27歳、処女 〜みられて濡れて〜【完結】R18

月村 未来(つきむら みらい)

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第四章 GW 〜揺れて、ほどけて〜

56話 帰り道、まだ一緒にいたくて




助手席のシートベルトを少し引き直して、あやは窓の外に流れていく風景を眺めた。
吊り橋の風の感触が、まだ肌のどこかに残っている気がして──ちょっとだけ、頬が火照る。


「……吊り橋、想像より揺れたね」

ハンドルを握るケイは、ふと笑みをこぼした。

「うん。でも、あれくらいのスリルも、たまにはいいかもね」

「ふふ、私はだいぶ声出ちゃってたけど……」

「あやちゃん、声、上ずってたよ。
可愛かったけど」

「……っ、それ、からかってる?」

「まさか。 素直な感想」


信号で車が止まると、あやは少しだけ顔を傾けてケイを見る。

「……でも、今日ずっと車運転してくれて、本当にありがとう」

「ううん、運転は嫌いじゃないし。
……こうして誰かを乗せるのも、久しぶりだったから」

「……わたしでよかった?」

小さな問いかけに、ケイは一瞬だけ視線を前へ戻したあと、またあやの方へ。

「よかったよ。 あやちゃんとだったから、こんなに穏やかで楽しい一日になったと思う」

(“あやちゃんとだったから”──)


胸の奥が、ぽっと熱を持ったような感覚に包まれる。


「……じゃあ、またいつか、別の場所も……」

「うん。
まだ行きたいところ、たくさんあるし」

「……じゃあ、またどこか、誘ってもいいですか?」

その言葉に、ケイはわずかに目を細めて笑う。

「それはもう、“また”じゃなくて、“何度でも”だよ」

──そんな風に言ってくれるなんて、思っていなかった。

(この人の運転で、これからもどこかへ行けたら……)

心のなかで、そっと呟いた。



帰り道、ケイは少し考え込むようにハンドルを握ったあと、

「どこかで軽く何か食べて帰ろうか?」と提案した。

「サービスエリアに寄ってみる?」

外はすっかり暗くなっていて、温かな灯りが二人を迎えた。

ベンチに座り、ケイが買ってきた温かいコーヒーと軽食を分け合いながら、静かな時間を過ごした。

ゆったりとした余韻があやの胸にじんわりと広がる。

食事を終え、車に戻るとケイがふと口を開いた。

「よかったら駅じゃなくて家の近くまで送ろうか?」

少し間を置いて、あやは小さな声で返す。

「ありがとう。じゃあ近くのコンビニでもいいかな?」

ケイはやさしく笑い、エンジンをかけた。

そして、コンビニへ。
別れ際が近づいていた。

車がコンビニに滑り込む直前、
「あっ、これ渡さなきゃ」と思い出し、助手席でカバンを探りはじめた。

小さな包みを取り出しながら、

「ごめんね、これ…生で入れてて」

ケイの手が一瞬止まり、横顔の口元がゆっくりとゆるむ。

「あやちゃん、それ…言い方やばい」

低く抑えた声に、からかい混じりの熱が滲む。

「えっ…ち、違っ…袋に入れてないって意味!」

慌てて言い直すあやに、

「うん、わかってる。けどもう遅い」

くすっと笑うケイ。

「あの……今日は1日ありがとう。大したものじゃないけど……これ、受け取ってもらえる?」

「そんな、気を遣わなくていいのに……でも、ありがとう。あやちゃんのそういうところ、やっぱり嬉しいよ」

ケイは包みをそのまま胸ポケットにしまい込み、ふっとやわらかく頷いた。

「今日は本当に楽しかった。また、出かけよう」

「……うん」

自然と笑みがこぼれる。

ドアノブに手をかけたあやを、ケイがふいに呼び止める。

「……ほんとは、もう少し一緒にいたいけどな」

低い声と視線に、返す言葉が詰まり、ただ小さく頷く。

コンビニの駐車場に、ふたりの間だけの秘密めいた空気と、少しの名残惜しさが残っていた。







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