続・27歳、処女 〜初めては終わらない〜【完結】R18

月村 未来(つきむら みらい)

文字の大きさ
48 / 130
第五章 危険なショット対決

44話 大事にするけど、全部ほしい






日が暮れはじめた道。
空にはまだうっすら青が残り、街灯がぽつぽつ灯りはじめている。
オフィス街を抜けたあとの少しひんやりした風が、仕事帰りの熱を冷ましてくれるようで、二人の距離が自然と近づいた。

「おつかれさま~」

肩を落としながら笑うあやに、ケイも軽く頷く。

「お疲れ」

「……1週間、長かったぁ~」

思わずこぼれた声に、ケイがくすっと笑う。

「俺は今週、あやちゃんとのショット対決を楽しみに頑張ったわ」

その冗談めいた言葉に、あやは吹き出してしまう。
疲れが溶けていくようで、笑いながら顔を見合わせた。


「あのさ、ケイくん、今朝ね……」

あやが話しかけると、ケイがちらっと顔を向ける。

「ん?」

「お母さんに……遂に聞かれたんだ。
“いい人できたの?”って」

「……で、なんて答えたの?」

「……うん、って」

口にするだけで、また胸がふわりと温かくなる。

ケイはふっと息を漏らし、優しい声で返した。

「そっか……。まぁ心配だよな。
大事な娘だし、ずっと一緒にいたわけだし」

ぽつりとこぼれるその言葉に、あやの胸の奥がじんとした。

「安心してもらえるように、ちゃんとするよ」

その声はまっすぐで、照れくさくなるほどだった。
けれど、その直後。


「……でも、今日酒めちゃくちゃ飲ますけどな、俺」

「ちょっ……もう~!」

あやは思わず笑いながら、ケイの腕を小突く。

なのにそのあと、わざとらしく低い声で、さらにひとこと。

「……しかもそのあと、裸にもするかも……?」

「……っ……!ばかっ……!」

顔が一気に熱くなり、あやは思わず下を向いた。
でも、くすっと笑うケイの声が耳に届き、その笑い声に胸の奥がくすぐられる。

「……もう、知らない」

そう呟きながらも、心臓はどくどくと高鳴っていた。

そのまましばらく歩いていると、ケイがふいにあやの手を少し強く握り、声を落とした。

「……なぁ、あやちゃん。
今日って、まだアレの日じゃない?」

「え……?うん、たぶん……そろそろだけど」

少し曖昧に答えると、ケイはちらりと彼女を見て、すぐに前を向いた。

「……先月も、このくらいだったよなって思い出して」

その言い方がやけに優しくて、あやは返す言葉を見つけられず、ただ手のぬくもりを感じていた。

「……べつに、それが全部じゃないけどさ。
でも……今日も全部ほしい」

落ち着いた声なのに、胸にじんと響く。
ちゃんと見てくれているのが伝わって、あやの胸の奥はほんのり熱を帯びた。

「……もう」

今度はあやが、そっとケイの腕をつつく。
笑いながらも、どこかくすぐったい気持ちで。

すぐそばにいるこの人の体温が、やけに愛しく感じられた。

「……ね、なんか買ってく?足りないものとか」

そう尋ねると、ケイは少し笑ってあやを見た。

「んー、もう昨日までに準備してるし。
あやちゃんの好きなデザートも、アイスも買ってあるよ」

「えっ!うれしい~っ」

声を弾ませるあやに、ケイはふっと優しい顔になり、ぼそっと言った。

「……大事にしてるなぁ、俺」

思わず笑って、あやはまた彼の腕をつついた。

「……もうっ」

そのまま二人は並んで歩き、静かに家路へと向かっていった。






感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました

せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~ 救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。 どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。 乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。 受け取ろうとすると邪魔だと言われる。 そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。 医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。 最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇ 作品はフィクションです。 本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389