27歳、処女 〜みられて濡れて〜【完結】R18

月村 未来(つきむら みらい)

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第四章 GW 〜揺れて、ほどけて〜

47話 夜星の下で




川辺から少し山間に移動して、みんなが星を見上げ始めていた。

満天の星空の下。

ふたりきりではないけど、周囲に声が届かないくらいの場所で並ぶように座った。
夜の空気は澄んでいて、焚き火の名残りも遠くに香る。


どこか、“誰にも邪魔されたくない夜”だった。

 



さっき、焚き火を囲みながらの近況トークで、
あやが少し恥ずかしそうに「気になってる人がいる」と打ち明けた瞬間、空気がパッと華やいだ。


「え、それ、もう向こうも絶対好きじゃーん!」
「いいないいなー!」

そんな言葉が次々飛び交って、女子たちは盛り上がっていた。


その輪の中にいたはずのりょうは──
笑っていた。でも、それは表面だけだった。

胸の奥に、何かざらついた感情が貼りついていた。



被ったタオルケットの向こうで、恥ずかしがりながら小さく漏れた、あの声。
知らなきゃよかったのに、って思うのに、どうしても脳が勝手に思い出してしまう。


あやとりょうは、今、少し離れた岩のそばに並んで座っていた。

 

「……星、すごいね。空、近い」

「……ああ」


しばらく、ふたりとも黙ったまま空を見上げていた。

それから、あやがふと笑って言った。


「なんかさ……
中学の時の林間学校、思い出すね。
夜、外にシート敷いて、みんなで星見たの。
……覚えてる? 
山田くんが懐中電灯で変な影つくっててさ、
りえがめっちゃ怒ってたやつ」


「あー……あったあった。
てかお前、あの時も妙に星に詳しかったよな。
“あれがこと座のベガです”とか急に言い出して」

「ふふっ。 調べてたの。
なんか、好きだったんだよね、星」


「中学の同級生が、大学のサークルでも一緒でさ、今もこうしてるなんてすごいよね」


りょうの横顔に、笑みが浮かぶ。
でもその目は、少しだけ揺れていた。

 

──あの頃、確かにずっと隣にいた。
席替えのたびによく隣になって、文化祭では一緒にクラス旗を描いた。
ケンカもしたし、くだらないことで爆笑もした。

けど、ずっと“ただのあや”で。
男とか女とか、そういう目で見たことなんてなかった。

 

それなのに。

あの昼の声ひとつで、こんなにも……変わってしまうなんて。




──変な気、起こすなよ。
──知らなかったことにしとけ。

言われなくても、わかってる。
でも、それでも──気持ちが、止まらない。

 

「……さっきの話、ほんとは黙ってるつもりだったんだけどね」

あやがぽつりとつぶやいた。

「でも……ああいう空気だと、なんか……言えちゃうんだよね。ちょっと怖かったけど」

「……そいつ、幸せ者だな」

思わず出たその言葉に、自分でも戸惑った。
けど、もう止められない。

 

「なんか……俺だったら、あんなふうに照れてる顔、目の前で見たら、たぶんもう……平常心でいられねぇと思うし」

あやは、一瞬きょとんとしてりょうの顔を見た。
けど、何も言わずに小さく笑った。

「……いいな、って思った」

「え?」

「いや……俺が言うのも変だけどさ」

ふっと空を見上げて、息を吐く。
でも、本当は顔を見られたくなかっただけ。


「……もったいないよな。
今のまま、渡すの」

その言葉は、自分でも驚くほど本音だった。
でも、言ったあとで、すぐに後悔した。

 

あやは何も言わなかった。
ただ、少しだけ横を向いて──それでも怒った様子はなかった。

「……ありがとう」

その声は、優しかった。

けれど、りょうの心にはひりつくような痛みだけが残った。

 

──わかってる。
そいつに向けてる“好き”に、俺の入り込む余地なんてないって。

でも、だからこそ。
あの昼の声と、今夜の横顔が、余計に忘れられない。

 

(……眠れねぇよ、今日は)

そう思った時には、胸の奥がじんじんと疼いていた。




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