続・27歳、処女 〜初めては終わらない〜【完結】R18

月村 未来(つきむら みらい)

文字の大きさ
102 / 130
第九章 ケイくんの誕生日

🩷94話 イケナイ関係







食器を片付けながら、バスローブの袖をきゅっと押さえた。

「ふぅ……おいしかった……」

お腹は満たされたはずなのに、胸の奥にはまだ熱が残っている。

視線をふと横にやると、ケイがソファに深く腰掛けて、あやの仕草をじっと見ていた。
その目の熱に気づいた瞬間、バスローブの下の素肌までじわりと火照ってくる。

「……あのね」

あやはそっと口を開く。

「さっき、ご主人様って呼んだの……ちょっと恥ずかしかったけど」

そこまで言って、視線を逸らす。頬が赤く染まる。

「でも、ケイくんの誕生日だし……まだ、何着でも……着るよ」

ケイの眉がわずかに上がる。

「……あやちゃんが言うと、なんか本気に聞こえるんだよな」

低い声でそう囁かれるだけで、胸がまた高鳴ってしまう。

「……だから、その……」

クローゼットの方へ小さく顎をしゃくる。

「見たいの、ある?
着てほしいの……あったら、言って」




「べ、別に……もうしなくても……いいから」

唇を噛んでそう言ったのに、声は小さく掠れて、まるで甘えてるみたいに聞こえてしまった。

ケイの目がすぐに細まる。

「……あやちゃん、それ本気で言ってる?」

ソファに座ったままの彼の声が低く落ちて、胸の奥に響く。
本当は、言葉と裏腹に身体がまだ熱を持っているのを、自分でもわかってる。
さっきからバスローブの中が、肌がじんわりと汗ばんでいる。

視線を合わせられなくて、俯いたまま指先で裾をきゅっと握る。

「……だって……もう……」

声が震えて、次の言葉が出ない。

ケイの足音が近づく。
顎をそっと持ち上げられて、強い視線に捕まる。

「俺、誕生日なんだよ?あやちゃんがそう言っても……」

ふっと笑みを含んで、囁く。

「まだ欲しくなるの、当然でしょ?」







クローゼットに視線を走らせていたケイの指が、ある衣装の前で止まった。
白シャツにチェックのスカート。吊るされているブレザー。

「……やっぱり、俺、これがいい」

制服風コスを指差しながら、真剣な目であやを見つめる。

一瞬で胸がぎゅっと縮まり、
あやの心の中にざわっと記憶がよみがえった。

(……これ……
わたしが昔ほんとに着てたのと、そっくり……)

その瞬間だけ、息が浅くなる。

「……あやちゃん、こういうの絶対似合う」

低い声で言い切ると、唇の端がわずかに上がる。

一瞬で頬が熱くなる。

「えっ……ケ、ケイくん……それ……」


声がかすれ、視線が泳ぐ。

ケイはすぐには答えず、一歩近づいて耳元に囁いた。

「誕生日にさ……俺の“本音”を一つだけ叶えてくれてもいいだろ?」
「俺も、着替えるから」

彼の瞳の熱を受け止めた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。

「……そんなふうに言われたら……断れない……」


あやは制服風コスに手を伸ばして、しばらく迷うように指先で布を撫でた。
胸が高鳴って、落ち着かない。

「……じゃあ……着替えてくるね」

小さくつぶやいて、服を抱きしめるように腕にかかえる。

その姿を見ていたケイの喉がごくりと鳴った。

「……うん。待ってる」

声が低く掠れているのが分かる。

ドアの向こうへ消える直前、あやは一度だけ振り返った。
見つめてくる彼の目が、いつも以上に熱くて、逃げ場なんてなかった。

――こんなの、着たら……
想像するだけで、頬がますます熱くなる。


手が震えながらも着替えを終え、鏡の前に立つ。

紺のブレザーに白いシャツ、短めのプリーツスカート、紺のハイソックス。
髪も昔みたいにふわりと結んで――

(……やば……こんなの、あの頃のわたしそのまんまじゃん……
これで今から……ケイくんと……)

ドアを小さく開けて、あやが一歩踏み出す。
視線を合わせられなくて、スカートの裾をぎゅっと握りしめる。

「……ど、どうかな……?」

ケイは一瞬、言葉を失って立ち尽くした。
ゆっくりと立ち上がり、息をのんだまま近づいてくる。

「……やばい……」

掠れた声が、すぐ耳元に落ちる。

「……反則すぎる……」

あやは俯いたまま、頬を真っ赤にして小さく笑うしかなかった。




制服風コス姿で出てきた自分を見つめて近づいてくるケイに、思わず後ずさる。
胸がどくん、と跳ねる。

「……ま、待って……」

声が掠れて、視線を泳がせながら問いかける。

「ケイくんは……同級生?それとも……先生?」

自分で言った途端に、顔が真っ赤になって俯いてしまう。
この姿でそんなことを口にするなんて、余計に恥ずかしい。

ケイは一歩近づいて、あやの顎を指でそっと持ち上げる。

「……どっちだと思う?」

低く熱のこもった声に、心臓がさらに早くなって――。


「……風間、先生」

スカートの裾をきゅっと握りしめながら、上目遣いで見つめる。

ケイは一瞬、呼吸を止めたように目を細めた。

「……佐伯。ほんとに、そう呼ぶんだな」

低く落ちた声に、空気が変わる。
スーツ姿のまま、役に入り込むケイが、ゆっくりと歩み寄ってくる。

「そんな服着て……そんな顔で見上げられたら俺……もう普通でいられなくなるぞ」

指先があやの頬に触れる。頬が熱いのに、背筋はひやりと震える。
呼吸の音まで聞こえるほど近くなって、耳元にかすれる囁き。

「……これからは、先生って呼ぶんだ。わかるな?」

胸がぎゅっと縮まりながらも、自然と声が漏れた。

「……はい、先生……」

「……佐伯」

ガチャリと閉まる扉の響きがやけに重くて、心臓が喉から飛び出しそうになる。

その途端、ケイ――いや、“先生”の低い声が落ちた。

「先生のこと、こんなとこに呼び出して……どういうつもりだ?」

裾を握りしめたまま、あやは必死に言葉を探す。

「わ、わたし……ただ……」

「ただ、じゃ済まないだろ」

ケイが一歩近づいてくるたび、後ずさりして、ベッドの端に追い込まれる。

「……先生を誘惑したいのか?」

鋭い視線が突き刺さり、息が止まった。

答えられないまま俯いた唇に、ケイがふっと笑みを落とす。

「……顔、真っ赤だぞ。図星か?」

胸元のリボンに指がかかり、するりとほどかれていく。
その瞬間、全身の血が沸き立つように熱くなった。


「ち、ちがっ……」

裾をぎゅっと握りしめながら、震える声を絞り出す。

「わ、わたし、先生に相談が……っ」

必死に言葉を探すのに、喉がうまく動かない。
でも先生の鋭い視線がそれを許してくれなかった。

「相談?」

ケイは低く笑う。

「こんな時間に、こんなところで“相談”か?」

一歩近づかれるだけで、息が詰まる。
足がベッドに触れて、もう逃げ場がなかった。

「じゃあ聞かせてみろよ、佐伯」

リボンをするりと引き抜きながら、挑むように目を細める。

「……相談って、どんなだ?」

布越しに伝わる体温。
視線が胸元に落ちた瞬間、全身が熱くなって、言葉が出ない。

「……言えないのか」

ケイの声が、落ちるというより“沈む”ように低くなった。

「だったら──俺が確かめてやる」

胸元のボタンに指が触れた瞬間、あやの喉がひゅっと鳴る。

逃げられない、言い訳できない、息さえ詰まる。

ケイの指先がボタンにかかった、その“次の瞬間”だった。





感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました

せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~ 救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。 どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。 乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。 受け取ろうとすると邪魔だと言われる。 そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。 医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。 最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇ 作品はフィクションです。 本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。