ベッドの隣は、昨日と違う人

月村 未来(つきむら みらい)

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第五章 美咲の結婚式&二次会

40話 本当に引き当てた運

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マイクから、二次会の進行役の声が響いた。

「それでは、みなさまお待ちかね。ビンゴ大会をはじめます!
入り口でお配りしたビンゴカードを、お手元にご用意くださーい!」

会場のあちこちから、わっと声が上がる。
テーブルの上でグラスが鳴り、椅子がきしむ音が重なった。

「あ、始まるよ」

みいなが小さく言うと、大地は頷きながらビンゴカードを引き寄せた。

「ほんとだ。こういうの、当たったことないけどな」

「わたし、当てるよ。なんか今日、いける気する」


番号が読み上げられるたび、カードに穴を開ける音が会場に広がる。
そのリズムに合わせるように、みいなの気持ちは少しずつ現実に戻ってきていた。

(やっぱり……拓也くんを見たのに……)

自分でも不思議だった。
胸が締めつけられるような痛みも、涙が出そうな感じもない。

(本当に平気だ……)

「……リーチの方ー!」

司会の声に、会場がざわめく。

「わたし……あ、リーチ!」

思わず声が弾んだ。

「まじで?すげぇ」

番号が、ひとつ、またひとつと読み上げられる。
会場の熱が少しずつ上がっていく。

「……次の番号は――」

一瞬の間。

「12!」

「……ビンゴ!!」

自分でも驚くほど、はっきりと声が出た。
周囲の視線が一斉に集まる。

「え、まじ?!」

大地が思わずこちらを見る。

司会がすぐに続けた。

「おーっと、早いですね!
では、1等の方!ステージへどうぞ!」

「えっ……?」

みいなの足が一瞬、床に縫い止められたように動かない。

「……い、行ってくるね」

大地にそう言って立ち上がると、拍手と冷やかしの声に背中を押される。

ステージに上がると、ライトが少し眩しかった。

「では、お名前をどうぞ!」

「あ、川崎……美衣奈です」

「ありがとうございます。
新婦さんとのご関係は?」

「同僚です」

会場から「おおー」と声が上がる。

「ズバリ!1等は――温泉ペア旅行券です!
どなたと行かれますか?」

一瞬、言葉に詰まった。

「……あ、えっと……」

そのとき。

「貸して、マイク」

横からするりと美咲が入り込んできた。

「今日、わたしのお願いでわざわざ来てくださった、
みいなの高校時代からの友人――大地くんと一緒に行ってほしいでーす!」

「え、ええっ、美咲……!」

会場が一気に沸く。

「ねっ、いいですよね?大地くん」

突然振られ、大地は一瞬固まったあと、小さく息を吸った。

「……は、はい」

「ヒュー!」
「いいぞー!」

冷やかしと拍手が飛び交う。

「はい、マイクありがと」

司会が受け取り、にこやかにまとめる。

「それではぜひ、お二人で楽しんできてください!」

拍手がもう一度、会場を包んだ。

「最後に、新郎新婦に一言お願いします!」

みいなはマイクを握り直し、深く息を吸った。

「……今日は本当におめでとうございます。
これからもずっと仲良く、幸せでいてください。
わたしとも、同僚として、友達として……これからもよろしくお願いします」

「ありがとう、みいな」

美咲がウィンクし、陽貴が丁寧に頭を下げる。

ステージを降り、大地のいるテーブルへ戻っても、顔が熱いのが自分でもわかった。

「……おめでとう」

大地が小さく言う。

「……ありがとう」

そのやりとりを、少し離れた場所から拓也は見ていた。

視線が、大地の横顔に止まる。
拍手と笑い声の中で、拓也はグラスを傾けた。


一方でみいなは、温泉ペアチケットを握りしめながら、胸の奥で思っていた。

(ちゃんと、終わったんだ)

さっき感じた“平気”の正体が、ようやくわかった気がした。




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