47 / 126
第四章 GW 〜揺れて、ほどけて〜
47話 夜星の下で
川辺から少し山間に移動して、みんなが星を見上げ始めていた。
満天の星空の下。
ふたりきりではないけど、周囲に声が届かないくらいの場所で並ぶように座った。
夜の空気は澄んでいて、焚き火の名残りも遠くに香る。
どこか、“誰にも邪魔されたくない夜”だった。
さっき、焚き火を囲みながらの近況トークで、
あやが少し恥ずかしそうに「気になってる人がいる」と打ち明けた瞬間、空気がパッと華やいだ。
「え、それ、もう向こうも絶対好きじゃーん!」
「いいないいなー!」
そんな言葉が次々飛び交って、女子たちは盛り上がっていた。
その輪の中にいたはずのりょうは──
笑っていた。でも、それは表面だけだった。
胸の奥に、何かざらついた感情が貼りついていた。
被ったタオルケットの向こうで、恥ずかしがりながら小さく漏れた、あの声。
知らなきゃよかったのに、って思うのに、どうしても脳が勝手に思い出してしまう。
あやとりょうは、今、少し離れた岩のそばに並んで座っていた。
「……星、すごいね。空、近い」
「……ああ」
しばらく、ふたりとも黙ったまま空を見上げていた。
それから、あやがふと笑って言った。
「なんかさ……
中学の時の林間学校、思い出すね。
夜、外にシート敷いて、みんなで星見たの。
……覚えてる?
山田くんが懐中電灯で変な影つくっててさ、
りえがめっちゃ怒ってたやつ」
「あー……あったあった。
てかお前、あの時も妙に星に詳しかったよな。
“あれがこと座のベガです”とか急に言い出して」
「ふふっ。 調べてたの。
なんか、好きだったんだよね、星」
「中学の同級生が、大学のサークルでも一緒でさ、今もこうしてるなんてすごいよね」
りょうの横顔に、笑みが浮かぶ。
でもその目は、少しだけ揺れていた。
──あの頃、確かにずっと隣にいた。
席替えのたびによく隣になって、文化祭では一緒にクラス旗を描いた。
ケンカもしたし、くだらないことで爆笑もした。
けど、ずっと“ただのあや”で。
男とか女とか、そういう目で見たことなんてなかった。
それなのに。
あの昼の声ひとつで、こんなにも……変わってしまうなんて。
──変な気、起こすなよ。
──知らなかったことにしとけ。
言われなくても、わかってる。
でも、それでも──気持ちが、止まらない。
「……さっきの話、ほんとは黙ってるつもりだったんだけどね」
あやがぽつりとつぶやいた。
「でも……ああいう空気だと、なんか……言えちゃうんだよね。ちょっと怖かったけど」
「……そいつ、幸せ者だな」
思わず出たその言葉に、自分でも戸惑った。
けど、もう止められない。
「なんか……俺だったら、あんなふうに照れてる顔、目の前で見たら、たぶんもう……平常心でいられねぇと思うし」
あやは、一瞬きょとんとしてりょうの顔を見た。
けど、何も言わずに小さく笑った。
「……いいな、って思った」
「え?」
「いや……俺が言うのも変だけどさ」
ふっと空を見上げて、息を吐く。
でも、本当は顔を見られたくなかっただけ。
「……もったいないよな。
今のまま、渡すの」
その言葉は、自分でも驚くほど本音だった。
でも、言ったあとで、すぐに後悔した。
あやは何も言わなかった。
ただ、少しだけ横を向いて──それでも怒った様子はなかった。
「……ありがとう」
その声は、優しかった。
けれど、りょうの心にはひりつくような痛みだけが残った。
──わかってる。
そいつに向けてる“好き”に、俺の入り込む余地なんてないって。
でも、だからこそ。
あの昼の声と、今夜の横顔が、余計に忘れられない。
(……眠れねぇよ、今日は)
そう思った時には、胸の奥がじんじんと疼いていた。
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
