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クリプトドラゴンとは
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今度は驚きの注目が私に集まるわ、アピールチャンスね。額は適切だけど受け取る側は破格だって思えてるなら結構よ、何せ私に基準になるような感覚はないの。
「北西の山に調査に出ます。お誘いあわせの上参加を。一応指揮権ってのは私にあるみたいですけれど、こちらのハマダ大尉にお任せすることになります」
片手を水平にして隣に立っているハマダ大尉に視線を誘導したわ。胸を張って中空を睨んでいる横で、キール上級曹長は周辺を警戒してるみたい。熱心な人たちよ。
「クァトロのハマダ大尉だ。俺はレディのように優しくはないぞ、死ぬ覚悟がある奴だけ来い!」
急に冒険者が黙ったわね、楽な仕事と思われては困るもの、それでいいわ。ただ報酬が良いだけの遊びじゃないことは絶対に伝わっているわ。
「詳細は受付に出ますので、ご確認を。それでは後日また会えることを願っています」
ペコリと礼をすると、お立ち台を降りると二人を連れて宿を出て行く、結果はどうあれやるべきことは三日後ね。それまでは効率悪くても祈りをしましょうか。
◇
約束の日、日の出を確認してから街の北門に行くと大勢の姿があったわ。キール上級曹長が先着していて、皆をまとめているみたいね。こちらに気づいて注目が集まるわ。ハマダ大尉と一緒に歩いて行って、二人で用意されている演台兼荷物箱に登る。
皆を見回して「アテンション! 俺が部隊を預かるハマダ大尉だ、お前達の雇い主であるレディ・アルヴィンから言葉がある、黙って聞け!」いかにもな一喝でざわついていたのが静かになったわ。これが無かったらきっと最後までバラバラな感じで動かれたりするのよね、最初が肝心。
「おはようございます。集まってくれてありがとうございます。ここノルドシュタットの聖域を拡げる為に邪魔になってる原因を排除するため、山の調査を行います。何があるかわかりませんが、皆さんよろしくお願いします」
簡単な挨拶をしてお辞儀をすると箱から降りたわ。だってこれも馬車に積まないといけないのよ。キール上級曹長の指示でグループ分けをしてから移動を始める、どんな人が集まったかの詳細もハマダ大尉と情報交換してるわね。傍で聞きながら後で確認しましょうと思ったら、紙でリストにして提出してきたわ、まあ便利。
神官が二人混ざってるわね、怪我人が出ても治癒出来そうで良かったわ。あとは魔法使いが四人、山岳や森に詳しいのが三人、他は戦闘要員とか荷物持ちの類みたいね。調理も出来るって備考あるのが結構いるわ。男女比は圧倒的に男が多くて、七人だけ女性。冒険者の総勢は四十二、黒服二十と私で六十三人かな。あ、リスィもいるわね。
道が無いので馬車が揺れる揺れる、変なところではまったら出すのに苦労しそう。でも御者が上手で全くそんな事故は起こらずに進む、途中で魔物がこちらを窺ってはいたけど襲ってはこなかったわ。もっと危険が少ない割が良いのを襲うわよね。
「なんだか妙な圧力を感じるわ……なにかしらこれって」
なんだと言い難い力、尋常ではない存在の証。出るもの次第で即座に逃げ帰ることになるかも知れない。それはそれで一つの結果として受け止めるわ。
「レディ、抗い難い相手が出た場合は撤退する許可を」
ハマダ大尉がそんな風に一つの確認を挟んできたわ。それに関してはこちらがお願いしたいくらいよ。漠然とした感覚だけと、経験に基づく判断、どちらが有益かなんて比べるのがおかしいわよ。
「進退の判断は一切お任せします。信頼して全てを預けるので、ハマダ大尉の良いように」
「イエス マム!」
うーん、そう言われたのは初めてね。マム……女主人って感じなのはわかるけど、なんかむず痒いわね。それにしても山から禍々しい感覚が伝わって来るわ、でも不思議なのは何故かその中に微かに安心感もあるの、どうして安らぐ感じが? 二時間の移動で山の裾野に到着したわ、変な寒気がする。
「各班で偵察に出ろ、異変を発見次第速やかに報告に戻るんだ」
キール上級曹長が大きな旗を地面に突き刺して目印にする。四人一組で戦闘要員が集まり、山岳の注意点を専門家の三人に聞かされてる。神官や魔法使いは旗のところで待機みたい。黒服の殆どもここで待機。
数時間偵察に出てそろそろお昼ってところで、一つの班が慌てて戻って来たわ。報告を聞くと煙球を撃ち上げる。異常発生の合図よ、なにかしらね。
「レディ、大きな洞窟に蹲る竜の姿がありました。現在全ての者を引き戻させています」
ハマダ大尉が何とも言えない表情で報告してきたわ。大きな洞窟に竜? 壁画とかじゃなくて、うずくまってるんだから生きてる奴よね? というか存在してるの? あれは物語の中だけじゃないの?
「竜ってドラゴンって意味のあれが居たんですか?」
「はい」
解釈の違いが望めない短い返答。ドラゴンの圧力がこの背筋を凍らせるようなのってことね。どうすべきかしら、どこかに行ってとお願いして出来るものじゃないわ、そして戦って無事でいられるはずもない。かといってこのまま戻るのもどうかしら。
「そのドラゴンの詳細を教えて下さい」
今わかっていることを把握しましょう、素直に耳に入る事柄を受け止めることが出来るかは別問題よ。
「アンデットの類で、黒と灰色、銀の見た目のようです。眠っている様子でして」
アンデットってことは生きてるわけじゃなかったのね、でも存在してるんだから動くのよね。だからこの悪寒のような何かを感じてる。骨とか鉄みたいな色合いで、か。うーん。
「アンデットドラゴン……も睡眠が必要なんですね?」
何となく違和感があるのよね、冬眠するような感じで寝てるのおかしいわよね。傷を受けてそこで療養してるとか。でもアンデットは自然回復しないわよね、どうしてこんなところにいるのかしら。
「ドラゴンは初めてなのでわかりかねます。魔法使いらの知識にある可能性が」
ハマダ大尉も初めて、それでも落ち着いているんだから凄いわよね。
「では四人をここへ連れてきてください」
黒服に命じると直ぐに四人が馬車の側に来て、異常があったことを悟る。若いのが二人、中年と年配が一人でみんな男の人。特徴を知らせてから何か知っていることが無いかを尋ねたわ。
「それはアンデットドラゴンのクリプトドラゴンでしょう。死の闇をブレスとしてまき散らす最悪の種」
年配の魔法使いが渋い顔でそんなことを言ったわ。闇のブレス、神聖魔法で何とか防げるでしょうけど、繰り返されたらどうにも対抗出来ないわね。特にドラゴンの物理攻撃は無理寄りの無理。
「寝ているようだって話ですけど、睡眠するものですか?」
「北西の山に調査に出ます。お誘いあわせの上参加を。一応指揮権ってのは私にあるみたいですけれど、こちらのハマダ大尉にお任せすることになります」
片手を水平にして隣に立っているハマダ大尉に視線を誘導したわ。胸を張って中空を睨んでいる横で、キール上級曹長は周辺を警戒してるみたい。熱心な人たちよ。
「クァトロのハマダ大尉だ。俺はレディのように優しくはないぞ、死ぬ覚悟がある奴だけ来い!」
急に冒険者が黙ったわね、楽な仕事と思われては困るもの、それでいいわ。ただ報酬が良いだけの遊びじゃないことは絶対に伝わっているわ。
「詳細は受付に出ますので、ご確認を。それでは後日また会えることを願っています」
ペコリと礼をすると、お立ち台を降りると二人を連れて宿を出て行く、結果はどうあれやるべきことは三日後ね。それまでは効率悪くても祈りをしましょうか。
◇
約束の日、日の出を確認してから街の北門に行くと大勢の姿があったわ。キール上級曹長が先着していて、皆をまとめているみたいね。こちらに気づいて注目が集まるわ。ハマダ大尉と一緒に歩いて行って、二人で用意されている演台兼荷物箱に登る。
皆を見回して「アテンション! 俺が部隊を預かるハマダ大尉だ、お前達の雇い主であるレディ・アルヴィンから言葉がある、黙って聞け!」いかにもな一喝でざわついていたのが静かになったわ。これが無かったらきっと最後までバラバラな感じで動かれたりするのよね、最初が肝心。
「おはようございます。集まってくれてありがとうございます。ここノルドシュタットの聖域を拡げる為に邪魔になってる原因を排除するため、山の調査を行います。何があるかわかりませんが、皆さんよろしくお願いします」
簡単な挨拶をしてお辞儀をすると箱から降りたわ。だってこれも馬車に積まないといけないのよ。キール上級曹長の指示でグループ分けをしてから移動を始める、どんな人が集まったかの詳細もハマダ大尉と情報交換してるわね。傍で聞きながら後で確認しましょうと思ったら、紙でリストにして提出してきたわ、まあ便利。
神官が二人混ざってるわね、怪我人が出ても治癒出来そうで良かったわ。あとは魔法使いが四人、山岳や森に詳しいのが三人、他は戦闘要員とか荷物持ちの類みたいね。調理も出来るって備考あるのが結構いるわ。男女比は圧倒的に男が多くて、七人だけ女性。冒険者の総勢は四十二、黒服二十と私で六十三人かな。あ、リスィもいるわね。
道が無いので馬車が揺れる揺れる、変なところではまったら出すのに苦労しそう。でも御者が上手で全くそんな事故は起こらずに進む、途中で魔物がこちらを窺ってはいたけど襲ってはこなかったわ。もっと危険が少ない割が良いのを襲うわよね。
「なんだか妙な圧力を感じるわ……なにかしらこれって」
なんだと言い難い力、尋常ではない存在の証。出るもの次第で即座に逃げ帰ることになるかも知れない。それはそれで一つの結果として受け止めるわ。
「レディ、抗い難い相手が出た場合は撤退する許可を」
ハマダ大尉がそんな風に一つの確認を挟んできたわ。それに関してはこちらがお願いしたいくらいよ。漠然とした感覚だけと、経験に基づく判断、どちらが有益かなんて比べるのがおかしいわよ。
「進退の判断は一切お任せします。信頼して全てを預けるので、ハマダ大尉の良いように」
「イエス マム!」
うーん、そう言われたのは初めてね。マム……女主人って感じなのはわかるけど、なんかむず痒いわね。それにしても山から禍々しい感覚が伝わって来るわ、でも不思議なのは何故かその中に微かに安心感もあるの、どうして安らぐ感じが? 二時間の移動で山の裾野に到着したわ、変な寒気がする。
「各班で偵察に出ろ、異変を発見次第速やかに報告に戻るんだ」
キール上級曹長が大きな旗を地面に突き刺して目印にする。四人一組で戦闘要員が集まり、山岳の注意点を専門家の三人に聞かされてる。神官や魔法使いは旗のところで待機みたい。黒服の殆どもここで待機。
数時間偵察に出てそろそろお昼ってところで、一つの班が慌てて戻って来たわ。報告を聞くと煙球を撃ち上げる。異常発生の合図よ、なにかしらね。
「レディ、大きな洞窟に蹲る竜の姿がありました。現在全ての者を引き戻させています」
ハマダ大尉が何とも言えない表情で報告してきたわ。大きな洞窟に竜? 壁画とかじゃなくて、うずくまってるんだから生きてる奴よね? というか存在してるの? あれは物語の中だけじゃないの?
「竜ってドラゴンって意味のあれが居たんですか?」
「はい」
解釈の違いが望めない短い返答。ドラゴンの圧力がこの背筋を凍らせるようなのってことね。どうすべきかしら、どこかに行ってとお願いして出来るものじゃないわ、そして戦って無事でいられるはずもない。かといってこのまま戻るのもどうかしら。
「そのドラゴンの詳細を教えて下さい」
今わかっていることを把握しましょう、素直に耳に入る事柄を受け止めることが出来るかは別問題よ。
「アンデットの類で、黒と灰色、銀の見た目のようです。眠っている様子でして」
アンデットってことは生きてるわけじゃなかったのね、でも存在してるんだから動くのよね。だからこの悪寒のような何かを感じてる。骨とか鉄みたいな色合いで、か。うーん。
「アンデットドラゴン……も睡眠が必要なんですね?」
何となく違和感があるのよね、冬眠するような感じで寝てるのおかしいわよね。傷を受けてそこで療養してるとか。でもアンデットは自然回復しないわよね、どうしてこんなところにいるのかしら。
「ドラゴンは初めてなのでわかりかねます。魔法使いらの知識にある可能性が」
ハマダ大尉も初めて、それでも落ち着いているんだから凄いわよね。
「では四人をここへ連れてきてください」
黒服に命じると直ぐに四人が馬車の側に来て、異常があったことを悟る。若いのが二人、中年と年配が一人でみんな男の人。特徴を知らせてから何か知っていることが無いかを尋ねたわ。
「それはアンデットドラゴンのクリプトドラゴンでしょう。死の闇をブレスとしてまき散らす最悪の種」
年配の魔法使いが渋い顔でそんなことを言ったわ。闇のブレス、神聖魔法で何とか防げるでしょうけど、繰り返されたらどうにも対抗出来ないわね。特にドラゴンの物理攻撃は無理寄りの無理。
「寝ているようだって話ですけど、睡眠するものですか?」
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