続・27歳、処女 〜初めては終わらない〜【完結】R18

月村 未来(つきむら みらい)

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第一章 はじめての朝、はじめての報告

6話 帰り道と、胸の奥






夕暮れの帰り道。
ケイの家から駅まで、二人はゆっくり歩いていた。

「今日はありがとう、ケイくん」

あやがそう口にすると、ケイは横顔を向けて柔らかく笑った。

「こちらこそ。あやちゃんと一緒にいられて、ほんと楽しかった」

指先が自然に絡み合い、駅へ続く道を並んで歩く。
そのとき──あやはふと足を止めた。

「……どうしたの?」

ケイの問いかけに、あやは少しうつむいて唇を噛む。

「……なんか、歩いてたら……違和感があって……」

声がどんどん小さくなる。

「……まだ……ケイくんのが……入ってるみたいな……そんな感じ、するの……」


昨夜、初めてをあげた。
今日の昼には、もう一度重なった。
まだ慣れていない身体の奥に残る感覚が、歩くたびにふいに蘇ってしまう。

ケイは一瞬目を見開き、思わず足を止める。
そして、照れ隠しのように小さく笑った。

「……そんなこと言われたら……俺、また抱きたくなっちゃうよ」

赤くなった頬を隠すように、あやは俯いたままケイの手をぎゅっと握り返す。
夕暮れの風が吹き抜けても、彼女の頬の熱は冷めなかった。




駅の改札前。
行き交う人のざわめきの中で、二人だけが取り残されたように立ち止まる。
夕暮れの風が頬をなで、余韻に火照った身体をほんの少し冷ました。

「……またすぐ、会える?」

あやの声はかすかに震えていた。
ケイはその不安を溶かすように、真っ直ぐに目を合わせる。

「もちろん」

その一言に、胸の奥がじんと熱くなる。
離したくない気持ちを誤魔化すように、繋いだ手に力を込めた。

けれど、改札はもう目の前。
足を止めたまま、ただ見つめ合ってしまう。

「……ほんとは、まだ帰りたくないな」

ぽつりと落としたあやの言葉に、ケイは小さく笑い、彼女の髪を撫でた。

「俺も。……だから、またすぐ」

手をつないだまま、二人はゆっくりと改札へ歩き出す。
今日の余韻を胸に抱えながら、名残惜しさごと──次の再会へと預けていった。





―――ガチャガチャ……パタン。

玄関を開けた瞬間、胸の奥にどこか重たいものが広がった。

(……いけないこと、してきたみたい)

そんな気まずさを抱えたまま、あやは小さく声を落とす。

「ただいま……」

「おかえり」

母の返事はいつも通りで、台所から響いた。
それでも妙に胸に刺さる。

夕飯は他愛のない会話で過ぎていった。
天気やニュース、仕事の話。
母は特に変わった様子もなく、あやも相づちを返す。
けれど、どこか落ち着かない。

食べ終えると、あやはすぐに立ち上がった。

「疲れたから……今日は早く寝るね」

そう言って早めの入浴をし、二階の部屋へ戻っていった。


──その頃。
片づけを終え入浴をしようと脱衣所に来た母は、洗濯かごに目が止まる。

(……これ、見たことない……)

目線の先にあるのは、これまでのあやが選ばなかったような、大人びた色とデザインの下着。
一瞬、心臓が跳ねた。

「……あや……」

小さな声が、夜の静けさに溶けて消えた。
でも確かな確信のような響きが残った。

その頃、部屋で布団に潜ったあやも──胸の奥がざわめいていた。

(……やだ、そういえばあの下着……なにか気づかれちゃうかも……)

暗闇の中で、互いに言葉を交わさないまま、夜だけが静かに深まっていった。




布団の中でスマホを手に取ると、昨夜から同僚で友人のまいの“鬼ライン”がまだ一部未読のまま並んでいる。
全部目を通したあと、あやは小さく笑った。

(……返信しなきゃ……)

短い言葉を一つだけ打ち込んで、スマホを伏せる。
指先に残った温度と、胸の奥に渦巻くもののあいだに、ただ静かな夜の音だけが流れていた。




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