続・27歳、処女 〜初めては終わらない〜【完結】R18

月村 未来(つきむら みらい)

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♡―番外編―♡

ふたりの日常〜あやの無邪気な発言〜



📖番外編




ケイと手をつないで歩く休日の街の午後。

信号待ちのタイミングで、あやがふとケイの腕に顔を寄せる。
その声は、ほんの少し小さくて、でも、耳の奥にしっかり残る。

「ねぇ、ケイくん……?」
「ん?」
「わたし、わかっちゃったかも……」
「……え?なにが?」

驚いたようにのぞきこんでくるケイに、あやは小さく笑って声をひそめた。

「あのね……あのカップルは、もうエッチしててね……あっちのカップルは、まだなの」

ケイの肩がぴくりと動く。

「っ……!
あやちゃん、なに言い出すの、こんなとこで……!」

思わず小声になるケイ。
だけど、頬はすこし赤くなってて、その反応が嬉しくてたまらない。

「だってね……ほら、見て。
距離感……ぜんぜん違うんだもん」

少しぎこちなく立つカップル、肩を寄せて笑い合うカップル。
その差を見ながら、あやはケイの手をぎゅっと握りしめた。

「わたしたちだって、こないだまでと、距離感……違うでしょ?」

ケイは照れたように苦笑して視線をそらす。
だけどその横顔からは、隠しきれない嬉しさが少し漏れていた。

あやはくいっと顔を寄せる。

「だから……わたしたちも、きっとバレちゃってるね♡」

ささやくような声。
ふたりの間だけにしかわからない、甘くてちょっと秘密めいた距離。
それが愛おしくて、おかしくて……ケイは耳まで赤くなっていた。


信号が変わり歩き出してすぐ、あやはメニュー看板の前でぴたりと立ち止まった。

「あ……ねぇ、ちょっとお茶しない?」

その声の弾み方で、もうケイは断れなくなる。


ガラス張りのカフェのニ階席。
街を見下ろす席は明るくて、ふたりの距離をそっと優しく包む。

「あのさ、ケイくん……この席から見てると世の中にカップルってさ……多いよね……」

窓の外の人混みを眺めながら、あやはぽつりと口を開く。

「そうだな、今日は特に多いな」

「はぁ、みんなどんなエッチ……してるんだろ……」

ケイの目が一瞬だけ大きく開く。

「……は?」
「え、なに?今なんて?」

あやは慌てて視線を逸らす。
ケイは笑いをこらえきれず、手をそっと重ねてくる。

「いや、なんか……急にエロいこと言い出すからビックリした。さっきもさ……」

ケイはにやりと笑って、あやの手をそっと握る。

「……でも、気になるよな、みんながどんなふうにしてるのか」

ケイの声が少しだけ甘くなった。

「うん、そうだよね……」

あやは少し顔を赤くしながらも、視線を戻して外のカップルを見つめた。

ふたりの間に、ほんのり甘い空気が流れていく。



「あのね、ケイくん……あのカップル、見て……
彼女の方が今は強そうだけど、エッチのときはきっと逆転してて……」

ケイがふっと笑みをこぼす。

「逆転……か?」

「あの人、意外と……ね、男らしいんじゃないかなって思うの」

あやの声には、無邪気な好奇心と、ほんのり甘い期待が混ざっていた。

ケイはあやの瞳をじっと見つめて、声を落とす。

「そういうの、気になる?」

「……うん。こないだまでそんなこと考えたこともなかったけど……
ケイくんとして、からは……
なんか、気になっちゃうんだよね」

言ったあと、あやは自分で恥ずかしくなって、
ストローの先をそっと指で押した。

「……気になっちゃうんだ」

「うん……わたし、ケイくんしか知らないし……」

その言い方は、強がってるわけでも甘えてるわけでもなくて、ただ“気づいてしまった事実”をぽつんと言葉にしたみたいだった。

ケイはその言葉に、一瞬だけまばたきを止めて、あやを見つめた。

ケイは一度だけゆっくり息を吸って、カップの縁を見つめたままつぶやいた。

「……俺も、そうだぞ」

あやは顔を上げる。

ケイは照れているのか、視線を窓の外に向けたまま続ける。

「あやちゃんのそういう言葉……
前より、なんか……すぐ胸にくるようになった」

その言い方が、不器用で、でもやさしくて。
あやは思わず笑ってしまう。

「胸にくるって……なにそれ」

「なにって……自分で言ったの分かってるだろ」

ケイはようやくあやを見て、
肩をほんの少しだけ揺らしながら苦笑する。

「“ケイくんしか知らない”とか……
そういうの言うからさ、意識しない方が無理だろ」

その声は少しだけ低くて、
冗談っぽくしてるのに、どこか正直すぎる。

あやはカップを両手で包んだまま、
こくんとうなずいた。

「……わたしも、同じだよ」

ケイの目がすこしだけ丸くなる。

「同じって?」

あやはテーブルの下で足を小さく組み替えて、
少しだけケイの方へ身体を寄せた。

「前より……
ケイくんの言葉、全部近く感じるようになったの」

ケイはしばらく黙って、
そのあと、照れたように口元をゆるめる。

「……そっか」

あやの胸が、じんわり温かくなる。
ケイはカップをじっと見ながらそっと呟く。

「変わったよな、俺ら。なんか……自然に」

その声はやわらかくて、
ふたりのテーブルの上に流れる空気だけが
静かにあたたまっていった。






―――



本編に入りきらなかったあやケイの休日デートのストーリーを番外編としてお届けしました♡
ふたりの距離がゆっくり変わっていく“日常の一コマ”として読んでもらえたら嬉しいです。


また合間に、こういう小さな日常を挟んでいけたらいいなと思います。
次回からは本編に戻りますので、引き続きお楽しみください。

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