なのに大袈裟な……と思ったけれど、お医者様が施した処置なら仕方ない。
身動きが取りづらいことに加えて困ったのはお風呂だった。傷に染みるからお湯に入れないことは覚悟していたけれど、この屋敷にはなぜか使用人がおらずその代わりにたくさんの騎士だけだった。
ミーシャ様に手伝ってもらうのはなんだか申し訳ないしと思っていたら、いつの間に呼び寄せたのかサヨさんが駆けつけてくれて、お世話をしてくれた。
あちこち切り傷だらけで染みる。特に腕が一番多いかもしれない……
匍匐前進が失敗だったかな。サヨさんは傷口になるべく染みないように気を遣ってくれて、とてもありがたかった。
お風呂が終わると再びお医者様に包帯を撒かれる。ちょっと大袈裟で恥ずかしい。
その日からクロウ様は食事をしなくなった。その代わりずっと引っ付いている。足も捻挫していたから、どこかに行くたびに横抱きにされて、とても恥ずかしい。
やっと傷口が良くなってきた頃、一旦クロウ様の屋敷へと帰った。
5
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
【完結】私の初恋の人に屈辱と絶望を与えたのは、大好きなお姉様でした
迦陵 れん
恋愛
「俺は君を愛さない。この結婚は政略結婚という名の契約結婚だ」
結婚式後の初夜のベッドで、私の夫となった彼は、開口一番そう告げた。
彼は元々の婚約者であった私の姉、アンジェラを誰よりも愛していたのに、私の姉はそうではなかった……。
見た目、性格、頭脳、運動神経とすべてが完璧なヘマタイト公爵令息に、グラディスは一目惚れをする。
けれど彼は大好きな姉の婚約者であり、容姿からなにから全て姉に敵わないグラディスは、瞬時に恋心を封印した。
筈だったのに、姉がいなくなったせいで彼の新しい婚約者になってしまい──。
人生イージーモードで生きてきた公爵令息が、初めての挫折を経験し、動く人形のようになってしまう。
彼のことが大好きな主人公は、冷たくされても彼一筋で思い続ける。
たとえ彼に好かれなくてもいい。
私は彼が好きだから!
大好きな人と幸せになるべく、メイドと二人三脚で頑張る健気令嬢のお話です。
ざまあされるような悪人は出ないので、ざまあはないです。
と思ったら、微ざまぁありになりました(汗)
コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?
引きこもり令嬢が完全無欠の氷の王太子に愛されるただひとつの花となるまでの、その顛末
藤原ライラ
恋愛
夜会が苦手で家に引きこもっている侯爵令嬢 リリアーナは、王太子妃候補が駆け落ちしてしまったことで突如その席に収まってしまう。
氷の王太子の呼び名をほしいままにするシルヴィオ。
取り付く島もなく冷徹だと思っていた彼のやさしさに触れていくうちに、リリアーナは心惹かれていく。けれど、同時に自分なんかでは釣り合わないという気持ちに苛まれてしまい……。
堅物王太子×引きこもり令嬢
「君はまだ、君を知らないだけだ」
☆「素直になれない高飛車王女様は~」にも出てくるシルヴィオのお話です。そちらを未読でも問題なく読めます。時系列的にはこちらのお話が2年ほど前になります。
※こちら同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※
独身皇帝は秘書を独占して溺愛したい
狭山雪菜
恋愛
ナンシー・ヤンは、ヤン侯爵家の令嬢で、行き遅れとして皇帝の専属秘書官として働いていた。
ある時、秘書長に独身の皇帝の花嫁候補を作るようにと言われ、直接令嬢と話すために舞踏会へと出ると、何故か皇帝の怒りを買ってしまい…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
筋書きどおりに婚約破棄したのですが、想定外の事態に巻き込まれています。
一花カナウ
恋愛
第二王子のヨハネスと婚約が決まったとき、私はこの世界が前世で愛読していた物語の世界であることに気づく。
そして、この婚約がのちに解消されることも思い出していた。
ヨハネスは優しくていい人であるが、私にはもったいない人物。
慕ってはいても恋には至らなかった。
やがて、婚約破棄のシーンが訪れる。
私はヨハネスと別れを告げて、新たな人生を歩みだす
――はずだったのに、ちょっと待って、ここはどこですかっ⁉︎
しかも、ベッドに鎖で繋がれているんですけどっ⁉︎
困惑する私の前に現れたのは、意外な人物で……
えっと、あなたは助けにきたわけじゃなくて、犯人ってことですよね?
※ムーンライトノベルズで公開中の同名の作品に加筆修正(微調整?)したものをこちらで掲載しています。
※pixivにも掲載。
8/29 15時台HOTランキング 5位、恋愛カテゴリー3位ありがとうございます( ´ ▽ ` )ノノΞ❤︎{活力注入♪)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる