ベッドの隣は、昨日と違う人

月村 未来(つきむら みらい)

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第五章 美咲の結婚式&二次会

41話 次の楽しみ

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ビンゴ大会はそのまま続いていて、司会の声と笑い声が会場のあちこちで弾んでいた。
ステージ前では、次々に景品を受け取る人たちが写真を撮られている。


「……はぁ……」

思わず、小さく息を吐く。

「お疲れ」

大地がウーロン茶のグラスを差し出した。

「……ありがとう」

一口飲んで、ようやく落ち着いた気がした。

「……なぁ」

大地が、少し間を置いて口を開く。

「温泉」

「……うん」

「ほんとに、行くことになったな」

みいなは、手にしたビンゴカードを見つめたまま、小さく笑った。

「ね……まさか当たると思ってなかった」

「しかも1等」

言い切った瞬間、頬がじわっと熱くなる。

「嫌なら、別に――」

「嫌じゃないよ」

被せるように言ってから、みいなは一瞬だけ黙った。

「……嫌じゃ、ない」

言い直す声は、少しだけ小さかった。

大地はそれ以上突っ込まず、肩をすくめる。

「じゃあ、行くか」

「……うん」

「いつ行く?」

「え、もう決めるの?」

「だって、期限あるだろ」

「……あるね」

二人で顔を見合わせて、くすっと笑った。

「土日とか?」

「……大地、割と空いてるの?」

「土日も仕事の時もあるけど。調整はできる」

その言い方があまりにも自然で、みいなは胸の奥が少しだけ温かくなる。

「……ありがと」

「なんで礼言われてんだ」

「だって……一緒に行ってくれるんでしょ」

大地は一瞬だけ視線を逸らし、グラスを口に運ぶ。

「……そりゃ、そうだろ」

みいなは、その横顔を盗み見る。

(……なんでだろ)

さっきまで胸に引っかかっていた拓也のこと。
彼女がいたこと。
あの場面を見たときの、ちくっとした痛み。

(あれ?)

今は、不思議なくらい静かだった。

(ほんとに大丈夫だ……)

答えは出ないけれど、
今、隣にいる人の存在が、やけに現実的で、あたたかかった。

「……温泉ってさ」

みいなが、ぽつりと言う。

「浴衣とか、着るのかな」

「着るだろ」

「……似合うかな」

「知らん」

即答に、みいなはむっとする。

「ちょっとはフォローしてよ」

「いや、そんなん想像したら……」

大地は一瞬だけ言葉を切って、咳払いした。

「……まあ、似合うんじゃない」

「なにそれ、雑」

「雑でいいだろ」

でも、その声は少しだけ柔らかかった。

会場では、また誰かがビンゴを当てて、歓声が上がる。
拍手に混じって、美咲の笑い声も聞こえた。

みいなは、その賑やかさを眺めながら、そっと言った。

「……今日さ」

「うん?」

「来てくれて、ありがとう」

大地は、少しだけ驚いた顔をしてから、いつもの調子で返す。

「俺は、呼ばれたから来ただけ」

「それでも」

みいなは、はにかむように笑った。

「……1人じゃなくて、よかった」

大地は何も言わず、ただグラスを軽く持ち上げた。

「……じゃあ、温泉までに」

「うん?」

「もう少し、綺麗になっとけ」

「なにそれ!」

「冗談」

そう言いながら、ほんの少しだけ、照れたように視線を逸らす。

ビンゴ大会は、まだ続いている。
でも、みいなにとっては――
もう、次の楽しみが、はっきりと見えていた。



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