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第二章 目覚め 〜名前を知らない熱〜
13話 ウワサ
数日後の午後。
あやはいつものように受付に座り、パソコンで来訪予定のチェックをしていた。
月初の慌ただしさも少し落ち着き、フロアにも余裕のある空気が流れている。
そのとき、少し離れたフリースペースから、女性たちの笑い声が聞こえてきた。
「えー、でもさぁ、この前のクリエイツの……ほら、風間さん?
めっちゃカッコよくなかった?」
(……風間、さん?)
耳が自然と、その方向に向く。
総務の川原さんと、営業アシスタントの西野さん。
コーヒー片手に、楽しそうに話している。
「わかる~、あのスーツの着こなし!
絶対オーダーでしょ」
「しかもあの声!低音!絶対モテるよねぇ~」
「既婚じゃないって話だよ?あの指、見た?」
あやはその瞬間、指先の動きを止めていた。
ディスプレイを見つめていたけれど、内容はまったく頭に入ってこない。
(……あの日、やっぱり見てたんだ……みんな)
知らないふりをしながら、心の奥がざわつく。
まいが受付の奥から戻ってきて、あやの顔をちらりと見て言った。
「ん?どうしたの、今すごく“止まってた”よ?」
「えっ、な、なんでもないよ……」
「……ああ~、もしかしてあれでしょ?
“今の話”聞こえちゃったんじゃないの?」
「やめてよ、まい」
「でもさ、ほんとに、あやが“気にしてなかったら”スルーできる話じゃない?
……止まるってことは、さ~?」
(ちがう……ちがうもん……)
口に出さなかったその否定が、胸の奥で苦しく響いた。
まだ2回しか会っていない。
会話だって、まともにしたわけじゃない。
夢を見たなんて、誰にも言えるわけがない。
それでも――
誰かが、彼のことを“カッコいい”とか“モテそう”なんて言うのを聞いて、自分の中で、思った以上に強く反応してしまったことに、あやは戸惑っていた。
(……わたし、いつの間に……)
知らないうちに、胸の奥に芽生えていた“気持ち”。
それが、誰かの言葉で水を注がれたように、今、確かに膨らみ始めていた。
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